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■第63話:妖怪退治はまた明日! ……えっ、今日は「焼き芋パーティ」の約束があるんですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……夜が、明けた」


神ドラマスは、充血した目元に濃いクマを作りながら、モニターを見つめていた。


前日の異常気象による「味噌の過発酵の危機」は、勇者一行と魔王軍の総力を挙げた冷却作業により、なんとか適正温度(25度)を保ったまま乗り切ったのだ。


「味噌は無事だ! そして気温も平年並みに戻った! 完璧だ!」


ドラマスは、よろけながらも立ち上がり、神の杖を握り直した。


「王都では、妖怪どもが二度目の百鬼夜行に向けて森で瘴気を練っている! だが、今日こそ……! 今日こそヒナタはロック鳥に乗り、光の剣を抜いて王都へ凱旋するはずだ!!」


ドラマスの悲痛な祈りが、天界に響き渡る。


【場所:魔王城・中庭】

「ふぅーっ! 皆さん、昨日は本当にお疲れ様でした! おかげで、最高の『魔界味噌』が仕上がりそうです!」


ヒナタは、完璧に温度管理された味噌樽を撫でながら、満足げに汗を拭った。


『うむ。あの異常気象には肝を冷やしたが、我らのチームワークの勝利だな』


魔王も、エプロン姿のまま深く頷く。


「さ、さあ勇者殿!!」


そこへ、荷物をパンパンに詰め込んだリュックを背負ったセバスチャンが、血走った目で飛び出してきた。


「味噌の危機は去りました! ロック鳥の手配も完了しております! 一刻も早く、妖怪どもに蹂躙されている王都へ……!!」


セバスチャンが悲鳴のような声を上げた、その時だった。


「にーちゃーん!!」


魔王城の正門から、タタタタッ!と元気な足音が響いてきた。


以前、ヒナタと花壇で泥んこ遊びをした角の生えた男の子や、近所の魔族の子供たちが、両手にカゴを抱えて駆け込んで来たのだ。


「おはよう、にーちゃん! 魔王様もおはようございます!」

「あ! みんな、おはよう!」


男の子は、ヒナタを見上げて目をキラキラと輝かせた。


「今日、約束の『焼き芋パーティ』だよね!!」

「お家から、バターとお塩、持ってきたよ!」


その言葉に。

セバスチャンの手から、王都への地図がヒラヒラと滑り落ちた。


「……あ」


ヒナタは、ポンッと手を叩いた。


「そうだった!! みんなで落ち葉を集めて、魔王さんの畑で採れたサツマイモで焼き芋パーティをする約束だったね!」

「や、焼き……芋……?」


セバスチャンが、ピクピクと頬を引きつらせる。


「はい! 先週収穫した『魔界シルクスイート』、泥を落として冷暗所でしっかり寝かせておいたから、デンプンが糖に変わって、今が一番甘くて美味しい頃合いなんですよ!」


ヒナタは、嬉々として物置から大量のサツマイモが入った麻袋を引っ張り出してきた。


『おおっ! さすが勇者よ、サツマイモの「追熟ついじゅく」の原理まで熟知しているとは!』


魔王が、目を輝かせてサツマイモを手に取る。


『うむ。今年の芋は水はけの良い斜面で育てたからな。蜜の入り具合も期待できよう』

「ちょ……ちょっと待ってください!!」


セバスチャンが、涙と鼻水を撒き散らしながらヒナタの足元にすがりついた。


「よ、妖怪です! 王都の空が紫色の雲で覆われているんですよ!? なぜ、国が滅びるかもしれないこの瞬間に『焼き芋』なんですかァァァッ!!」

「セバスチャンさん、落ち着いてください」


ヒナタは、子供たちの頭を撫でながら、至極真面目な顔で諭した。


「国の一大事なのはわかります。でも、『子供との約束』を破るような大人が、どうやって世界を救えるんですか?」

「……えっ」


セバスチャンは絶句した。


言っていることは無茶苦茶なのだが、「子供との約束を守る」という圧倒的な光の正論(?)の前に、反論の言葉が出てこない。


「ブモォッ!(その通りだ! 俺は火起こしの準備をするぜ!)」


ゴズが、薪と落ち葉を山積みにし始める。


「ふむ。焼き芋には良質な落ち葉のベッドが必要だ。近所の森まで行って枯れ葉を集めてこよう」


ヴァレリアが、大剣をホウキ代わりに担いで走り出す。


『俺は、焼き上がった芋と一緒に飲む「特製・魔界牛乳」を温めておこう』


吸血鬼のヴラドまでが、すっかり健康的なおやつタイムの準備に取り掛かっている。


「ほら、セバスチャンさんも泣いてないで! お芋を濡れた新聞紙とアルミホイルで包むのを手伝ってください! 遠赤外線でじっくり焼くのがコツですから!」

「……わ、私は……私は王国の宰相なのに……なぜ魔王城で芋をアルミホイルで……うぅっ……」


セバスチャンは、完全に心が折れた(しかし手先は器用に動く)状態で、子供たちと一緒にサツマイモを包み始めた。


かくして。

妖怪の百鬼夜行が迫る王都を完全に放置したまま、魔王城の中庭では、甘く香ばしい蜜の香りが漂う「最高にピースフルな焼き芋パーティ」が幕を開けたのである。



【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、神の杖を床に置き、そっとモニターに布をかけた。


『妖怪の百鬼夜行が……「焼き芋パーティ」の前に敗れ去った……』

『「子供との約束を破って世界を救えるか」……?』

『もう……勇者の放つ「生活の正論」に、ファンタジーの危機感が勝てる気がしない……』


ドラマスは、深く、深くため息をつき、引き出しから「干し芋(天界産)」を取り出して、虚ろな目でかじり始めるのだった。

(第63話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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