表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
65/110

■第65話:妖怪・一反木綿が襲来! ……えっ、戦闘じゃなくて「お洗濯」ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「よし! 今度こそ、今度こそ本当に王都へ向かっているぞ!!」


神ドラマスは、モニターの前で神の杖を握りしめ、感涙に咽び泣いていた。


画面の中では、巣をピカピカに掃除されてどこか誇らしげなロック鳥が、夕暮れの空を猛スピードで飛んでいる。


「だが、妖怪どももただ待っているわけではない! 王都から放たれた空の刺客……『一反木綿いったんもめん』が接近している!」


ドラマスは、画面の端から迫る白い布の妖怪を指差した。


「一反木綿は、空を飛び、獲物の首や顔に巻きついて窒息させる恐ろしい妖怪! 空中戦なら、剣や魔法も簡単には当たらん! さあヒナタよ、この妖怪の恐怖の前に、勇者としての真のシリアスを見せるがいい!!」



【場所:上空・ロック鳥の背中の上】

「いやぁ、巣が綺麗になってロック鳥さんも嬉しそうですね!」


ヒナタは、風に吹かれながらニコニコと笑っていた。


「左様ですな! この調子なら、完全に日が落ちる前に王都へ……むっ!?」


セバスチャンが、空の彼方からヒラヒラと飛んでくる「白い物体」に気づき、杖を構えた。


『ヒィーッヒッヒッヒ! 人間の勇者とやら、お前たちの命、この一反木綿がいただきに参ったぞぉ!』


それは、長さ約一反(約10メートル)の、薄汚れた白い布の妖怪だった。

布の先端に不気味な二つの目が浮かび上がり、ヒナタたちに向かってユラユラと威嚇している。


「で、出たァァッ! 王都を襲っているという異形の化け物(妖怪)です!!」


セバスチャンが悲鳴を上げる。


「気を付けてください! あの布に巻きつかれたら、呼吸を止められてしまいますぞ!」

『いかにも! 俺様の恐ろしい布地で、貴様らの顔面をぐるぐる巻きにして窒息させてやるわぁっ! さあ、覚悟……』


一反木綿が、ヒナタの顔面めがけて飛びかかろうとした、その瞬間。


「……ちょっと待って!!」


ヒナタの、地を這うような低いガチトーンが響き渡った。


『ヒェッ?』


一反木綿は、思わず空中でピタリと止まった。

ヒナタは、一反木綿を頭から尻尾(?)の先まで、まるで汚物を見るような目でジッと睨みつけた。


「……あなた。自分が今、どれだけ『不衛生』か分かってる?」

『……はい?』

「全体的に薄汚れて黄ばんでるし! 端っこはホツレてボロボロ! おまけに、近づいただけでカビとホコリの生乾き臭がするんだけど!?」


ヒナタは、腰に手を当てて一反木綿をビシッと指差した。


「そんな『何百年も洗ってないダニだらけの雑巾』みたいな体で、人の顔に巻きつこうなんて……非常識にも程があるでしょ!! 肌荒れしたらどうするの!!」

『ぞ、雑巾……ッ!? 俺様は恐怖の妖怪だぞ! 布に風呂(洗濯)なんか必要ねぇんだよ!!』

「問答無用! ヴァレリアさん、ゴズさん! あの不潔な布を捕まえて!!」


ヒナタは、四次元リュックから、特大の「洗濯桶たらい」と「ギザギザの洗濯板」、そして「特製・酵素配合オーガニック洗剤」を取り出した。


「ふむ。布の妖怪か。斬るより『洗う』方が効果的かもしれんな。はぁッ!!」


ヴァレリアが、風の魔法で一反木綿の退路を絶つ。


「ブモォォッ!(大人しく洗濯されろォッ!)」


ゴズが、太い腕で一反木綿の端と端をガシッと掴み、ピンと張った。


『な、何をする気だ貴様らァァッ!? 離せ! 妖怪の尊厳が……ッ!』

「【聖なる洗浄ホーリー・ウォッシュ】!!」


ヒナタが、洗濯桶にたっぷりの水(水魔法)と洗剤を張り、一反木綿を容赦なく突っ込んだ。


ゴシゴシゴシゴシッ!! バシャァァァンッ!!


『ギャァァァァァッ!!? 目が、目がァァッ!! 洗剤が目に染みるゥゥゥッ!!』


一反木綿が、洗濯板の上で激しく擦られながら絶叫する。


「ほら、暴れない! 繊維の奥まで染み込んだ『妖怪の邪気(ただの皮脂汚れ)』が落ちないでしょ! ここは酵素の力で徹底的に分解します!」

『俺の邪気が皮脂汚れ!? やめろォッ! 俺の何百年もの歴史(汚れ)が、フローラルな香りの泡に溶けていくゥゥッ!!』

「仕上げは『高濃度漂白ブリーチ』と、『柔軟剤(ダウニー風)』です!」

「ブモォッ!(しっかりすすいでやるぜ!)」

『アァァァァッ……! 俺の……俺の恐ろしい妖怪としてのアイデンティティが……真っ白に……フワフワにされていくゥゥゥ……』


数分間の激しい「お洗濯バトル」の末。


ゴズの怪力による「手回し脱水」を終えた一反木綿は、ヒナタの風魔法によって上空の風に晒され、あっという間に乾き上がった。


そこにあったのは、薄汚れた不気味な妖怪ではない。

「純白に輝き、極上の手触りとフローラルな香りを放つ、最高級シルクのような美しい布」であった。


「はい、アイロンがけも完了です! ピシッとシワが伸びて気持ちいいですね!」


ヒナタは、ホカホカの一反木綿を綺麗に折りたたみながら、満足げに頷いた。


『……あぁ……』


一反木綿(純白)は、ヒナタの手の中でうっとりとした声を漏らした。


『な、なんだこの、空を飛ぶのが羽のように軽い感覚は……。ダニもホコリも無い、完璧な通気性……。フローラルな香りが、俺の荒んだ心を優しく包み込んでくれる……』


一反木綿は、もはや人間の首を絞める気など完全に失い、自らヒナタの首元にシュルル……と巻きついた。


それは決して攻撃ではなく、ヒナタを冷たい上空の風から守るための「極上のふかふかマフラー」としての働きだった。


「うん! あったかい! 良いマフラーになりましたね!」


ヒナタがニコニコと笑う。


「……ゆ、勇者殿。妖怪が……一反木綿が、ただの『良い匂いのする防寒具』に……」


セバスチャンは、完全に毒気を抜かれた妖怪マフラーを見て、へたり込んだ。



【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、両手で顔を覆っていた。


『空の刺客が……「洗剤」と「洗濯板」で浄化された……』

『顔に巻きつく恐怖が……「肌荒れの原因(不衛生)」という理由で論破された……』

『挙句の果てに、勇者のマフラーになってやがる……!!』


ドラマスは、もはや自分の創ったファンタジー世界が、ヒナタの「圧倒的・家事スキル」の前に手も足も出ないことを悟り、静かに「お洗濯の基礎知識」という本を読み始めるのだった。

(第65話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