■第77話:人を惑わす大天狗! ……えっ、神隠しの前に「未成年者誘拐」と「足元の死角」の説教ですか?
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【場所:天界・管理室】
「……河童がライフセーバーになった。だが、山の真の恐ろしさは『迷うこと』にある」
神ドラマスは、もはや画面の向こうのヒナタの行動を予測することを諦め、純粋に「次は何のライフハックが飛び出すのか」を期待するような目でモニターを見つめていた。
画面の中では、ヒナタ一行がさらに山深くへと進み、いつの間にか濃い霧に包まれていた。
「出たな、山の覇者にして幻術の達人、大天狗だ。人を惑わし、永遠に山の中を彷徨わせる『神隠し』の張本人。方向感覚を奪われた勇者たちが、あの高い鼻と一本歯の下駄を持つ怪人にどう立ち向かうのか……お手並み拝見といこう」
【場所:人間界・王都近郊の深い山道】
「あれ? さっきから同じ木の下を歩いているような……」
ヒナタが足を止めた。
周囲は真っ白な濃霧に覆われ、前後左右の感覚が完全に失われている。
「ゆ、勇者殿! これはただの霧ではありません! 幻術ですぞ!!」
セバスチャンが慌てて周囲を見回した。
『カァーッ、カッカッカッ!! その通り! 気づくのが遅かったな、人間どもよ!』
突如、頭上の木々の間から、突風と共に巨体が舞い降りた。
真っ赤な顔に突き出た異様に長い鼻、背中には黒い烏の羽、そして山伏の装束に一本歯の下駄を履いた大妖怪――大天狗である。
『俺様は、この山を統べる大天狗! 貴様ら人間を幻術で惑わし、永遠に元の世界へ帰れなくしてやろう! いわゆる【神隠し】というやつだぁ!!』
大天狗が、手にしたヤツデの葉の団扇をバサァッと振りかざし、高らかに宣言した。
恐ろしい幻術の世界へ引きずり込まれる――誰もがそう覚悟した瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、もはや親の顔より聞いた「ガチギレ・トーン」が、濃霧を物理的に吹き飛ばすほどの勢いで響き渡った。
『……ぬ?』
大天狗が、団扇を振り上げたまま固まる。
「神隠しって!! それ、ただの『未成年者略取誘拐罪』じゃないですか!!」
ヒナタは、腰に手を当てて大天狗をビシッと指差した。
「親御さんの許可も取らずに、勝手に人を山の奥に連れ去るなんて、残された家族がどれだけ心配して夜も眠れなくなると思ってるんですか!? オカンを泣かせる奴は、妖怪だろうと許しませんよ!!」
『ゆ、誘拐罪……? いや、俺様は妖怪として恐れられるために神隠しをだな……』
「大体、あなた自身の安全管理も全くなってません!!」
ヒナタの怒りの矛先が、大天狗の「顔」へと向いた。
「その無駄に長すぎる鼻!! 前を見る分にはいいでしょうけど、真下を見ようとした時、完全に【足元の死角】になってるじゃないですか!!」
『……え? 死角?』
大天狗は、思わず自分の長い鼻の先を見つめようと下を向いた。
「そんな足元が見えない状態で、さらにバランスの悪い【一本歯の下駄】を履いて、木の根っこだらけの山道を歩くなんて……労働安全衛生法違反レベルの危険行為です!!」
『な、何を馬鹿な! 俺様は何百年もこの山を……あっ』
大天狗が、ヒナタに言い返そうと一歩前に踏み出した、その瞬間。
見事なまでに自分の長い鼻のせいで足元の「木の根っこ」を見落とし、一本歯の下駄を引っ掛けてしまった。
『うおわぁぁぁッ!?』
ズデェェェンッ!!!
山の覇者たる大天狗が、顔面(長い鼻)から地面に激突し、派手にすっ転んだ。
「ほら見なさい!! 言わんこっちゃない!!」
ヒナタは、慌てて四次元リュックから「救急セット」を取り出し、鼻血を出してうずくまっている大天狗の元へ駆け寄った。
「鼻の骨、折れてませんか!? だから言ったんですよ、死角を甘く見ちゃダメだって!」
ヒナタは、大天狗の長い鼻に手早く湿布を貼り、包帯をぐるぐると巻いて応急処置を施した。
『い、いてて……。まさか、自分の鼻のせいで足元が見えていなかったとは……』
大天狗は、包帯だらけの鼻を押さえながら、完全に戦意を喪失して座り込んだ。
「いいですか? 山の道を誰よりも知っていて、霧(幻術)を操れるなら、人を迷わせるんじゃなくて『安全に案内』してあげてください!」
ヒナタは、リュックから「蛍光イエローの安全ベスト(反射材付き)」「黄色い工事用ヘルメット」「高輝度LEDヘッドライト」、そして「安定感抜群のトレッキングポール(2本)」を取り出し、大天狗にフル装備させた。
「ふむ。見事な装備だ。これなら濃霧の中でも視認性抜群だな」
ゴズが感心したように頷く。
「下駄は危ないので、足元が見えない間はちゃんとトレッキングポールで地面を確認しながら歩くこと! そして、迷っている人がいたら、その目立つベストとライトで安全な道へガイドしてあげるんです!」
『ガ、ガイド……? 俺様が、人間の道案内を……?』
大天狗は、自分に装着された眩しいほどの安全装備と、手に持たされたトレッキングポールをまじまじと見つめた。
『……悪くない。人を迷わせて泣かせるより、道に迷った人間をこの安全装備で華麗に救出し、「ありがとう、天狗様!」と感謝される方が、俺様の承認欲求も満たされる気がしてきたぞ……!!』
大天狗の背中に、謎のモチベーションの炎が燃え上がった。
「その意気です! さあ、まずは僕たちを王都へ続く安全な道まで案内してください、天狗ガイドさん!」
『おうよ! 足元に気をつけて、俺様についてきな!!』
大天狗は、トレッキングポールをカチャカチャと響かせながら、LEDヘッドライトで濃霧を照らし、安全第一の完璧な足取りで一行を先導し始めた。
「……ゆ、勇者殿。山の覇者が……『蛍光ベストを着た、安全第一のベテラン山岳ガイド』になってしまいましたな……」
セバスチャンは、暗闇でピカピカと光る反射材を見つめながら、安心しきった足取りでその後をついていくのだった。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、無言でモニターを見つめていた。
『神隠しの大天狗が……「未成年者誘拐」と「鼻の死角」を指摘されて、すっ転んだ……』
『そして、蛍光ベストとヘルメットを被って、山岳ガイドに転職した……』
ドラマスは、静かに手元のメモ帳に「鼻が長い時は足元に注意」と書き込むと、もはや妖怪の尊厳が完全に消え去った平和な山道を見つめ、次なるロマンの塊(塗り壁)の登場を心待ちにするのだった。
(第77話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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