■第79話:暴れん坊の3兄弟・かまいたち! ……えっ、刃物(爪)を持って走るなと怒られてネイルケアですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……よし、家庭用高圧洗浄機のポチり完了、と」
神ドラマスは、もはや天界の自室の掃除のことしか考えていない顔で、満足げに通販サイトの画面を閉じた。
そしてモニターに視線を戻すと、ヒナタたちがようやく王都の門をくぐったところだった。
「おや、王都が騒がしいな。……ほう! ヒナタが留守の間に、かまいたちが街に入り込んで暴れ回っているのか!」
ドラマスは、久々に神の杖を握り直した。
「かまいたちと言えば、つむじ風に乗って現れ、目にも止まらぬ速さで人を切り裂く3匹のイタチの妖怪! あの圧倒的なスピードと鋭利な刃の前には、ヒナタの生活の知恵など当たる暇もないはずだ!!」
【場所:人間界・王都の中央通り】
「ふぅ、ようやく王都に帰ってきましたね! ……あれ?」
ヒナタが広場に足を踏み入れると、街の様子が明らかにおかしかった。
干してあった洗濯物はズタズタに切り裂かれ、お店の看板は真っ二つに割れ、街路樹の葉っぱが不自然に散乱している。
「ゆ、勇者殿ォォォッ!! お助けをォォッ!!」
物陰から、国王と騎士たちがボロボロの服で転がり出てきた。
「どうしたんですか、その服の切れ端!?」
「ヒナタ殿! 留守中に、目に見えない風の化け物が……!」
セバスチャンが国王を庇うように前に出た、その時である。
ヒュオォォォォォォッ!!!
突然、猛烈なつむじ風が吹き荒れ、ヒナタたちの周囲をぐるぐると回り始めた。
風の中から、鋭い声が響く。
『キャハハハッ! 遅かったな勇者ぁ!』
『俺たち風の3兄弟、かまいたち様の通り道だ!!』
『お前たちの服も、皮膚も、みーんな切り裂いてやるぜェェッ!!』
凄まじいスピードで風の中を飛び回っているのは、両手に鋭く長いカマ(爪)を持った、3匹のイタチの妖怪だった。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 通り魔妖怪ですぞ!!」
セバスチャンが悲鳴を上げる。
『まずはその勇者のマフラー(一反木綿)から、切り刻んでやるゥッ!!』
3匹のかまいたちが、鋭い爪を振りかざし、ヒナタめがけて猛スピードで突っ込んできた!
誰もが「斬られる!」と目をつぶった、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、もはや神の雷よりも恐ろしい「オカンのガチギレ・トーン」が、つむじ風を物理的にかき消した。
『……ビクッ!?』
かまいたち3兄弟は、空中でビタッと急ブレーキをかけ、地面にゴロゴロと転がった。
ヒナタは、四次元リュックを地面にドンッと置き、鬼の形相で3匹のイタチにズンズンと詰め寄った。
「あなたたち!! 廊下(街中)を走らない! そして何より……『刃物を持ったまま走っちゃダメ』って、オカンに習わなかったんですか!!!」
『……えっ?』
かまいたちの長男が、ポカンと口を開けた。
「そんなに長くて鋭い爪を振り回して走り回ったら、転んだ時に自分の体に刺さって大怪我するでしょ!! 人に当たるのも危ないけど、自分自身の安全管理が全くなってません!!」
『い、いや、俺たちは妖怪だから、人を切り裂くのが仕事で……』
「大体、その爪!!」
ヒナタは、かまいたちの自慢の鋭い爪をビシッと指差した。
「長く伸ばしっぱなしにしてるから、乾燥して縦筋が入ってるし、ささくれだらけじゃないですか! 刃物は手入れが命! そんなボロボロの爪で人を切ろうなんて、美意識が低すぎます!!」
『び、美意識……!?』
「今すぐ没収……いえ、お手入れします!! ゴズさん、3匹とも押さえてて!」
「ブモォッ!(おうよ! このチョロネズミどもを固定すればいいんだな!)」
ゴズが、素早い動きで3匹のイタチの首根っこをガシッと掴んで吊り上げた。
『ギャーッ! 離せェッ! 俺たちの鋭い風の刃がぁぁっ!』
ヒナタは、リュックから「ガラス製の高級爪やすり」「甘皮処理用プッシャー」、そして「オーガニック・キューティクルオイル(保湿用ネイルオイル)」を取り出した。
「はい、おとなしくして! 爪切り(クリッパー)でバチンと切ると爪の層が割れちゃうから、ガラスやすりで一定方向に優しく削りますよ!」
シャリ、シャリ、シャリ……。
ヒナタの熟練のネイリストのような手つきにより、かまいたちの凶悪で長かった爪が、あっという間に「美しく丸みを帯びた安全なオーバル型(卵型)」へと削られていく。
『ヒィィッ……! 俺たちの凶器が、どんどん丸く……丸くされていくぅぅ……』
『あれ? でも……なんか削られてる感覚、ちょっと気持ちいいかも……』
「仕上げは保湿です! 爪の生え際にネイルオイルを塗って、優しくマッサージします! これで二枚爪も防げますよ!」
ヒナタが、柑橘系のいい香りがするオイルを爪の周りに擦り込んでいく。
数分後。
そこには、人を切り裂く狂気の妖怪の姿はなく、自分の「ツヤツヤ・ピカピカに輝く美しい爪」に見惚れてうっとりしている、3匹の可愛いイタチがいた。
『す、すげぇ……。俺の爪、桜貝みたいに輝いてる……!』
『今まで伸びっぱなしでガサガサだったのが嘘みたいだぜ……』
「はい、これで人を傷つけることはできませんね! ちょっと風を起こしてみてください」
ヒナタが促す。
3匹のかまいたちが、ツヤツヤの爪で風を切るように腕を振った。
そよそよ……〜〜〜。
『……あれ?』
鋭いカマ(つむじ風)を起こそうとしたはずが、爪が美しく丸く削られているため空気抵抗が極めて滑らかになり、「高原のそよ風のような、最高に心地の良いマイナスイオン風」しか出なくなってしまったのだ。
「おお! これは素晴らしい!」
後ろで見ていた魔王が、汗を拭きながら前に出てきた。
「我が魔王城は夏場になると熱気がこもってな。貴様ら、その美しい爪から放たれる『心地よい自然風』で、魔王軍専属の『大型サーキュレーター(扇風機)』として働かんか? もちろん、定期的なネイルケアの待遇付きだ」
『えっ! ネイルケア付きの専属扇風機!?』
『やるやる! 俺たち、もう人を切るより、このツヤツヤの爪を維持したい!!』
かまいたち3兄弟は、完全に通り魔から足を洗い、美しい爪をドヤ顔で見せびらかしながら、魔王城の空調設備として意気揚々と就職を決めるのだった。
「……ゆ、勇者殿。狂気の通り魔妖怪が……『美意識の高い、自然風サーキュレーター』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、かまいたちが起こす心地よいそよ風に吹かれながら、破れた服を直すために静かに裁縫道具を取り出した。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、無言で自分の爪先を見つめた。
『かまいたちが……「刃物を持って走るな」と怒られ、高級ネイルケアを施された……』
『挙句の果てに、爪が丸くなって風が優しくなり、扇風機として就職した……』
ドラマスは、深く、深くため息をつくと、高圧洗浄機に続いて「ガラス製爪やすり」と「キューティクルオイル(柑橘系)」をポチり、自らの爪をツヤツヤに磨き上げることで、神としての美意識を高める努力を始めるのだった。
(第79話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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