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■第67話:王都に到着! ……えっ、妖怪の心配より「日照不足」の心配ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「着いた……! ついに、勇者が王都に着いたぞォォォッ!!」


神ドラマスは、もはやボロボロになった神の杖を握りしめ、モニターの前で歓喜の涙を流していた。


画面の中では、純白のマフラー(一反木綿)を巻いたヒナタを乗せ、ロック鳥が王都の広場へと力強く舞い降りていく。


王都は今、最悪の状況にあった。

空は紫色の妖気(瘴気)に覆われ、街の通りには人っ子一人いない。すべての家の扉や窓には重い木の板が打ち付けられ、「魔除けのお札」がベタベタと貼られている。

完全な籠城状態である。


「さあヒナタよ! 恐怖に震える民たちに、光の剣を掲げて宣言するのだ!『もう安心だ、僕が妖怪どもを討ち滅ぼす!』と!!」


ドラマスは、勇者の感動的な凱旋スピーチを期待して、天界のスピーカーのボリュームを最大まで上げた。



【場所:人間界・王都の中央広場】

バサァァァンッ!

ロック鳥が広場に着陸した瞬間、固く閉ざされていた王城の門がギィィィと少しだけ開き、国王と重武装の騎士たちが血相を変えて転がり出てきた。


「ゆ、勇者殿ォォォッ!! お待ちしておりましたぞォォォッ!!」


国王が、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながらヒナタの足元にすがりついた。


「妖怪どもが……! 夜な夜な街を練り歩き、恐ろしい妖気を振り撒いているのです! 我々はもう何日も、一歩も外に出られず、太陽の光すら見ておりません……!」

「このままでは、王都は恐怖と飢えで全滅してしまいます! どうか、どうか我々をお救いください!!」


騎士たちも一斉に跪く。

家々の隙間からは、真っ青な顔をした市民たちが、震えながら勇者の姿を覗き込んでいた。


その悲痛な訴えを聞いて。

ヒナタは、街の様子をぐるりと見渡し……スッと眉をひそめた。


「国王さん」

「は、はいっ! 妖怪の弱点がわかりましたか!?」


国王が期待に満ちた目を向ける。

ヒナタは、腰に手を当てて、不思議そうに首を傾げた。


「なぜ皆さんは、そんな暗い家の中に閉じこもっているんですか? 外に出て日に当たらないと、すごく不健康ですよ!」

『……えっ?』


国王も、騎士たちも、そしてセバスチャンも。

全員の思考が、ピタリと停止した。


「い、いや勇者殿!? 外には恐ろしい妖怪が……!」

「妖怪がなんだか知りませんけど!」


ヒナタは、ビシッと家々に貼られた木の板と『魔除けのお札』を指差した。


「あんな風に窓まで完全に塞いじゃったら、『換気』ができないじゃないですか! 家の中に湿気がこもって、壁紙にカビが生えちゃいますよ!」


ヒナタのオカン的説教が、静まり返った王都に響き渡る。


「それに、皆さん顔が真っ青です! ずっと暗い部屋にいたら、体内時計が狂って自律神経が乱れちゃうし、ビタミンDが不足して骨もスカスカになります!」

「いや、骨がスカスカになる前に、妖怪に食われてしまうから閉じこもっているわけでして……!」


セバスチャンが必死にツッコミを入れるが、ヒナタの耳には全く届いていない。


「大体、こんなジメジメした暗い空気を溜め込んでるから、変なモノ(妖怪)が寄ってくるんです! 病は気から、健康は『朝の換気』からです!!」


ヒナタは、ズンズンと一番近くの民家に向かって歩き出した。


「ちょ、勇者殿!? 何を……ッ!」

「はい、お邪魔しますよー! 【生活魔法・強制大換気】!!」


ヒナタが民家の扉に手をかざすと、ベタベタと貼られていた「魔除けのお札」が、ただの『通気性を悪くするゴミ』として風で吹き飛ばされ、打ち付けられていた木の板がバキバキと外れていった。


「ギャァァァッ! ま、窓が開いたァァッ! 妖怪が入ってくるゥゥッ!」


家の中にいた家族が悲鳴を上げて抱き合う。

しかし。


バサァァァァァァッ!!

ヒナタの魔法によって、家の中に強烈な「新鮮な空気」と、雲の隙間から差し込んだ「清々しい太陽の光(紫外線)」が一気に流れ込んだ。


それはただの物理的な風ではない。ヒナタの持つ「光の勇者の魔力」が乗った、100%の除菌・防カビ効果を持つ神聖なるそよ風である。


「……あ、あれ?」


怯えていた家族が、恐る恐る目を開ける。


「なんだか……空気が美味しい?」

「胸のつかえが取れたみたいだ……! 肩こりも治ってる……!?」


家の中に充満していた「妖怪に対する恐怖(という名の二酸化炭素と湿気)」が完全に吹き飛ばされ、市民たちの顔にみるみる血色が戻っていく。


「はい! 窓を開けたら深呼吸! 吸ってー、吐いてー!」


ヒナタが、広場の真ん中でラジオ体操のような動きを始めた。


「さあ、他の家の皆さんも! 怖がってないで、お布団を外に干しましょう! お日様の匂いを嗅げば、妖怪の恐怖なんて一発で吹き飛びますよ!」

「ブモォッ!(俺が重い窓を全部開けてやるぜ!)」


ゴズが、斧を置いて家々の窓を次々とこじ開けていく。


「ふむ。確かに、剣を振るうにもまずは健康な肉体メンタルからだな」


ヴァレリアも、日陰に隠れていた市民たちを次々と日向へと引っ張り出していく。


こうして。

妖怪の襲撃に怯え、死を覚悟していた王都の民たちは。

ヒナタの「換気と日光浴の強要(オカンの愛)」によって、次々と家の外へと引きずり出され、清々しい朝日の中で「謎の健康体操」をさせられることになったのである。



【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、虚無の表情で天界のスピーカーの電源を落とした。


『王都の防衛戦が……「ラジオ体操」と「布団干し」の風景に変わった……』

『「妖怪から身を守るため」の籠城を、「換気不足でカビが生える」と全否定しやがった……』

『……もう、お札より「ファブリーズ」でも配った方が早いんじゃないか……?』


ドラマスは、もはやヒナタの辞書に「ファンタジーの危機」という言葉が存在しないことを完全に受け入れ、引き出しから青汁を取り出して、静かに健康生活を始めるのだった。

(第67話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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