■第66話:大妖怪・がしゃどくろ強襲! ……えっ、怪獣バトルじゃなくて「道徳の授業」ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「おお……おおおおッ!!」
神ドラマスは、モニターの前で神の杖を天に突き上げ、歓喜の雄叫びを上げていた。
画面の中では、夕暮れの空を飛ぶロック鳥の下……鬱蒼と茂る王都近郊の森から、山のように巨大な「白い物体」がヌッと立ち上がろうとしていた。
「出たぞ! 怨念が集まって生まれた巨大な骸骨の妖怪、がしゃどくろだ!!」
ドラマスは、興奮で息を荒くした。
「一反木綿は(なぜか洗濯されて)敗れたが、がしゃどくろの物理的な巨大さと暴力は、家事スキルなどではどうにもならん! 巨大怪鳥ロック鳥と、巨大骸骨がしゃどくろの、空と大地を揺るがす大怪獣バトルが今、始まるのだァァッ!!」
【場所:上空・ロック鳥の背中】
「一反木綿さん、あったかいですねー」
ヒナタは、首に巻いた純白のフワフワ(一反木綿)に顔を埋め、すっかりくつろいでいた。
『……(スリスリ)』
一反木綿も、柔軟剤の香りに包まれながら、ヒナタの首元で幸せそうに揺れている。
「王都の城壁が見えてきましたぞ!」
セバスチャンが身を乗り出した、その瞬間だった。
ガクンッ!!
『ピギィィィィッ!?』
突如、ロック鳥が悲鳴を上げ、空中で大きくバランスを崩した。
まるで、見えない巨大な錨を下ろされたかのように、機体(鳥)が急激に下へと引っ張られる!
「な、何事だ!?」
ヴァレリアが大剣を抜き、下を覗き込んだ。
森の木々を押し退け、天に向かって伸びていたのは――何十メートルもある、巨大な「骸骨の腕」だった。
その骨の指が、ロック鳥の右足をガッチリと掴んで離さないのだ。
『ガチ……ガチガチガチ……!!』
眼下の森から、無数の骨が擦れ合うような、耳を劈く不気味な音が響き渡る。
見下ろせば、森の中に座り込むような形で、見上げるほど巨大な骸骨が、空飛ぶロック鳥を力任せに引き摺り下ろそうとしていた。
「ブモォォッ! でけぇ骸骨だ! 俺の斧じゃ届かねぇぞ!」
「ひぃぃっ! が、がしゃどくろです! あのまま地面に叩きつけられて、食べられてしまいますぞ!!」
セバスチャンがパニックになって叫ぶ。
『ピギィィッ! ピギィィィッ!!(痛い! 足が痛いよぉ!!)』
ロック鳥が、引っ張られる足の痛みに涙をボロボロとこぼし、必死に羽ばたいている。
その悲鳴を聞いた瞬間。
「…………」
ヒナタの顔から、いつものニコニコした笑顔が、スッと消え去った。
「ゆ、勇者殿? いかがなされた……ひっ!?」
セバスチャンは、ヒナタの横顔を見て思わず息を呑んだ。
ヒナタの背後から、かつてないほどの「本気の怒りのオーラ(ドス黒い何か)」が立ち上っていたのだ。魔王軍の幹部たちですら震え上がる、真のオカンの怒りである。
「……ちょっと」
ヒナタは、ロック鳥の背中の縁に立つと、眼下のがしゃどくろに向かって、ありったけの声で怒鳴りつけた。
「こらァァァァァッ!!! 何やってるんですかァァァッ!!!」
『……ガチ?』
がしゃどくろが、ヒナタの凄まじい怒声に驚き、掴んでいた手への力を少しだけ緩めた。
「ロック鳥さんが痛がってるでしょ!! 動物の足を急に下から引っ張るなんて、関節が外れたらどうするつもり!? 動物をいじめる悪い子は『めっ!』です!!」
ヒナタは、腰に手を当てて、大怪獣に向かって「本気の説教」を始めた。
「大体、何ですかその体は! 骨がスカスカじゃないですか! 日光浴も足りてないし、カルシウム不足だからって、イライラして他人に八つ当たりするなんて最低です!」
『ガチ……?(怒られてる……?)』
がしゃどくろの巨大な眼窩(目のくぼみ)が、パチパチと瞬きをするように動いた。
「痛いことされたら悲しいでしょ!? 自分がされて嫌なことは、他のお友達にもしちゃダメって、教わらなかったんですか!!」
ヒナタは、持っていたお玉(なぜか持っていた)で、ロック鳥の背中をバンバンと叩いた。
「ほら! 今すぐ手を離して、ロック鳥さんにちゃんと『ごめんなさい』しなさい!! 謝るまで許しませんからね!!」
『…………ガチィ』
がしゃどくろは、ヒナタの放つ「圧倒的な保護者のプレッシャー」に完全に気圧されていた。
何百年も生きてきた大妖怪である自分に対し、恐怖もせず、武器も持たず、ただ純粋に「道徳的な怒り」をぶつけてくる人間など、初めてだったからだ。
スッ……。
がしゃどくろは、ロック鳥の足から、そーっと指を離した。
『ピギッ!』
足が解放されたロック鳥が、ホッと息をついて体勢を立て直す。
そして、がしゃどくろは森の中でモゾモゾと姿勢を正すと。
巨大な骨の体を折りたたむようにして、大地の上で綺麗な「正座」をした。
『……ガチガチ(……ごめんなさい)』
がしゃどくろは、巨大な頭蓋骨を深く下げ、ペコリとロック鳥に向かってお辞儀をしたのだ。
「……よろしい!」
ヒナタは、ようやくいつもの笑顔に戻り、大きく頷いた。
「ちゃんと謝れて偉いですね! ご飯(小魚などのカルシウム)をいっぱい食べて、健康な骨を作ってくださいね!」
『ガチ!(はい!)』
がしゃどくろは、すっかり「先生に怒られて素直に反省した幼稚園児」のようになり、正座のまま大人しく手を振って、空飛ぶロック鳥を見送るのだった。
「……ゆ、勇者殿。伝説の大妖怪が……正座して反省しておりますぞ……」
セバスチャンは、眼下でシュンとしている巨大骸骨を見て、もはや自分の常識のタガが完全に外れていくのを感じていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、空を見つめたまま、微動だにしていなかった。
『大怪獣バトルが……「道徳の授業」で終わった……』
『「動物をいじめたらダメ」って……そういう次元のモンスターじゃないだろう……怨念の集合体だぞ……』
『なんで怨念の集合体が……カルシウム不足を指摘されて、正座して謝ってるんだよ……』
ドラマスは、神の杖をそっと床に置き、膝を抱えて丸くなった。
もう、このファンタジー世界で「シリアスな死闘」が繰り広げられることは、永遠にないと完全に悟った瞬間だった。
(第66話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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