■第78話:絶望の巨大妖怪・塗り壁! ……えっ、道を塞ぐ前に「苔と黒カビの高圧洗浄」ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……大天狗がガイドになったことで、山の迷宮は攻略された。しかし、道が分かっていれば通れるというものではない」
神ドラマスは、もはやヒナタの「生活改善指導」に感化され、天界の自室の床をコロコロ(粘着カーペットクリーナー)で掃除しながらモニターを見つめていた。
画面の中では、蛍光ベストを着た大天狗の案内で、ヒナタたちが山道を順調に進んでいる。
「次なる妖怪は、純粋な『物理的絶望』の塊。前後左右、どこまでも無限に広がり、行く手を完全に遮断する巨大な壁……塗り壁だ! 物理攻撃も魔法も弾き返す、ロマン溢れる無敵の障壁! さすがのヒナタも、この『絶対に通れない』という絶望の前には立ち尽くすしか……!」
【場所:人間界・王都近郊の山道】
「いやぁ、天狗さんのガイドのおかげで、霧の中でも安心ですね!」
ヒナタは、蛍光ベストを着てトレッキングポールを突く大天狗の後ろを、ルンルン気分で歩いていた。
『おうよ! 足元に木の根があるから気をつけてな。この先を曲がれば、もうすぐ王都への抜け道……ぬ?』
大天狗が足を止めた。
山道のカーブを曲がった先。そこには、あるはずの道がなかった。
代わりに、天高くそびえ立ち、左右の木々の奥深くまで果てしなく続く、「巨大で泥だらけの壁」が立ち塞がっていたのだ。
ズゴゴゴゴゴ……!!
『ヌゥゥゥゥリィィィィ……!!』
壁そのものに、巨大な二つの目と、横に裂けた口が浮かび上がる。
絶望の妖怪、塗り壁である。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 道が完全に塞がれておりますぞ!!」
セバスチャンが悲鳴を上げる。
「あれでは右にも左にも避けられません! よじ登ることも不可能な高さです!!」
『ヌゥリィィィ……! 我は塗り壁……。この先へは一歩たりとも通さぬ……! ここで永遠に立ち往生し、絶望の中で力尽きるがよい……!!』
塗り壁が、低く地鳴りのような声で宣告した。
剣も魔法も通用しない、圧倒的な質量の暴力。
しかし。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、地鳴りをも上回る「超音波のようなガチギレ・トーン」が山にこだました。
『……ヌ?』
塗り壁の巨大な目が、パチクリと瞬きをする。
ヒナタは、塗り壁の目の前までズンズンと歩み寄り、その泥だらけの壁面をビシッと指差した。
「あなた! 人の行き交う道を勝手に塞ぐなんて、営業妨害どころか健康被害の元ですよ!! みんな、下半身の筋力低下を防ぐために、毎日3〜6キロメートルのウォーキングを日課にしてるんです! せっかくの有酸素運動のペースを乱さないでください!!」
『ウ、ウォーキング……? いや、我は妖怪として道を塞ぐのが仕事で……』
「大体、あなた自身のメンテナンスも全くなってません!!」
ヒナタは、塗り壁の表面にへばりついた汚れをこれでもかと指差した。
「湿気の多い山の中にずっと突っ立ってるから、表面にビッシリと『苔』と『黒カビ』が生えてるじゃないですか! しかも泥はねでドロドロ! これじゃあ通気性が最悪で、壁の内部から腐食(ひび割れ)が始まりますよ!!」
『コ、苔……? 黒カビ……?』
塗り壁は、自分の体(壁面)を見下ろそうと目を動かしたが、体が硬すぎてよく見えない。
『確かに……最近、体がジメジメして痒いというか、重苦しいとは思っていたが……』
「放置すればシロアリの温床になります! 今日は徹底的に綺麗にしますよ!!」
ヒナタは、四次元リュックから、オカンの最終兵器の一つである「超強力・高圧魔力洗浄機(ケル〇ャー的なやつ)」と、「外壁用の防カビ・防汚コーティング剤」を取り出した。
「ゴズさん、水源の確保をお願いします!」
「ブモォッ!(おう! 近くの沢から水を引いてくるぜ!)」
『な、何をする気だ……!? 我の強固な壁は、いかなる刃も魔法も……』
「【極大・ハイプレッシャー・ウォッシュ】!!」
ブシャァァァァァァァァァッ!!!!
ヒナタが洗浄機のトリガーを引いた瞬間、凄まじい水圧の水の刃が、塗り壁の表面を容赦なく削り始めた。
『ヌギャァァァッ!? 水圧が! 凄まじい水圧が我が体にぃぃッ……!!』
塗り壁が悲鳴を上げる。
しかし、その水圧は「壁を破壊する」ものではなく、「表面の汚れだけを完璧に剥ぎ取る」絶妙な調整が施されていた。
『あ、あれ……? 痛いけど……何百年もへばりついていた苔が、一瞬で吹き飛んでいく……! 毛穴(壁の気泡)に詰まっていた泥汚れが掻き出されて、風通しがめちゃくちゃ良くなってきたぞ……!?』
ブオォォォォォォ……ッ(汚れが落ちる快音)
ヒナタは、職人のような手つきで、洗浄機のノズルを左右に滑らせていく。
真っ黒だった壁面から、見違えるような「純白の漆喰」のような美しい素肌が次々と現れた。
「仕上げに防カビコーティングです!」
ピカピカになった壁面に、ヒナタが満遍なくコーティング剤を吹き付ける。
数十分後。
そこには、絶望感漂う泥だらけの妖怪の姿はなく、まるで地中海のリゾート地にでもありそうな、太陽の光を反射して輝く「純白の美しい壁」がそびえ立っていた。
『おおぉぉ……!! なんだこの軽さは……! 体が深呼吸しているようだ! 表面もツルツルで、水を完璧に弾いておる!!』
塗り壁は、自分の信じられないほどの美白ボディに感動し、打ち震えた。
「綺麗になって良かったですね! でも、道を塞いだままだと皆のウォーキングの邪魔になるから、通してくれませんか?」
ヒナタが笑顔で頼む。
『もちろんだとも!! 我がボディをここまで磨き上げてくれた恩人よ!!』
ズズズズズ……!!
塗り壁は、まるで高級ホテルの自動ドアのように、スゥ……ッと横にスライドし、ヒナタたちのために広々とした道を空けてみせた。
『ヒナタ殿! 我はこの美しい白壁を活かし、これからは天狗殿と共に、山を歩く者たちのための「巨大な案内板(プロジェクターのスクリーン代わり)」として生きることにするぞ!』
「それは素晴らしい再就職先ですね! ぜひ、ウォーキングコースのマップでも表示してあげてください!」
ヒナタは満足げに頷き、純白の壁に見送られながら、健康的なペースで歩き去っていくのだった。
「……ゆ、勇者殿。物理的絶望の妖怪が……『リゾート風の美しい白壁(自動ドア機能付き)』になってしまいましたな……」
セバスチャンは、ピカピカの壁に自分の顔が反射しているのを見つめながら、深々とため息をついた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、コロコロの粘着テープを静かに剥がした。
『無敵の塗り壁が……「苔と黒カビが生えてる」と怒られ、高圧洗浄機で美白化された……』
『挙句の果てに、ウォーキングコースの案内板になって道を開けた……』
ドラマスは、もはや神の杖を完全に放り出し、通販サイトで「家庭用・高圧洗浄機キット」を検索しながら、天界の神殿の外壁の黒ずみをどうやって落とすか、真剣に検討し始めるのだった。
(第78話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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