■第75話:最恐の食人鬼・山姥! ……えっ、人肉より「薬膳スープとアンチエイジング」ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……フフフ。そうか、王都の外れの山に『奴』が潜んでいたか……!」
神ドラマスは、ブルーベリーサプリをボリボリと齧りながら、モニターの前で邪悪な(しかしどこか期待に満ちた)笑みを浮かべていた。
画面の中では、ヒナタ一行が妖怪の残党を追って、王都近郊の鬱蒼とした山道へと足を踏み入れている。
「ついに真の恐怖が降臨するぞ! 深山に潜み、人間を頭からバリバリと喰らう最恐の食人鬼、山姥だ!!」
ドラマスは、歓喜に打ち震えた。
「これまでの妖怪とは『殺意』の桁が違う! 洗濯やマッサージで誤魔化せるような相手ではない! さあヒナタよ、老婆の姿をした絶対的な死の恐怖の前に、今度こそ絶望の悲鳴を上げるがいい!!」
【場所:人間界・王都近郊の山道】
「いやぁ、山の空気は美味しいですね! 山菜がいっぱい採れそうです!」
ヒナタは、四次元リュックからザルを取り出し、完全にピクニック気分で山道を歩いていた。
「ゆ、勇者殿、警戒を怠らないでくだされ! この山には、人を喰らうという恐ろしい老婆の妖怪が……」
セバスチャンが、周囲の木々のざわめきにビクビクと肩を揺らす。
その時である。
『……シャァァァァッ!!』
頭上の大木の枝から、ボロボロの着物を纏った巨大な影が、凄まじいスピードで降ってきた!
『ヒィーッヒッヒッヒ!! 新鮮な肉だ! 若くて柔らかい人間の肉だぁぁッ!!』
振り乱した真っ白な髪、血走った目、そして耳まで裂けた口には、ノコギリのように鋭い牙がびっしりと並んでいる。
最恐の妖怪、山姥である。
その手には、錆びついた巨大な出刃包丁が握られていた。
「で、出たァァァッ!! 食人鬼の山姥ですぞ!!」
セバスチャンが絶叫する。
「ブモォッ!(老婆だろうと容赦しねぇぞ!)」
「ふむ。狂気に飲まれた哀れな鬼か。私が斬ろう」
ゴズとヴァレリアが武器を構えた、その瞬間。
『まずはその細っこい勇者の腕から、骨ごと噛み砕いてやるわぁぁッ!!』
山姥が、ヒナタに襲いかかろうと大きく口を開けた。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、山をも震わせる「オカンのガチ説教トーン」が炸裂した。
『……ギエ?』
山姥は、空中でピタリと静止し、そのままドサッと地面に着地した。
ヒナタは、一切怯むことなく山姥の目の前までズンズンと歩み寄り、そのボサボサの白髪と、シワだらけの肌をビシッと指差した。
「あなた! そんなに髪の毛のキューティクルが剥がれて、お肌も乾燥してシワシワなのに、生肉(人間)なんか食べようとしてるんですか!?」
『……はぁ?』
「生肉なんて消化に悪すぎます!! 年齢を考えてください! 胃酸の分泌が落ちているのにそんなものを食べたら、胃腸炎になりますよ!!」
ヒナタは、山姥の出刃包丁をヒョイッと取り上げると、腰に手を当ててまくし立てた。
「それに、お肌のたるみと髪のパサつき! これは完全に『タンパク質』と『コラーゲン』不足、そして山奥の強い紫外線による『光老化』です!! 美容と健康の敵ですよ!!」
『び、美容……? いや、アタイは恐ろしい人食いババアで……』
「言い訳しない! 今日からその偏った食生活(人食い)は完全禁止です!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「特大の寸胴鍋」と「大量の魔界野菜」、そして*高級アンチエイジング・ヘアオイル」を取り出した。
「ゴズさん、火を起こして! ヴァレリアさん、この野菜を一口大に切ってください!」
「ふむ。妖怪を斬るより、野菜を斬る方が私の剣も喜んでいる気がするな」
ヒナタは、あっという間に山道に「野外キッチン」を設営すると、寸胴鍋でグツグツと何かを煮込み始めた。
『な、何をする気だい……!? アタイを煮込んで食う気かい!?』
山姥が恐怖で後ずさりする。
「違います! あなたの衰えた胃腸に優しく、コラーゲンたっぷりの『特製・魔界鶏と根菜の薬膳スープ(生姜たっぷり)』です!!」
ヒナタは、ホカホカと湯気を立てるスープを木のお椀によそい、山姥の手に無理やり握らせた。
「はい、フーフーして、ゆっくり飲んで!」
『……コ、コラーゲン……?』
山姥は、その暴力的なまでに食欲をそそる出汁の香りに勝てず、恐る恐るスープを一口すすった。
『…………ぁぁぁっ』
山姥の目から、ポロリと涙がこぼれ落ちた。
『な、なんだいこの、五臓六腑に染み渡る優しい温かさは……。トロトロに煮込まれた鶏肉のコラーゲンが、アタイのシワシワの細胞一つ一つに行き渡っていくようだわ……。生姜で体の芯からポカポカしてくる……』
「でしょ!? 温かいスープは万能薬です! さあ、食べてる間に髪の毛のケアもしますよ!」
ヒナタは、スープをすする山姥の背後に回り込み、ボサボサの白髪に高級ヘアオイルをたっぷりと揉み込み、丁寧なブラッシングを開始した。
『あぁっ……痛くない……。何百年も梳かしてなかった髪が、絹糸みたいにスルスルになっていく……』
数十分後。
そこには、恐ろしい食人鬼の姿はなかった。
薬膳スープの栄養で肌はツヤツヤ(血色が良い)、髪は高級サロン帰りのように輝くプラチナブロンド、そして何より、憑き物が落ちたような穏やかな笑顔を浮かべる「超・美魔女のおばあちゃん」が座っていた。
『……ありがとう、人間の勇者さん。アタイ、ずっと一人ぼっちで山にいて、寂しくて……つい人間を脅かして食べようとしちゃってたんだね……』
山姥は、ツヤツヤの頬を赤らめながら、上品にお椀を置いた。
『もう人間なんて生臭いものは食べないわ。この薬膳スープのレシピ、アタイに教えてくれないかい? 山菜と組み合わせて、究極の美容スープを作ってみたいの』
「もちろんですよ! お肌のゴールデンタイム(夜10時〜深夜2時)には絶対寝るようにしてくださいね!」
ヒナタが満面の笑みで親指を立てる。
「……ゆ、勇者殿。最恐のトラウマ妖怪が……『美と健康に目覚めたオーガニック志向の美魔女』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、あまりの神々しい変貌ぶりに、もはや拝むしかなかった。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、静かにブルーベリーサプリの袋を閉じた。
『人を喰らう最恐の山姥が……「消化に悪い」と怒られ、薬膳スープで美魔女になった……』
『「光老化」って……勇者が妖怪に紫外線対策を語るなよ……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、引き出しから「アンチエイジング・フェイスパック」を取り出し、自らの神としての威厳をケアするために、静かに顔面にパックを貼り付けるのだった。
(第75話・完)
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