■第71話:闇に伸びるろくろ首! ……えっ、恐怖の妖怪に「ストレートネックの治療」ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……ふぅ。ホットアイマスクのおかげで、目がスッキリしたぞ」
神ドラマスは、眼精疲労から復活し、気を取り直してモニターに向かっていた。
大入道が帰った後も、王都の夜は終わっていない。
「巨大怪獣の次は、和風ホラーの真骨頂! 首がどこまでも伸びる女の妖怪、ろくろ首だ!」
ドラマスは、再び期待を込めて画面を凝視した。
「ろくろ首の恐ろしさは、その『不気味さ』にある! 暗闇から音もなく首だけが近づいてきて、生首にジッと見つめられるという心理的恐怖! こればかりは、いくらヒナタでも悲鳴を上げて……!」
【場所:人間界・王都の城壁の上】
「ふぁぁ……。そろそろ妖怪の皆さんも寝る時間じゃないですかねぇ」
ヒナタは、大入道のヘッドスパを終え、城壁の上で大きく伸びをしていた。
その時である。
『ウフフフフフ……』
城壁の外の暗闇から、女の不気味な笑い声が聞こえた。
見下ろしても、体はない。しかし、暗闇の中からスルスル……スルスル……と、「青白い女の生首」だけが、蛇のように長い首をくねらせながら、城壁を登ってきたのだ。
「ひぃぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 今度は首が伸びる化け物ですぞ!!」
セバスチャンが、ヒナタの背中にしがみついてガタガタと震える。
『人間の勇者よ……。私のこのおぞましい姿を見て、震え上がるが……』
ろくろ首の生首が、ヒナタの顔の目の前までスッと近づき、ニタリと笑った、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、本日3度目となる「オカンのガチ指導トーン」が炸裂した。
『……えっ?』
ろくろ首の顔が、ヒナタから数センチの距離でピタリと止まる。
ヒナタは、ろくろ首の顔ではなく、城壁の下までだらしなくウネウネと伸びている「異常に長い首のライン」をビシッと指差した。
「あなた! その首の角度、完全に頸椎のカーブが失われてますよ! 重度の『ストレートネック(スマホ首)』です!!」
『ス、スマホ首……? いや、私、ろくろ首なんですけど……』
「ろくろ首だろうとスマホ首だろうと関係ありません! 人間の……いや、妖怪の頭の重さは、スイカ1個分(約5キロ)もあるんですよ!? そんな長い首で、だらしなく前に頭を突き出してウネウネさせてたら、首と肩の筋肉に凄まじい負担がかかります!!」
ヒナタは、ろくろ首の生首を両手でガシッと掴んだ。
『ヒッ!? な、何をする気……!』
「それに、こんな夜更けに首筋を丸出しにして! 首は太い血管が通ってるから、ここを冷やすと全身が冷えて自律神経が乱れるんです! 万病の元ですよ!!」
ヒナタは、ろくろ首の頭を小脇に抱え込むと、首の付け根から頭に向かって、凄まじい指圧で「頸椎の矯正マッサージ(整体)」を開始した。
ゴキッ! ボキボキボキッ!!
『ギャァァァッ!? 痛い、痛いィィッ! 妖怪の首の骨が鳴ってるゥゥッ!?』
「はい、痛気持ちいいところで止めますよー! 顎を引いて、胸を開く! そうです、その正しい姿勢(S字カーブ)を体に覚え込ませてください!」
ヒナタの容赦ない整体術により、ウネウネと曲がりくねっていたろくろ首の首が、見事なまでに「ピンッ!」と真っ直ぐな美しい姿勢へと矯正されていく。
『あ、あれ……? 痛いけど……何百年も重かった肩周りが……スゥッと軽くなっていく……!?』
「仕上げは防寒対策です! 一反木綿さん、出番ですよ!」
ヒナタが声をかけると、ヒナタの首に巻かれていた「純白でフローラルな香りのマフラー(一反木綿)」が、シュルル……!と飛び立った。
『任せとけ! 俺様が極上の温もりを提供してやるぜ!』
一反木綿は、長さ10メートルの布地をフル活用し、ろくろ首の異常に長い首を、下から上までぐるぐると、隙間なく温かく包み込んだのだ。
『あぁぁぁ……。なんだこの、首全体を包み込むふかふかの温かさは……。しかも、いい匂い……。冷え切っていた内臓まで温まっていくようだわ……』
ろくろ首は、もはや人を呪う気力など完全に失い、一反木綿に顔を埋めてうっとりとした表情を浮かべた。
「首が長い分、冷えやすいですからね! これからは外出する時、絶対に首を冷やしちゃダメですよ!」
ヒナタが、満足げに頷く。
『ええ……ありがとう、人間の勇者さん。私、今まで首を伸ばすことばかり考えて、自分の体のケアを怠っていたわ……。これからは、正しい姿勢と温活を心がけるわね……』
ろくろ首は、まるで休日のOLのようにスッキリとした顔で微笑むと、一反木綿を巻いたまま(一反木綿は後日返しに来ると約束して)、シュルルル……と森の中へ帰っていった。
「お気をつけてー! 枕の高さにも気をつけてくださいねー!」
ヒナタが大きく手を振る。
「……ゆ、勇者殿。和風ホラーの定番が……『整体院に通うOL』みたいな顔になって帰っていきましたぞ……」
セバスチャンは、真っ直ぐな姿勢で帰っていく長い首を見送りながら、もはや自分がファンタジー世界にいるのか現代日本にいるのか分からなくなっていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、無言で自分の首をコキコキと鳴らした。
『恐怖のろくろ首が……「ストレートネック」と診断されて整体を受けた……』
『そして、一反木綿が……「超ロングサイズの温活マフラー」として再利用されている……』
『……もう、この世界の妖怪は、全員ヒナタの「健康指導」を受けるために並んでるだけなんじゃないか……?』
ドラマスは、もはや恐怖も絶望も消え去った王都の夜景を見つめながら、自分自身のストレートネックを直すために、顎を引いて正しい姿勢で椅子に座り直すのだった。
(第71話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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