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■第88話:不老不死の恐ろしき人魚! ……えっ、永遠の命の前に「アニサキス」と「表面のヌメリ取り」ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……よし。特大の防湿庫にシリカゲルもたっぷり入れた。これで私のコレクションは永遠に劣化しないぞ」


神ドラマスは、日本人形のエピソードから学んだ「完璧な温湿度管理」を自室に施し、満足げにモニターに向かっていた。

画面の中では、山のパトロールを終えたヒナタたちが、王都近郊の「荒涼とした岩場の海岸」へと足を延ばしていた。


「ほう、次は海か。日本の海に潜む怪異といえば……人魚にんぎょだな!」


ドラマスは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「西洋のロマンチックな人魚姫を想像してはならない。日本の人魚は、猿のような顔に黄金のウロコを持ち、嵐を呼ぶ不吉なバケモノ! そして『私の肉を食えば不老不死になる』と人間をそそのかし、狂気へと引きずり込む存在だ! ヒナタよ、この永遠の命という『究極の誘惑』と不気味さに、どう立ち向かう!?」


【場所:人間界・王都近郊の荒磯】

ザパーーーンッ!!

ヒナタたちが磯の香りを嗅ぎながら歩いていると、突如として海が荒れ狂い、空がどす黒い雲に覆われた。

そして、波打ち際の巨大な岩の上に、ひとつの不気味な影が打ち上げられるように姿を現した。


『ギギギ……。人間どもよ……。永遠の命は、欲しいか……?』


人間の顔と魚の体を持つ、日本の妖怪――人魚である。

全身はどす黒いヌメリに覆われ、強烈な「生臭い魚の匂い」を周囲に撒き散らしている。


「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 嵐を呼ぶ不吉なバケモノですぞ!!」


セバスチャンが鼻をつまみながら後ずさる。


『我が肉を一口食らえば、老いることも死ぬこともない……。さあ、この腕を噛みちぎり、生で食らうがいい……!』


人魚が、不気味な笑みを浮かべながら、自らのウロコに覆われた腕をヒナタの顔の前に突き出した、その瞬間。


「ちょっと待って!!!」


ヒナタの、荒れ狂う波の音すら完全に掻き消す「食品衛生責任者ガチギレ・トーン」が海岸に響き渡った。


『……ギ?』


人魚は、腕を突き出したままポカンと固まった。


ヒナタは、四次元リュックを岩の上にドンッと置き、鬼の形相で人魚の腕をビシッと指差した。


「あなた!! 天然物の海の生き物を、マイナス20度で24時間以上の『冷凍処理』もせずに、いきなり生食(刺身)で勧めるなんて正気の沙汰ですか!! 『アニサキス(寄生虫)』の恐ろしさを何だと思ってるんですか!!」

『ア、アニサキス……!? いや、私は不老不死の力を持つ人魚で……』

「不老不死になる前に、猛烈な胃痛と嘔吐で救急車行き(のたうち回る激痛)です!!」


ヒナタは怒り心頭で、今度は人魚の体を指差した。


「大体、その強烈な生臭さ!! それは鮮度が落ちて、表面のヌメリ成分が酸化して『トリメチルアミン』という悪臭物質に変わっている証拠です!! 自分の体の鮮度管理メンテナンスもできないのに、人に食べてもらおうなんておこがましいにも程があります!!」

『ト、トリメチルアミン……!?』


人魚は、自分の体から漂う臭いを嗅ぎ、思わず「ウッ」と顔をしかめた。


『た、確かに最近、自分でもちょっと生臭いとは思っていたが……』

「そして、嵐を呼ぶ不吉な力とか言ってますけど、それはただの『気象病(低気圧による自律神経の乱れ)』です!! 低気圧が近づいて内耳のセンサーが過敏になり、頭痛やダルさでイライラしてるだけじゃないですか!!」

『き、気象病……!?』

「今日から、徹底的な『下処理』と『体質改善』を行います!!」


ヒナタは、四次元リュックから、「大量の粗塩」「料理酒と生姜のエキスが入った特製スパウォーター」、そして「気圧グラフ表示機能付きのスマートウォッチ」を取り出した。


「ゴズさん、しっかり押さえてて! ヴァレリアさん、粗塩を擦り込んで!」

「ブモォッ!(おう! 魚のヌメリ取りだな、任せとけ!)」

「ふむ。剣ではなく塩を振るとはな……」

『な、何をする気だ……!? 私の不老不死の肉体が……!』

「【究極の鮮度回復(塩揉み)&気象病ケア】です!!」


ヒナタとゴズの手により、人魚の体全体に大量の粗塩がまぶされ、ゴシゴシと力強く(しかしウロコを傷つけない絶妙な力加減で)揉み込まれていく。


『ギニャァァァッ!! し、塩が……! だけど、なんか毛穴(ウロコの隙間)の奥に詰まっていたドロドロの汚れが、ごっそり掻き出されていくような……!』


塩で完全にヌメリと汚れを浮かせた後、ヒナタは「料理酒と生姜エキス」を配合したお湯で、人魚の体をピカピカに洗い流した。

キュッ、キュッ。


数十分後。

そこには、生臭い匂いを放つ不気味な妖怪の姿はなかった。

全身のウロコは、まるで朝日に輝く真鯛のように「透き通るような黄金色」にピカピカと輝き、生臭さ(トリメチルアミン)は完全に消え去り、爽やかな海の香りを漂わせる「神秘的で美しい水棲生物」が横たわっていた。


『おおぉぉ……!! なんだこの体の軽さは……! まるで稚魚の頃に戻ったように、ウロコが呼吸しているのがわかる……!』


人魚は、自分の輝く体に見惚れ、歓喜の声を上げた。


「仕上げはこれです!」


ヒナタは、人魚の腕にスマートウォッチを巻き付けた。


「低気圧が近づいて気圧グラフが下がり始めたら、無理せずに『酔い止め薬』を飲んで休むこと! イライラして嵐を呼んじゃダメですよ!」

『わ、わかった……! 私、自分が不吉なんじゃなくて、ただの気象病だったんだね……!』


人魚はすっかり改心し、ピカピカのウロコを輝かせながら、満面の笑みでヒナタの手を握った。


『私、不老不死の怪しい生肉を配るのはやめて、この輝く鮮度を活かして、王都の漁業組合で「鮮度管理アドバイザー」兼「気象予報士」として働くよ!』

「それがいいです! 美味しいお魚の捌き方をみんなに教えてあげてくださいね!」

「……ゆ、勇者殿。不老不死の最恐妖怪が……『アニサキスを恐れ、気象病を克服したピカピカの漁協アドバイザー』になってしまいましたぞ……」


セバスチャンは、生臭さが完全に消えた清々しい海風を深呼吸しながら、今夜はお刺身にしようと心に決めるのだった。


【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、無言でモニターを見つめていた。


『人魚が……「アニサキス」と「トリメチルアミン(生臭さ)」を指摘され、粗塩でヌメリを取られた……』

『嵐を呼ぶ力は「気象病」と診断され、スマートウォッチで気圧管理を始め、漁協に就職した……』


ドラマスは、もはや「不老不死」というファンタジー最大のテーマすら一瞬で論破されたことに深い感銘を受け、通販サイトで「気圧変動アラート付きスマートウォッチ」と「お刺身用の高級粗塩」をポチり、自らの自律神経と食生活の向上を目指すのだった。

(第88話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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