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■第74話:自信喪失の1つ目小僧! ……えっ、サイクロプスと比べられて落ち込んでるんですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……うん、やはり睡眠の質を高めると、朝の目覚めが劇的に違うな」


神ドラマスは、前夜に枕返しからこっそり届けられた「オーダーメイド低反発枕」のおかげで、かつてないほど爽快な朝を迎えていた。もはや天界の自室は、ヒナタの健康指導によって完全にプロデュースされている。


「さて、朝の王都に現れたのは、誰もが知る愛嬌のある妖怪、1つ目小僧だ。大きな一つ目で『ベロベロバァ』と驚かせるのが仕事なのだが……。可哀想に、彼は今、このファンタジー世界特有の『高すぎる壁』にぶち当たって心を痛めているようだ。ヒナタよ、あの可哀想な小僧を救ってやってくれ……」


ドラマスは、もはや妖怪の味方のような顔で、静かにモニターを見つめた。


【場所:人間界・王都の中央広場(朝)】

王都に清々しい朝が訪れ、民たちがヒナタの指示通りにお布団を干し始めた頃。

広場の物陰から、小さな男の子の姿をした妖怪――1つ目小僧がピョンと飛び出してきた。


『ベロベロバァァァーーーッ!! 驚いたか人間にぃ!!』

1つ目小僧は、顔の真ん中にある大きな一つ目をギョロリと剥き出しにし、長い舌を突き出して、朝の散歩をしていたセバスチャンたちの前に立ちはだかった。

しかし。


「おや?」


セバスチャンは、全く驚く様子もなく、むしろ不思議そうに首を傾げた。


「これは……随分と小柄な『サイクロプス』の子供ですな。迷子ですかな?」

『……えっ?』


1つ目小僧の動きが止まる。


「ブモォッ(本当だな。サイクロプスにしちゃ、随分とちんちくりんで迫力不足だ。棍棒も持ってねぇし、遠近感が狂うぜ)」


ゴズが、腕を組んで上から見下ろす。


『ふむ。魔界のサイクロプス族は体長5メートルは下回らんが……。変異種か? それにしては魔力がスカスカだな』


魔王までが、興味なさそうに通り過ぎようとする。

そう、この世界の住人にとって「一つ目の化け物」といえば、家を一撃で粉砕する巨大モンスター「サイクロプス」が基準なのだ。そのため、人間の子供サイズで、ただ目が大きいだけの1つ目小僧は、恐怖の対象どころか「ちんちくりんな未熟者」にしか見えなかったのである。


『サ……サイクロプスじゃないやい……っ!』


1つ目小僧の一つ目に、みるみるうちに大粒の涙が溜まっていった。


『俺様は恐怖の妖怪、1つ目小僧なんだい! なんで……なんで誰も怖がってくれないんだよぅ! サイクロプスの方がでかくて強いからって、ちんちくりんって言うなァァァン!!』

ついに1つ目小僧は、その場に大の字になってワンワンと大泣きを始めてしまった。妖怪としての自信を、完全に粉砕されてしまったのだ。

そこへ。


「ちょっと皆さん!!!」


広場の向こうから、割烹着姿のヒナタが、激怒した顔でダッシュしてきた。


「何てこと言うんですか! 人の容姿や種族を他の生き物と勝手に比べて、ちんちくりんだの迫力不足だの、容姿泥棒ルッキズムもいいところです! 傷ついた子供の気持ちを考えなさい!!」


ヒナタは、魔王やゴズをビシッと指差して叱り飛ばすと、泣きじゃくる1つ目小僧の前に優しく屈み込んだ。


「大丈夫ですか? ほら、そんなに泣いたら、せっかくの素敵なお目々が真っ赤に腫れて、結膜炎になっちゃいますよ」


ヒナタは、四次元リュックから「子供用の低刺激目薬」と「清潔なガーゼ」を取り出し、優しく涙を拭いてあげた。


『う、うわぁぁん……お兄ちゃん……。俺、目が一つしかないのに、誰にも怖がってもらえない無能な妖怪なんだよぅ……』

「そんなことありません!」


ヒナタは、1つ目小僧の両肩を優しく掴み、真っ直ぐにその大きな目を見つめた。


「サイクロプスは確かに大きくて力強いかもしれません。でもね、あの一族はだいたい眼圧が高くて、遠視や乱視がひどいから、細かいものを見るのがすごく苦手なんですよ!」


ヒナタは、リュックから「視力検査の表(ランドルト環)」を取り出し、壁にペタッと貼った。


「いいですか? あなたのそのお目々は、ピント調節機能がものすごく優秀そうに見えます。はい、これを見て。どっちが開いてますか?」

『え……? み、右……?』

「じゃあ、これは?」

『下……?』

「これは?」

『あ、斜め左上……! 小さいのにハッキリ見える!』

「素晴らしい!! 視力5.0はありますよ!!」


ヒナタはポンッと手を叩いて絶賛した。


「サイクロプスには絶対に真似できない、圧倒的な『超・視力』と『動体視力』です! 素晴らしい個性じゃないですか!!」

『え……? お、俺の目、すごいの……?』


1つ目小僧の一つ目が、キラキラと輝き始めた。


「すごいどころじゃないです! その素晴らしい目を、人を驚かせるためじゃなくて、もっとみんなの役に立つことに使いましょう!」


ヒナタは、隣で反省していた魔王を振り返った。


「魔王さん! 畑の無農薬野菜の葉っぱの裏につく、小さ〜いアブラムシの卵や、お米の『異物混入チェック(選別作業)』に、この子の視力はぴったりだと思いませんか!?」

『何っ……!?』


魔王がガタッと身を乗り出した。


『我が第1農園の無農薬白米は、手作業での小石の選別が非常に手間でな……! その大きな目で、一瞬で見抜けるというのか!?』

『うん! 俺、お米の中のちっちゃいゴミ、全部見えるよ!!』


1つ目小僧が、胸を張ってニカッと笑った。


『おおっ……! 素晴らしい! 是非とも我が農園の「最高品質管理責任者スーパーインスペクター」として、破格の待遇(おやつ付き)で迎え入れたい!!』


魔王は、1つ目小僧の手をガシッと握りしめた。


「良かったですね! これからはその素敵な目で、たくさんの美味しいお野菜やお米をチェックして、みんなを笑顔にしてくださいね!」

「うん! 俺、世界一の検査官になるーーーッ!!」


1つ目小僧は、サイクロプスへの劣等感を綺麗さっぱり洗い流し、最新の「農産物検査官」としての自信に満ち溢れた笑顔で、魔王と共に意気揚々と畑へと向かっていった。


「……ゆ、勇者殿。妖怪のアイデンティティ喪失を……『視力検査』と『農作業の品質管理』で解決してしまいましたな……」


セバスチャンは、もはや感心を通り越し、王国の食の安全が守られたことに深く感謝するのだった。


【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、静かに自分のブルーライトカット眼鏡を拭いた。


『1つ目小僧が……サイクロプスとの比較論を克服して、「品質管理責任者」に就職した……』

『「あの一族は乱視がひどい」って……勇者がサイクロプスへの偏見(事実)を語るなよ……』


ドラマスは、深くため息をつくと、通販サイトで「ブルーベリーサプリメント(目に良い成分)」を箱買いし、自分の眼精疲労をケアしつつ、次の妖怪の到来に備えるのだった。

(第74話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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