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■第72話:一つ目のから傘お化け! ……えっ、驚く前に「撥水(はっすい)加工のメンテナンス」ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……うん。顎を引いて背筋を伸ばすと、確かに体調が良いな」


神ドラマスは、前回のろくろ首戦(整体)を見て自らの姿勢を正し、非常に健康的なキャスター付き椅子に座ってモニターを見つめていた。もはや戦いを見守るというより、健康バラエティ番組を視聴するスタンスに近い。


「さて、夜明け前、百鬼夜行の最後に現れたのは、誰もが知るメジャー妖怪、から傘お化けだ。一本足の下駄でピョンピョン跳ね、人を驚かせる愛嬌のある妖怪だが……。いや、もう何も言うまい。ヒナタよ、お前の思う通りにするが良い……」


ドラマスは、手元のメモ帳に「傘の正しい干し方」と書き込みながら、静かに画面を凝視した。


【場所:人間界・王都の中央広場】

夜明け前の静まり返った広場に、軽快な音が響き渡っていた。


ベコン、ベコン、コーン、コーン……。

「ひ、ひぃ! 今度は何ですかな!? 妙に陽気な足音が聞こえますが……」


セバスチャンが、ろくろ首から返してもらったばかりの一反木綿マフラー(フローラルな香り)を握りしめながら周囲を警戒する。


霧の向こうからピョンピョンと跳ねて現れたのは、古い和傘に一つ目、そして一本の足に下駄を履いた妖怪――から傘お化けであった。


『ベロベロバァーーーッ! 驚いたか人間にぃ! 夜明け前の王都は、俺様が恐怖のどん底に……』


から傘お化けが、大きな舌をベロリと出して脅かそうとした、その瞬間。


「ちょっと待って!!!」


ヒナタの、すっかりお馴染みとなった「主婦のガチギレトーン」が広場に炸裂した。


『えっ……?』

から傘お化けは、一本足の下駄でピタッと着地し、大きな一つ目をパチクリとさせた。


ヒナタは、ハァ……と深い、深いため息をつきながら、から傘お化けの「頭(傘の生地)」をビシッと指差した。


「あなた! 雨の日に使った後、ちゃんと『陰干し』して乾かしましたか!? 生地の撥水はっすい加工が完全に切れて、べっちゃり水を吸ってるじゃないですか!!」

『は、撥水……? いや、俺、から傘の妖怪だから、水に濡れるのはデフォルトっていうか……』

「ダメに決まってるでしょ!!」


ヒナタはズンズンと詰め寄った。


「和傘は油を塗って防水してるんだから、濡れたまま畳んで放置したら、油がハゲて生地が痛むし、骨組みが湿気で錆びちゃうんですよ! ほら、近づいただけで、押し入れの奥みたいな強烈なカビ臭さがします!」

『か、カビ臭い……!? 俺様は恐怖の妖気を放って……』

「それは妖気じゃなくてカビです! それにその足!!」


ヒナタの鋭い視線が、から傘お化けの一本足へと向けられた。


「一本歯の下駄で、そんな硬い石畳をピョンピョン跳ね回るなんて、足首の靭帯や膝の軟骨にどれだけ負担がかかってると思ってるんですか!? 今すぐその下駄を脱ぎなさい!!」

『えぇぇぇッ!? 下駄脱いだら俺、ただの棒になっちゃうよぉ!?』

「言い訳しない! 道具は手入れが命、そして体はいたわるのが基本です!」


ヒナタは、四次元リュックから、「サビ取りクリーム」「高級ミシン油」「超強力・防水スプレー(アウトドア用)」、そしてなぜか「高機能・衝撃吸収スポーツサポーター」を取り出した。


「ゴズさん、動かないようにしっかり持っててください!」

「ブモォッ!(おう、この傘立て(妖怪)を固定すればいいんだな!)」


ゴズが、から傘お化けの柄をガシッと掴んで固定する。


『あわわわ! 離せ! 何をする気だぁッ!』

「【聖なるメンテナンス(ホーリー・リペア)】!」


ヒナタは、まずサビ取りクリームでから傘お化けの骨組みのサビを綺麗に落とし、関節部分にミシン油を注して滑らかにした。

そして、古い油の匂いとカビを魔法の風で一気に消臭すると、仕上げに最新のアウトドア用防水スプレーを、頭からこれでもかと満遍なくシューーーッと吹き付けた。


『プハッ! ゲホゲホッ! なんか頭(生地)の表面に、ものすごい透明なバリアが張られていく感覚が……!?』

「よし、仕上げに足のケアです!」


ヒナタは、から傘お化けの一本足に、サイズぴったりの「衝撃吸収スポーツサポーター」をキツめに巻きつけた。


「はい、これで跳んでみてください!」


ゴズが手を離すと、から傘お化けは恐る恐るピョンッと跳ねてみた。


トーン、トーン、トーン……!


『……えっ!?』

から傘お化けの一つ目が、驚きで真ん丸になった。


『な、なんだこれぇぇッ!? 跳んでも、地面からの衝撃が足首に全く響かない! それに、骨組みがめちゃくちゃ軽くて、傘の開閉が新品みたいにスムーズだぞ……!?』

ヒナタは、バケツに入った水を、から傘お化けの頭にザバーーッ!と浴びせかけた。


『ギャァッ!?』

から傘お化けが身構えるが……水は一滴も生地に染み込むことなく、蓮の葉の上の水滴のように、パシャァァァッ!!と気持ちいいほど丸まって弾け飛んでいった。


『す、すげぇ……!! 水が、水をめちゃくちゃ弾くぞ!! 俺、生まれて初めてこんなに弾いた!!』

から傘お化けは、自分の完璧な撥水機能と、サポーターによる足の軽さに大感動し、広場を嬉々として大ジャンプで跳ね回り始めた。


「フッ……素晴らしい。あのアウトドア仕様の撥水性、我が魔王軍の雨具としても正式採用したいくらいだな」


焚き火の横で、魔王が腕を組んで感心している。


「良かったですね! 傘は使った後、必ず広げて日陰でしっかり乾かすこと! 約束ですよ!」


ヒナタが笑顔で指差し確認をする。


『はいっ! わかりました、ヒナタ師匠!! 俺、今日から『陰干し』を徹底します! ありがとうーーーッ!!』


から傘お化けは、かつてないほどの高機能なコンディションに生まれ変わり、ピカピカに水を弾きながら、嬉しそうに朝焼けの空へと跳ねて帰っていった。


「……ゆ、勇者殿。妖怪が……大手アウトドアブランドの『高級ハイスペック雨具』のようになって帰っていきましたぞ……」


セバスチャンは、朝日に輝きながら去っていく傘を見送り、もはや拝むような姿勢になっていた。


【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、静かに自分の「ビニール傘(骨が1本折れている)」を見つめた。


『から傘お化けが……「メンテナンス不足」を説教されて、超撥水仕様に魔改造された……』

『そして、一本足に「スポーツサポーター」を巻いて帰っていった……』


ドラマスは、深くため息をつくと、すぐに通販サイトを開き、「超強力防水スプレー(フッ素系)」と「お買い得高級和傘」を買い物かごに入れ、自分の生活の質(QOL)を高めるためのポチりを行うのだった。

(第72話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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