■第89話:船を沈める巨大海蛇・イクチ! ……えっ、油地獄の前に「脂質異常症」と「SDGs(海洋汚染)」の説教ですか?
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【場所:天界・管理室】
「……うむ。スマートウォッチの気圧計のおかげで、今日の頭痛がただの低気圧のせいだと分かって非常に気分が良い」
神ドラマスは、手首のスマートウォッチを満足げに眺めながらモニターを見ていた。
画面の中では、ヒナタたちが王都の港町から「遊覧船」に乗り込み、海釣りとクルージングを楽しもうとしていた。
「しかし、海の恐怖は人魚だけではない。日本の海には、規格外の質量と『油』で船を絶望の底に沈める巨大な海蛇、イクチが潜んでいるのだ!」
ドラマスは、お茶をすすりながら身を乗り出した。
「数キロに及ぶ巨体! そして体から無尽蔵に滴り落ちる重い油! 物理攻撃など全く意味をなさないこの油地獄を前に、ヒナタの生活指導もついに滑って転ぶに違いない!!」
【場所:人間界・王都近郊の海(遊覧船の上)】
「いやぁ、潮風が気持ちいいですね! 釣ったお魚はお刺身にしましょう!」
ヒナタは、船の甲板で釣り竿を垂らしながらご機嫌だった。
「ゆ、勇者殿、海が急に暗くなりましたぞ……。それに、波の様子が……」
セバスチャンが空を見上げた。
ゴゴゴゴゴ……!!
突如、遊覧船の目の前の海面が大きく盛り上がり、空を覆い隠すほどの「巨大なウミヘビ(イクチ)」が姿を現した。その長さは数キロメートルにも及び、頭は雲の彼方、尾は水平線の先まで続いている。
『ドロロロロ……。人間どもの小舟よ……。俺様の長き体が通り過ぎるまで、油地獄を耐え抜けるかな……』
イクチの巨大な胴体が、遊覧船の真上をアーチ状にまたぐようにゆっくりと通り過ぎていく。
その瞬間。
ボタッ……。ボタボタボタッ!!
イクチのウロコの隙間から、どす黒く粘り気のある「大量の油」が、滝のように船の甲板に降り注いできた!
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 巨大海蛇のイクチですぞ!!」
セバスチャンが油まみれになりながら絶叫する。
「急いで油を海に汲み出さないと、船が重みで沈んでしまいます!!」
『無駄だ……。俺様が通り過ぎるには3日はかかる……。お前たちは油の重みで海の底へ……』
イクチが低く不気味な声で宣告した、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、大海原の波音すら真っ二つに割る「特定保健指導」が響き渡った。
『……ン?』
イクチの巨大な体が、空中でピタリと動きを止める(油はボタボタ落ちている)。
ヒナタは、四次元リュックを甲板にドンッと置き、甲板に降り注ぐドロドロの油をビシッと指差した。
「あなた!! 体から油(皮脂)が滴り落ちるなんて、完全に『脂質異常症(高脂血症)』の末期症状じゃないですか!! 普段から脂っこい深海魚やアザラシばかり食べて、食物繊維を全く摂っていない証拠です!! 血液がドロドロすぎて、毛穴から脂が漏れ出してますよ!!」
『し、脂質異常症……!? 血液ドロドロ……!?』
イクチは、自分の体から落ちる油を見て、思わずギョッとした。
「それに、この油!!」
ヒナタは、海面に広がっていく油膜を指差した。
「こんな大量の油を海に垂れ流すなんて『海洋汚染(環境破壊)』です!! サンゴ礁が窒息して、プランクトンが死滅しちゃうじゃないですか!! SDGs(持続可能な開発目標)の『14. 海の豊かさを守ろう』を完全にガン無視する気ですか!! オカンは環境破壊を絶対に許しません!!」
『エスディージーズ!? か、海洋汚染……!? いや、俺様は妖怪だから……』
