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■第68話:恐怖の砂かけばばあ! ……えっ、その砂、自然薯(じねんじょ)の栽培に使うんですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……夜だ。ついに夜が来たぞ……!」


神ドラマスは、充血した目でモニターを睨みつけ、ゴクリと息を呑んだ。


画面の中では、王都に夜の帳が下り、ヒナタによってこじ開けられた家々の窓から、怯えた市民たちが外の様子を窺っている。


「昼間はラジオ体操だの布団干しだのとふざけたマネをしてくれたが……夜になれば妖怪たちの独壇場だ!」


ドラマスは、神の杖を握り直した。


「ヒナタよ、お前のその『生活の知恵』など、どこからともなく現れる妖魔の群れの前では無力! さあ、今度こそ剣を抜け! 光の魔法を放つのだ!!」



【場所:人間界・王都の中央広場】

「そうですか、夜になると妖怪が現れるのですね」


ヒナタは、広場の真ん中で焚き火にあたりながら、セバスチャンから話を聞いていた。


「はい! どこからともなく湧いてきては、我々を恐怖のどん底に陥れるのです! 勇者殿、どうかご警戒を……!」


セバスチャンがガタガタと震えながら周囲を見回す。


「ふむふむ。どこから来るのかは分からない、と。……それならば、夜を待ちましょう!」


ヒナタは、なぜか「大量の空の土嚢どのう袋」と「スコップ」を広場に並べ、腕まくりをして待ち構えていた。


「ブモォッ!(いつでも来やがれ!)」

「ふむ。我が剣のサビにしてくれる」


ゴズとヴァレリアも武器を構え、魔王は腕を組んで焚き火に当たっている。

その時だった。


『ヒィーッヒッヒッヒ……!』


広場を包む夜霧の中から、不気味な笑い声が響き渡った。


ザッ、ザッ……と足音を引きずりながら現れたのは、ボロボロの着物を着た不気味な老婆の妖怪。

「砂かけばばあ」である。


「で、出たァァァッ!!」


セバスチャンが悲鳴を上げて国王の後ろに隠れる。


『人間の勇者とやら……。よくも我らが一反木綿を、フローラルな香りのマフラーにしおったねぇ!』


砂かけばばあは、竹筒を片手にヒナタを睨みつけた。


『お前たちの顔面に、この呪われた砂を浴びせかけてやるよ! 目を潰され、呼吸を奪われ、暗闇の中で苦しみながら……』


砂かけばばあが、竹筒を振りかぶった、その瞬間。


バサァァァァッ!!

大量の砂が、ヒナタたちに向かって勢いよく撒き散らされた!


「勇者殿ォォォッ!!」


セバスチャンが絶望の声を上げる。神ドラマスも「よし、目潰しだ!」と拳を握る。

しかし。


「おおっ!!」


砂煙が晴れた後。

ヒナタは、目を押さえて苦しむどころか、地面に落ちた砂を両手で掬い上げ、目をキラキラと輝かせていた。


「魔王さん! 見てください、この砂!!」


ヒナタは、掬い上げた砂を指の間からサラサラとこぼして見せた。


「水はけが良くて、空気をたっぷり含んだフカフカの砂です! しかも、適度に粘土質が混ざっていて、保水力も抜群!」


ヒナタは、砂かけばばあに向かって、満面の笑みで叫んだ。


「砂はこちら(土嚢袋)にお願いします! いい砂ですね。これでいい『自然薯じねんじょ』が育ちますよ!!」

『……は?』


砂かけばばあの竹筒を持った手が、ピタリと止まった。


「自然薯って、土が硬いと途中で折れ曲がったり、短くなっちゃうんです! でも、この砂を畑の土に混ぜてふかふかのベッドを作れば、真っ直ぐで長〜い、最高級の自然薯が育ちます!!」


ヒナタは、スコップを構え、砂かけばばあに向かってズンズンと歩み寄った。


「さあ! もっと! もっと砂をかけてください! トマトの栽培にも、この水はけの良さは絶対に役立ちますから!!」

『なっ……!?』


砂かけばばあは、後ずさりした。


恐怖を与えるための「呪われた目潰しの砂」が、ただの「優良な農業用土壌改良剤」として大絶賛されているのだ。


『うむ!』


その後ろから、魔王がエプロン姿のまましゃしゃり出てきた。


『確かに、この砂の粒度は絶妙だ! 我が第3農園の土は少し粘土質が強すぎて、根菜類の育ちが悪かったのだ! 勇者よ、これはいい拾い物をしたな!』


魔王までが、地面に這いつくばって砂を吟味し始めている。


『な、何を言っているんだお前たちは!? これは呪われた砂だぞ! 目に入ったら……』

「あ、目に入らないように、ちゃんとゴーグルしてますから大丈夫です!」


ヒナタは、いつの間にか農作業用の透明ゴーグルを装着していた。


「ゴズさん、ヴァレリアさん! お婆さんが砂を撒いたら、急いでこの土嚢袋に集めてくださいね!」

「ブモォッ!(任せろ! 一粒残さず回収してやるぜ!)」

「ふむ。このスコップの素振り、なかなか腰の捻りの訓練になるな」

『ヒィィィッ!? や、やめろォォッ!!』


砂かけばばあが竹筒を振るたびに。

勇者一行が「わーい! ナイス砂!」と歓声を上げながら、スコップで凄まじいスピードで砂を回収していく。


『わしの恐怖の砂が……ただの畑の肥料に……!!』


数分後。

砂かけばばあの竹筒は完全に空っぽになり、広場には「良質な農業用砂」がパンパンに詰まった土嚢袋が山のように積み上げられていた。


「いやぁ、助かりました! お婆さん、こんなにいい砂をタダで配達してくれるなんて、本当にありがとうございます!」


ヒナタは、疲れ果ててへたり込んでいる砂かけばばあに、温かいほうじ茶を差し出した。


「お礼に、このお茶をどうぞ! あ、次来るときは、少し『腐葉土』も混ぜてきてくれると嬉しいなぁ!」

『…………(白目)』


砂かけばばあは、ほうじ茶を両手で受け取り、完全に魂が抜けた顔で「……はい」とだけ呟き、トボトボと夜霧の中へ帰っていくのだった。



【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、無言でモニターの電源を抜き、コードをハサミで切断した。


『「目潰しの砂」が……「自然薯のベッド(土壌改良剤)」として回収された……』

『恐怖の妖怪が……「優良な土砂の無料配達業者」扱いされて、ほうじ茶飲んで帰っていった……』

『……もう、この世界の戦闘は、「農業」と「家事」に完全敗北したんだ……』


ドラマスは、神の杖を窓の外(雲海)に向かって全力で投げ捨て、ホームセンターのチラシ(園芸コーナー)を真剣な顔で読み始めるのだった。

(第68話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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