■第84話:福を呼ぶ座敷童子! ……えっ、繁栄の前に「夜更かし禁止」と「成長ホルモン」ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……ズズッ。うむ、生姜チューブをたっぷり入れた白湯は、体の芯から温まるな」
神ドラマスは、すっかり「着る毛布」に身を包み、手足に貼るカイロを完全装備した状態で、モニターを見つめていた。もはや神の威厳はどこにもなく、冬のコタツから出られない一般人のようなフォルムである。
「さて、王都に現れた次なる妖怪は、これまでとは毛色が違う。家に居着けばその家を栄えさせ、離れれば没落させるという、歩くパワースポット……座敷童子だ!」
ドラマスは、生姜湯のカップを置いた。
「座敷童子は幸運の象徴! 深夜にイタズラをしようとも、富と繁栄をもたらしてくれる存在には、さすがのヒナタもひれ伏して丁重にもてなすはずだ!!」
【場所:人間界・王城の離れ(和室)】
深夜2時。
ヒナタたちが滞在している王城の離れに、静かな足音が響いていた。
ペタッ……ペタッ……。キャハハッ。
「……ゆ、勇者殿。誰かが廊下を走っておりますぞ」
セバスチャンが目を覚まし、ふすまの隙間からそっと覗き込んだ。
そこには、おかっぱ頭に赤い着物を着た、5〜6歳くらいの可愛らしい子供の姿があった。その足には灰がついており、ピカピカに磨かれた板の間に、真っ白な足跡をペタペタと残しながら走り回っている。
「おお! あれは伝承に聞く座敷童子ですぞ!」
セバスチャンが興奮気味に小声を出す。
「あの子供が居着いてくれれば、この王国は永遠の繁栄を約束されたも同然……! 多少床が汚れても、決して怒ってはなりませぬ!」
『ウフフ……。みんなどんな顔して起きるかな……』
座敷童子が、ヒナタの寝ているふすまを開けようと手を伸ばした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、深夜2時の静寂を切り裂く「ガチの育児指導」が炸裂した。
『……ビクゥッ!?』
座敷童子は、小さな肩を跳ね上がらせてその場に固まった。
ヒナタは、布団からガバッと起き上がると、パジャマ姿のまま座敷童子の目の前に仁王立ちになり、その小さな頭をビシッと指差した。
「あなた!! 今、夜中の2時ですよ!? 子供がこんな時間に起き出して走り回るなんて、生活リズムが完全に崩壊してます!! 成長ホルモン(HGH)の分泌を何だと思ってるんですか!!」
『せ、せいちょうほるもん……?』
座敷童子は、あまりの剣幕にポカンと口を開けた。
「子供の成長ホルモンは、夜10時から深夜2時の『睡眠のゴールデンタイム』に最も多く分泌されるんです! こんな時間にイタズラしてたら、骨も筋肉も育たなくて、ずっとそのちんちくりんの背丈のままですよ!!」
『い、いや、私は妖怪だから、ずっと子供の姿で……』
「言い訳しない! 大体、その前髪!!」
ヒナタは、座敷童子の目元まですっぽり覆っている「おかっぱの前髪」を指差した。
「前髪が長すぎて目にかかってるじゃないですか! そんな状態を放置していたら、視力が落ちて『弱視』や『斜視』の原因になります! 妖怪だからって、子供の身だしなみと健康管理を怠るのはオカンが許しません!!」
『じゃ、弱視……!?』
「それに、足の裏に灰をつけっぱなしで板の間を歩き回るなんて! お掃除の手間が増えるでしょ!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「子供用散髪ハサミ&ケープ」「温かいホットミルク」「除菌ウェットティッシュ」、そして「知育絵本」を取り出した。
「ゴズさん、足の裏を綺麗に拭いてあげて! ヴァレリアさん、お布団をもう一枚敷いて!」
「ブモォッ!(おう! バイ菌を持ち込まないように、しっかり除菌するぜ!)」
ゴズが、座敷童子の足をウェットティッシュでピカピカに拭き上げる。
『な、何をするの……!? 私を怒らせたら、この家から出ていって没落させちゃうんだからね!!』
「【深夜の強制・入眠フルコース】です!!」
ヒナタは、座敷童子に散髪用のケープをサッと被せると、ハサミを手にして、目にかかっていた前髪をチョキチョキと手際よく「可愛らしい眉上パッツン」に切り揃えた。
『あっ……! 視界が……すごく明るい……。目がチクチクしない……』
「はい、偉かったですね! 胃を温めて副交感神経を優位にしますよ!」
ヒナタは、座敷童子の小さな両手に「ホットミルク(はちみつ入り)」の入ったマグカップを握らせた。
座敷童子は、はちみつの甘い香りに抗えず、両手でカップを持ってコクコクと飲んだ。
『……おいちい。お腹のなかが、ぽかぽかしてきちゃった……』
「仕上げは読み聞かせです!」
ヒナタは、座敷童子をフカフカの布団に寝かしつけると、隣に座って優しい声で絵本を読み始めた。
ホットミルクの温かさと、ヒナタの穏やかでリズミカルな声、そして散髪してサッパリした心地よさ。
夜更かし妖怪の座敷童子の小さなまぶたは、抗いようのない睡魔によって徐々に重くなっていった。
『……ふぁぁ。私、ずっと夜中に起きてて……本当は、眠かったの……。おやすみ、オカン……』
座敷童子は、ヒナタの服の袖をギュッと握りしめたまま、スヤスヤと健やかな寝息を立て始めた。
翌朝。
王城の庭では、朝6時にシャキッと起床し、ヒナタと一緒に「ラジオ体操」をこなし、ほうきを持って楽しそうに落ち葉掃きを手伝う座敷童子の姿があった。
『ヒナタお母さん! 庭の掃除、終わったよ! 朝ごはん、しっかり食べるね!』
「偉いですね! 早寝早起きと朝ごはんは、健康の基本ですよ!」
ヒナタが、座敷童子の頭を優しく撫でる。
「……ゆ、勇者殿。家に富をもたらす不思議な妖怪が……『規則正しい生活リズムと、お手伝いの習慣を身につけた、超優良な幼稚園児』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、朝日に輝く健康的な子供の笑顔を見つめながら、結果的に城の労働力(と癒やし)が増えて大繁栄している事実に気づき、静かに涙を拭った。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、着る毛布の中で無言のまま時計を見た。
時刻は、ちょうど夜の9時半を回ろうとしていた。
『幸運の座敷童子が……「成長ホルモンが出ない」と怒られ、ホットミルクを飲まされて寝かしつけられた……』
『そして、早寝早起きで朝の掃除を手伝う良い子になった……』
ドラマスは、もはや一切の迷いなく神の杖をベッドの横に立てかけると、「私も成長ホルモンを分泌させねば……」と呟き、夜10時のゴールデンタイムに間に合わせるため、部屋の明かりを消してフカフカの布団へと潜り込むのだった。
(第84話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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