■第85話:呪いの管狐! ……えっ、人に憑く前に「劣悪な住環境」と「動物愛護法違反」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……ふぁ〜あ。よく寝た。やはり夜10時から朝6時までの8時間睡眠は、神の細胞をも活性化させるな」
神ドラマスは、座敷童子のエピソードで学んだ「睡眠のゴールデンタイム」を完璧に実践し、かつてないほどツヤツヤのお肌とスッキリとした頭でモニターの前に座っていた。
画面の中では、王都の広場を歩くヒナタたちの前に、怪しげな黒マントの男(闇の魔術師)が立ち塞がっている。
「ほう。あの男が手に持っている小さな竹筒……あれは間違いない。中に管狐を飼っているな」
ドラマスは、ツヤツヤの顔で頷いた。
「管狐は、竹筒などの狭い容器で飼いならされる小さな妖狐。人に憑りついて精神を病ませたり、呪いをかけたりする陰湿な使い魔だ。ヒナタよ、あの小さくすばしっこい呪いの獣から、どうやって身を守るつもりだ?」
【場所:人間界・王都の広場】
「ククク……。お前が魔王を骨抜きにしたという勇者だな」
黒マントの闇の魔術師が、ヒナタの前に立ちはだかり、懐から「古びた小さな竹筒」を取り出した。
「私は闇の魔術師。この竹筒の中には、我が恐るべき使い魔である『管狐』が封じられている。こいつをお前たちに憑りつかせ、一生治らない呪いを……」
魔術師が竹筒の蓋をポンッと開けた。
中から、細長いイタチのような、しかしふさふさの尻尾を持った小さなキツネ(管狐)が、窮屈そうに這い出してきた。
『キュゥゥ……。俺様に憑かれたら最後、骨の髄まで呪ってやるキュ……』
管狐が、体を丸めながら弱々しい声で威嚇する。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 呪いの管狐ですぞ!!」
セバスチャンが悲鳴を上げる。
『さあ行け、管狐よ! 勇者の耳から入り込み、その精神を食い破れ!!』
魔術師が指差した、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、呪いのオーラを瞬時に浄化する「オカンのガチギレ・トーン(動物愛護指導編)」が炸裂した。
『……キュ?』
管狐は、空中でビタッと静止し、そのままヒナタの手の中にスポッと収まった。
ヒナタは、魔術師の持っている「竹筒」をひったくると、鬼の形相でその中を覗き込み、魔術師の鼻先に突きつけた。
「あなた!! こんな狭くて通気性の悪い竹筒の中に、生き物を閉じ込めておくなんて『動物愛護法違反』ですよ!! 中が湿気と糞尿のアンモニア臭で充満してるじゃないですか!!」
「ど、動物愛護法……!? いや、これは呪いの道具であってペットでは……」
「言い訳しない!!」
ヒナタは、手のひらの上で丸くなっている管狐を優しく撫でながら、激しくまくし立てた。
「見てみなさい! こんな狭い筒の中で身動きが取れなかったせいで、極度の『運動不足』になり、関節が完全に固まってます! しかも竹筒の内側に黒カビが生えていて、この子は完全に『シックハウス症候群(アレルギー性鼻炎)』を起こしてますよ! 呪う前に、この子が呼吸困難で倒れちゃいます!!」
『キュゥゥ……。実は最近、ずっと鼻水が止まらなくて、腰も痛かったキュ……』
管狐が、ヒナタの手の中で可哀想にクシャミをした。
「許せません! 飼い主の資格ゼロです! ゴズさん、この劣悪な飼い主(魔術師)を衛兵に突き出してください!!」
「ブモォッ!(おうよ! 動物を大事にしねぇ奴は、俺が許さねぇぜ!)」
ゴズが、魔術師の首根っこを掴んでズルズルと引きずっていく。
「さて、管狐ちゃん。今まで狭くて辛かったね。今日からここは、あなたの新しい『超高級マンション』ですよ!」
ヒナタは、四次元リュックから、「特大サイズのクリアケージ(3階建て)」「静音設計の特大回し車」「ホコリが出ないオーガニック白樺チップ」、そして「温度・湿度管理機能付きのスマートヒーター」を取り出した。
「【アルティメット・極上ペットライフ・ケージ】!!」
ヒナタは、あっという間に広場に「小動物の理想郷」を組み上げた。
床にはフカフカの白樺チップが敷き詰められ、2階にはハンモック、3階には新鮮な水と無添加のドライフルーツ(おやつ)が完備されている。
「さあ、入ってごらん!」
管狐は、ヒナタの手から恐る恐るケージの中へと足を踏み入れた。
『……キュ!? な、なんだこの広さは!? しっぽを限界まで伸ばしても、まだ壁にぶつからないキュ!』
管狐は、狂喜乱舞してフカフカのチップの上を転げ回り、そのまま「静音回し車」に飛び乗った。
カラララララララッ!!(※無音)
『キュッハァァァ!! 走れる! 全力で走れるキュ!! なんだこの回し車、全然足腰に負担がかからないし、夜中に回しても近所迷惑にならない極上のベアリングだキュ!!』
数十分後。
そこには、人を呪う恐ろしい妖狐の姿はなかった。
回し車で心行くまで運動し、関節の固まりを完全にほぐした後、無添加のドライフルーツでお腹を満たし、2階の「ハンモック」で仰向けになって溶けるように眠る、「完全に野生と呪いを忘れた、甘やかされた小動物」がいた。
『……キュゥ〜ン。もう竹筒には絶対戻らないキュ。ここで一生、食べて寝て回し車を回すだけの生活を送るキュ……』
「はい、ケージの温度は常に24度、湿度は50%に保ちますからね! これでシックハウス症候群も治りますよ!」
ヒナタは、ケージのガラス越しに、愛おしそうに管狐を眺めていた。
「……ゆ、勇者殿。呪いの管狐が……『完璧な空調設備と遊具を与えられ、完全に骨抜きにされた過保護なハムスター』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、ハンモックで仰向けになって無防備な寝顔を見せる管狐を見て、その愛らしさに思わず口元を緩ませていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、すっかり健康的な顔つきのまま、モニターを見つめていた。
『管狐が……「動物愛護法違反」と「シックハウス症候群」を指摘され、飼い主が連行された……』
『挙句の果てに、静音回し車とハンモックで、ただの過保護なペットになった……』
ドラマスは、もはや一切のツッコミを放棄し、無言で通販サイトを開くと、「最高級・無重力リクライニングチェア(ハンモック風)」と「空気清浄機(加湿機能付き)」をポチり、自らの神殿の住環境を「管狐のケージレベル」まで引き上げることを決意するのだった。
(第85話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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