「言い訳しない!! こんなドロドロの体じゃ、動脈硬化でいつか血管が詰まって突然死しますよ!! 今すぐ徹底的な『クレンジング』と『食生活改善』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「海洋環境に優しい超強力・生分解性オイル吸着マット」「業務用の炭酸スカルプクレンジングシャンプー」、そして「水溶性食物繊維が爆発的に含まれた『特大ワカメとモズクの酢の物』」を取り出した。
「ゴズさん、吸着マットで甲板と海面の油を回収! ヴァレリアさん、この炭酸シャンプーでイクチの体をゴシゴシ洗って!!」
「ブモォッ!(おう! 海を汚す奴は俺も許さねぇぜ!)」
「ふむ。この巨大なウミヘビを洗うのは、良い全身運動になりそうだ」
『な、何を……! 俺様の恐ろしい油地獄が……!』
「【究極の全身デトックス&血液サラサラ・プログラム】!!」
ヒナタと仲間たちの手によって、イクチの体表面のドロドロの油が「炭酸クレンジング」で一気に分解され、洗い流されていく。
『アォォォォッ!! な、なんだこのシュワシュワする爽快感は……! 毛穴の奥に詰まっていたギトギトの皮脂が、根こそぎ弾け飛んでいく……! 体が……めちゃくちゃ軽い!!』
「はい、体の外側が綺麗になったら、次は内側です! 脂っこい食事は控えて、海藻(水溶性食物繊維)をたっぷり食べて、腸内環境を整えなさい!!」
ヒナタが、ドラム缶サイズの特大ボウルに入った「モズクの酢の物」をイクチの口に放り込む。
『ズズズッ……!! ……す、すっぱい!! でも、この酸味とネバネバが、ドロドロだった俺の血管に染み渡って……血流が信じられないスピードで巡り始めたぞ!!』
数時間後。
そこには、重い油を撒き散らす不気味な巨大蛇の姿はなかった。
余分な皮脂と内臓脂肪が落ちて見事にシェイプアップされ、ウロコは青空を反射してサファイアのように輝き、「新幹線のような空力(水力)フォルム」を手に入れた、神々しいまでの巨大な「水神」が空を舞っていた。
『おおぉぉ……!! なんだこのスピード感は!! 血液がサラサラになって、体が鞭のようにしなる!! これなら船をまたぐのに3日もかからない、たったの3秒だ!!』
イクチは、自分の生まれ変わった体に感動し、大空で華麗な宙返りを決めた。
「良かったです! 今度からは、海を汚すんじゃなくて、そのスピードとパワーで『海上保安庁(密漁船の取り締まり)』のお手伝いでもしてあげてください!」
ヒナタが、甲板から笑顔で手を振る。
『おうよ! ヒナタ先生! 俺、これからはワカメを主食にして、この美しい海(SDGs)を守るために生きるぜ!!』
イクチは、爽やかな水しぶきを上げながら、海の平和を守るために猛スピードで水平線の彼方へと消えていった。
「……ゆ、勇者殿。船を沈める巨大怪異が……『脂質異常症を克服し、SDGsに目覚めたエコな海上保安官』になってしまいましたな……」
セバスチャンは、ピカピカになった甲板の上で、環境に配慮することの大切さを静かに噛み締めていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、無言で自分の手元にあった「フライドポテト」をゴミ箱に捨てた。
『油地獄のイクチが……「脂質異常症」と「SDGs違反」を指摘され、炭酸クレンジングでピカピカにされた……』
『挙句の果てに、モズク酢で血液サラサラになり、エコな海上保安官になった……』
ドラマスは、深くため息をつくと、血液ドロドロの恐怖に震えながら、通販サイトで「黒酢ドリンク(大容量)」と「沖縄産もずく」を大量にポチり、自らの脂質代謝の改善に本気で取り組むことを固く誓うのだった。
(第89話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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