■第80話:二本足で踊る化け猫! ……えっ、人を呪う前に「椎間板ヘルニアの警告」と「極上ブラッシング」ですか?
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【場所:天界・管理室】
「……よし。キューティクルオイルのおかげで、私の爪も桜貝のようにピカピカだ」
神ドラマスは、もはや神としての威厳よりも「指先の美しさ」に意識を集中させながら、モニターをチラリと見た。
画面の中では、王都の路地裏をパトロールするヒナタたちの前に、新たな妖気が漂い始めていた。
「ほう、今度は化け猫か。長年生き立てた猫が魔力を得て妖怪と化した姿。二本足で立ち上がり、人語を解し、時には人間を操るという不気味な存在……。ヒナタよ、愛玩動物の皮を被った底知れぬ呪いに、どう立ち向かうつもりだ?」
【場所:人間界・王都の路地裏】
夜の王都の路地裏。
パトロール中のヒナタたちが、月明かりの下で「奇妙な影」を目撃した。
『ニャッハッハッハ……! 踊れ、踊れ、呪いの盆踊りニャ……』
頭に手ぬぐいを被り、尻尾の先が二つに分かれた巨大な三毛猫が、見事な「二本足」で立ち上がり、不気味なステップを踏んでいた。
化け猫である。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 猫が、猫が立って踊っておりますぞ!!」
セバスチャンが悲鳴を上げて後ずさる。
『俺様は化け猫! 長い年月を生きて妖力を得た、最強のネコチャンだニャ! お前たち人間も、俺様の呪いの踊りで、毎晩ネズミの夢しか見られない体に……』
化け猫が、二本足でピョンと跳ねてポーズを決めた、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、もはや深夜の王都の目覚まし時計と化した「オカンのガチギレ・トーン(動物愛護指導編)」が炸裂した。
『……ニャ?』
化け猫は、片足を上げた不自然なポーズで固まった。
ヒナタは、四次元リュックを置き、鬼の形相で化け猫にズンズンと詰め寄った。
「あなた!! 猫の骨格は『四足歩行』を前提に作られてるんですよ!? そんな風に無理に二本足で立ってジャンプなんかしたら、腰椎に凄まじい負担がかかって『椎間板ヘルニア』になります!! 今すぐ四つん這いになりなさい!!」
『へ、ヘルニア……ニャ? いや、俺様は妖怪だから立って歩けるように……』
「大体、その毛並み!!」
ヒナタは、化け猫のボサボサになった背中の毛をビシッと指差した。
「長生きしてるシニア猫なのに、全くブラッシングが行き届いてないじゃないですか! 換毛期の抜け毛が絡まって、巨大な毛玉(フェルト状)になってます! これじゃあ皮膚の通気性が悪くなって、皮膚炎の温床ですよ!!」
『ひ、皮膚炎……!?』
「それに、お腹のたるみ! さては毎日寝てばかりで、運動不足ですね!? 犬みたいに毎日の散歩の習慣がない分、室内でしっかり遊んであげないと、関節も固まるし肥満になります!」
ヒナタの言葉には、日頃から動物の健康管理(散歩や術後ケアなど)に精通している者特有の、有無を言わせぬ謎の説得力があった。
「今すぐ極上のお手入れを開始します! ゴズさん、逃げないように優しくホールドして!」
「ブモォッ!(おう! 猫は嫌がると引っ掻くからな、バスタオルで優しく包んで保定するぜ!)」
ゴズが、手慣れた様子で大判のバスタオルを使って化け猫を「簀巻き(すまき)」状態にした。
『ニャァァッ!? は、離せ人間! 俺様の呪いが……!』
ヒナタは、四次元リュックから、「高級ペット用ブラシ(アンダーコートを根こそぎ取るやつ)」「無添加オーガニックの肉球クリーム」、そして「シニア猫用・腎臓ケアの無添加おやつ(ちゅ〜〇的なやつ)」を取り出した。
「はい、まずはおやつで気を逸らしながら、優しくブラッシングしますよー」
ヒナタが、化け猫の鼻先に「無添加おやつ」を近づけた。
その、カツオと鶏肉の圧倒的な香りに、化け猫の妖怪としてのプライドは一瞬で吹き飛んだ。
『…………ニャッ!!? な、なんだこの美味すぎるペーストは!? 舌の上でとろけるニャ!!』
化け猫が無我夢中でおやつをペロペロと舐めている間に、ヒナタの職人技のブラッシングが炸裂する。
スッ……スッ……ごっそり。
『ニャァァ……。そこ……そこの背中の毛玉、ずっと痒かったニャ……』
専用ブラシが通るたびに、妖怪の体からソフトボールサイズの不要な抜け毛が次々と回収されていく。さらに、ガサガサになっていた肉球には、保湿力の高いクリームが優しくすり込まれた。
「はい、仕上げに運動です!」
ヒナタは、リュックから「高輝度レーザーポインター(ペット用おもちゃ)」を取り出し、地面に赤い光を走らせた。
『ニャッ!? にゃ、ニャンだあのすばしっこい赤い虫は!! 捕まえるニャーッ!!』
化け猫は、完全に四つん這いの「正しい猫の姿勢」に戻り、背骨を柔らかく使って、赤い光を本能のままに追いかけ始めた。
「いいですね! そうやって四本足で走ることで、背骨と関節が正しく使われて、健康的な筋肉が維持できるんです!」
ヒナタが笑顔でレーザーを操る。
数十分後。
そこには、人を呪う不気味な妖怪の姿はなく、毛並みはシルクのようにツヤツヤ、肉球はプルプル、そして適度な運動で満足しきって「ゴロゴロ」と喉を鳴らす、極上の美猫(巨大)が寝そべっていた。
「……ゆ、勇者殿。不気味な化け猫が……『完璧なグルーミングを施された、健康的な超大型セラピーキャット』になってしまいましたな……」
セバスチャンは、化け猫のツヤツヤの喉元を撫でながら、完全に癒やされきった顔をしていた。
『ニャァ〜ン……。ヒナタの手つき、最高ニャ……。俺様、もう二本足で立って腰を痛めるのはやめるニャ。これからは王城で、みんなの膝の上に乗って「アニマルセラピー」のお仕事をしてあげるニャ……』
化け猫は、すっかりヒナタに懐き、シニア猫とは思えないほどしなやかな四足歩行で、王城へ向かって優雅に歩き出すのだった。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、自分の腰をトントンと叩きながらモニターを見つめていた。
『化け猫が……「二本足はヘルニアになる」と怒られ、四足歩行に戻された……』
『挙句の果てに、極上のブラッシングでセラピーキャットになった……』
ドラマスは、無言で通販サイトを開き、「姿勢矯正サポートクッション」と「腰痛予防のコルセット」をカートに入れ、自らも二本足歩行(人間・神様)としての腰の健康管理を徹底することを固く誓うのだった。
(第80話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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