■第86話:地獄の荒くれ者・赤青黄の三色鬼! ……えっ、金棒で殴る前に「肝機能検査」と「メタボ外来」ですか?
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……ふぅ。ハンモック型の無重力リクライニングチェア、最高だな。空気清浄機のおかげで深呼吸が美味い」
神ドラマスは、管狐のケージを丸パクリした自室の環境にすっかり満足し、リラックスしきった顔でモニターを見下ろしていた。
画面の中では、ヒナタたちが王都近郊の岩山に足を踏み入れている。
「おっ、ついに出たか。日本の怪異の代名詞にして、フィジカルの頂点……鬼だ!」
ドラマスは、少しだけ背もたれを起こした。
「赤鬼、青鬼、そして黄鬼! 巨大な金棒を軽々と振り回し、人間を頭からかじり、酒をがぶ飲みする暴力と欲望の化身! ヒナタよ、この圧倒的な暴力と、規格外の巨体を前にしては、オカンの説教などハエが止まるようなものだろう!!」
【場所:人間界・王都近郊の岩山】
ドスッ……ドスッ……ドスッ。
岩山を揺らすような重い足音と共に、巨大な3つの影がヒナタたちの前に立ちはだかった。
頭には鋭い角、腰には虎の毛皮のパンツ、手にはトゲトゲの巨大な金棒。そして、ひょうたんに入った酒をラッパ飲みしている。
『ガハハハッ! 人間ども、よくぞ俺たちの縄張りに来たな!』
真っ赤な肌をした赤鬼が、血走った目で笑う。
『酒のツマミにちょうどいい。その柔らかそうな肉、頭からかじってやるぞォ!』
真っ青な肌の青鬼と、黄色い肌の黄鬼も、ギラギラと牙を剥き出しにした。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 正真正銘の鬼ですぞ!!」
セバスチャンが絶叫する。
「しかも赤、青、黄の三色揃い踏み! あの金棒を食らえば、一撃でミンチにされてしまいます!!」
『さあ、覚悟しろ人間ども!!』
3匹の鬼が、天高く巨大な金棒を振り上げた、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、金棒の風切り音をも凌駕する「生活習慣病予防外来」が岩山にこだました。
『……あ?』
三色の鬼たちは、金棒を振り上げたまま、ポカンと間抜けな声を漏らした。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で3匹の巨体にズンズンと詰め寄った。そして、それぞれの「顔色」をビシッと指差した。
「あなたたち!! 自分のその顔色を鏡で見たことあるんですか!? 健康状態が最悪のサインを出してますよ!!」
『け、健康状態……?』
「まず赤鬼さん!! いつも怒ってばかりで、塩分の高いツマミでお酒を飲んでるから、血圧が限界突破して『重度の高血圧』になって顔が真っ赤なんですよ! 血管がいつキレてもおかしくありません!!」
『こ、高血圧……!?』
「次に青鬼さん!! その青さは雪女さんと同じ『チアノーゼ』! そんな重い金棒を無理して振り回してるから、慢性的な酸欠状態に陥って末端の血流が滞ってるんです!!」
『さ、酸欠……!?』
「そして極めつけは黄鬼さん!!」
ヒナタの指先が、ひょうたんを持った黄鬼の鼻先に突きつけられる。
「肌が黄色い!? それは完全に『黄疸』です!! 浴びるようにお酒を飲んでいるせいで、肝臓が悲鳴を上げてビリルビンが血中に漏れ出しているんです! 即刻、禁酒と肝機能検査が必要です!!」
『お、黄疸!? 俺の自慢の黄色い肌は、肝臓のSOSだったのか……!?』
黄鬼が、持っていたひょうたんをガクガクと震わせた。
「大体、そのお腹!!」
ヒナタは、虎のパンツの上に乗っかっている、鬼たちのぽっこり出た下腹部をポンポンと叩いた。
「完全に『内臓脂肪型肥満』です!! そんなお腹で暴れ回ったら、膝の軟骨がすり減って老後は歩けなくなりますよ!! 痛風の足音も聞こえます!!」
『つ、痛風……!! 老後は歩けない……!!』
鬼たちは、金棒をカランカランと手放し、自分たちのぽっこりお腹を抱えて青ざめた(赤鬼と黄鬼も青ざめた)。
「今日から徹底的な生活習慣の改善プログラムを実行します!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「しじみのエスプレッソ(高濃度オルニチン配合)」「大型犬用のスリッカーブラシ」、そして「万歩計」を取り出した。
「まずは黄鬼さん! 肝臓を労るために、この『しじみ汁』を飲んでオルニチンを摂取しなさい! お酒は全量没収です!」
ヒナタがひょうたんを取り上げ、代わりに熱々のしじみ汁を渡す。
「そして、そのボサボサの髪の毛! 虎の毛皮に負けないくらい剛毛で絡まってますね! 僕はダブルコートの大型犬のブラッシングや、術後のデリケートなケアには慣れてるんです!」
ヒナタは、まるで大型犬の分厚いアンダーコートを梳かすような見事な手つきで、鬼たちの剛毛にブラシを通し始めた。
『おおっ……! 引っ張られて痛かった毛玉がスルスルと解けていく……。なんか、マッサージされてるみたいで気持ちいいぞ……』
鬼たちは、ブラッシングの心地よさに、思わず犬のように目を細めて座り込んだ。
「仕上げは有酸素運動です! ぽっこりお腹の内臓脂肪を燃焼させるには、激しい金棒の素振りより『ウォーキング』が一番!」
ヒナタは、3匹の鬼の虎のパンツに「万歩計」をカチッと装着した。
「毎日、3キロから6キロメートルの距離を、少し息が弾むくらいのペースで歩きなさい! 膝への負担を抑えつつ、確実に脂肪を燃やせる黄金の距離です!! サボったらオカンが許しませんよ!!」
『ま、毎日3〜6キロのウォーキング……!』
『わかった! 俺たち、人間を食べるのもお酒もやめて、毎朝3人でウォーキングするよ!』
数ヶ月後。
そこには、赤ら顔や黄疸がすっかり消え(健康的な肌色になり)、内臓脂肪が落ちて見事なシックスパックを手に入れ、ツヤツヤのサラサラヘアーになった「超健康的なフィットネス鬼(3人組)」が、爽やかな汗を流しながら毎日の3〜6キロのウォーキングコースを笑顔で歩く姿があった。
「……ゆ、勇者殿。地獄の荒くれ者たちが……『毎日の有酸素運動と肝臓ケアを欠かさない、健康志向のフィットネストレーナー』になってしまいましたな……」
セバスチャンは、スリムになった鬼たちがストレッチをしている姿を見つめ、自分も万歩計を買おうと心に誓うのだった。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、無重力リクライニングチェアからガバッと起き上がった。
『三色鬼が……「黄疸」と「高血圧」を指摘され、しじみ汁を飲まされた……』
『そして、内臓脂肪を燃やすために「毎日3〜6キロのウォーキング」を日課にさせられた……』
ドラマスは、そっと自分の下腹部(ちょっと最近たるんできた)をつまむと、無言でスニーカーを履き、「私も……まずは3キロから歩くか……」と、健康のためのウォーキングに出かける準備を始めるのだった。
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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