■第65話:妖怪・一反木綿が襲来! ……えっ、戦闘じゃなくて「お洗濯」ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「よし! 今度こそ、今度こそ本当に王都へ向かっているぞ!!」
神ドラマスは、モニターの前で神の杖を握りしめ、感涙に咽び泣いていた。
画面の中では、巣をピカピカに掃除されてどこか誇らしげなロック鳥が、夕暮れの空を猛スピードで飛んでいる。
「だが、妖怪どももただ待っているわけではない! 王都から放たれた空の刺客……『一反木綿』が接近している!」
ドラマスは、画面の端から迫る白い布の妖怪を指差した。
「一反木綿は、空を飛び、獲物の首や顔に巻きついて窒息させる恐ろしい妖怪! 空中戦なら、剣や魔法も簡単には当たらん! さあヒナタよ、この妖怪の恐怖の前に、勇者としての真の力を見せるがいい!!」
【場所:上空・ロック鳥の背中の上】
「いやぁ、巣が綺麗になってロック鳥さんも嬉しそうですね!」
ヒナタは、風に吹かれながらニコニコと笑っていた。
「左様ですな! この調子なら、完全に日が落ちる前に王都へ……むっ!?」
セバスチャンが、空の彼方からヒラヒラと飛んでくる「白い物体」に気づき、杖を構えた。
『ヒィーッヒッヒッヒ! 人間の勇者とやら、お前たちの命、この一反木綿がいただきに参ったぞぉ!』
それは、長さ約一反(約10メートル)の、薄汚れた白い布の妖怪だった。
布の先端に不気味な二つの目が浮かび上がり、ヒナタたちに向かってユラユラと威嚇している。
「で、出たァァッ! 王都を襲っているという異形の化け物(妖怪)です!!」
セバスチャンが悲鳴を上げる。
「気を付けてください! あの布に巻きつかれたら、呼吸を止められてしまいますぞ!」
『いかにも! 俺様の恐ろしい布地で、貴様らの顔面をぐるぐる巻きにして窒息させてやるわぁっ! さあ、覚悟……』
一反木綿が、ヒナタの顔面めがけて飛びかかろうとした、その瞬間。
「……ちょっと待って!!」
ヒナタの、地を這うような低い声が響き渡った。
『ヒェッ?』
一反木綿は、思わず空中でピタリと止まった。
ヒナタは、一反木綿を頭から尻尾(?)の先まで、まるで汚物を見るような目でジッと睨みつけた。
「……あなた。自分が今、どれだけ『不衛生』か分かってる?」
『……はい?』
「全体的に薄汚れて黄ばんでるし! 端っこはホツレてボロボロ! おまけに、近づいただけでカビとホコリの生乾き臭がするんだけど!?」
ヒナタは、腰に手を当てて一反木綿をビシッと指差した。
「そんな『何百年も洗ってないダニだらけの雑巾』みたいな体で、人の顔に巻きつこうなんて……非常識にも程があるでしょ!! 肌荒れしたらどうするの!!」
『ぞ、雑巾……ッ!? 俺様は恐怖の妖怪だぞ! 布に風呂(洗濯)なんか必要ねぇんだよ!!』
「問答無用! ヴァレリアさん、ゴズさん! あの不潔な布を捕まえて!!」
ヒナタは、四次元リュックから、特大の「洗濯桶」と「ギザギザの洗濯板」、そして「特製・酵素配合オーガニック洗剤」を取り出した。
「ふむ。布の妖怪か。斬るより『洗う』方が効果的かもしれんな。はぁッ!!」
ヴァレリアが、風の魔法で一反木綿の退路を絶つ。
「ブモォォッ!(大人しく洗濯されろォッ!)」
ゴズが、太い腕で一反木綿の端と端をガシッと掴み、ピンと張った。
『な、何をする気だ貴様らァァッ!? 離せ! 妖怪の尊厳が……ッ!』
「【聖なる洗浄】!!」
ヒナタが、洗濯桶にたっぷりの水(水魔法)と洗剤を張り、一反木綿を容赦なく突っ込んだ。
ゴシゴシゴシゴシッ!! バシャァァァンッ!!
『ギャァァァァァッ!!? 目が、目がァァッ!! 洗剤が目に染みるゥゥゥッ!!』
一反木綿が、洗濯板の上で激しく擦られながら絶叫する。
「ほら、暴れない! 繊維の奥まで染み込んだ『妖怪の邪気(ただの皮脂汚れ)』が落ちないでしょ! ここは酵素の力で徹底的に分解します!」
『俺の邪気が皮脂汚れ!? やめろォッ! 俺の何百年もの歴史(汚れ)が、フローラルな香りの泡に溶けていくゥゥッ!!』
「仕上げは『高濃度漂白』と、『柔軟剤(ダウニー風)』です!」
「ブモォッ!(しっかりすすいでやるぜ!)」
『アァァァァッ……! 俺の……俺の恐ろしい妖怪としてのアイデンティティが……真っ白に……フワフワにされていくゥゥゥ……』
数分間の激しい「お洗濯バトル」の末。
ゴズの怪力による「手回し脱水」を終えた一反木綿は、ヒナタの風魔法によって上空の風に晒され、あっという間に乾き上がった。
そこにあったのは、薄汚れた不気味な妖怪ではない。
「純白に輝き、極上の手触りとフローラルな香りを放つ、最高級シルクのような美しい布」であった。
「はい、アイロンがけも完了です! ピシッとシワが伸びて気持ちいいですね!」
ヒナタは、ホカホカの一反木綿を綺麗に折りたたみながら、満足げに頷いた。
『……あぁ……』
一反木綿(純白)は、ヒナタの手の中でうっとりとした声を漏らした。
『な、なんだこの、空を飛ぶのが羽のように軽い感覚は……。ダニもホコリも無い、完璧な通気性……。フローラルな香りが、俺の荒んだ心を優しく包み込んでくれる……』
一反木綿は、もはや人間の首を絞める気など完全に失い、自らヒナタの首元にシュルル……と巻きついた。
それは決して攻撃ではなく、ヒナタを冷たい上空の風から守るための「極上のふかふかマフラー」としての働きだった。
「うん! あったかい! 良いマフラーになりましたね!」
ヒナタがニコニコと笑う。
「……ゆ、勇者殿。妖怪が……一反木綿が、ただの『良い匂いのする防寒具』に……」
セバスチャンは、完全に毒気を抜かれた妖怪を見て、へたり込んだ。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、両手で顔を覆っていた。
『空の刺客が……「洗剤」と「洗濯板」で浄化された……』
『顔に巻きつく恐怖が……「肌荒れの原因(不衛生)」という理由で論破された……』
『挙句の果てに、勇者のマフラーになってやがる……!!』
ドラマスは、もはや自分の創ったファンタジー世界が、ヒナタの「圧倒的・家事スキル」の前に手も足も出ないことを悟り、静かに「お洗濯の基礎知識」という本を読み始めるのだった。
(第65話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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