■第6話:街が見えた! ……あ、あそこに「幻のトカゲ」が!
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【場所:王都~港町への街道】
「さあ皆さん! 今日こそは港町『ポルト』に着きますよ!」
王国の宰相セバスチャンが、先頭で声を張り上げる。
彼は、王命を遂行するため、そのまま勇者一行の「引率係」として同行することになってしまったのだ。
(この私が、こんな保育園の先生のような真似を……)
セバスチャンは涙を呑み、ダラダラと歩く後ろのメンバーを振り返った。
「ふあぁ……。歩くの久しぶりだなぁ」
騎士団長ヴァレリアが、あくびをしながら剣を杖代わりにして歩いている。
「エイル、魔法で浮遊移動とかできないのか?」
「無理ですよ。……昨日、ヒナタ殿の畑の収穫を手伝って魔力切れですから」
かつての「最強」の面影はどこへやら。
完全に身体がなまっていた。
そして、勇者ヒナタはというと。
「あ、ストップです!」
ヒナタが突然立ち止まる。
「な、なんですか勇者殿! またですか!?」
セバスチャンが悲鳴を上げる。出発してから1時間で5回目のストップだ。
「見てください。道端に『四つ葉のクローバー』がありました」
ヒナタが嬉しそうに小さな草を掲げる。
「これを見つけると幸せになれるんですよ~。みんなの分も探しましょう!」
「探しません! 先を急ぐのです!」
「でも、ヴァレリアさんの分も見つけないと、ヴァレリアさんが幸せになれませんよ?」
「む……。それは困るな。探すか」
「団長!? 何を言ってるんですか!」
結局、クローバー探しで30分ロスした。
【場所:街道の休憩ポイント(街まであと3キロ)】
その後も、
「あ、面白い形の雲!」と言ってはスケッチ休憩。
「あ、いい香りの木の実!」と言っては採取休憩。
「牛さん(ゴズ)が疲れてるみたい!」と言ってはマッサージ休憩。
わずか数キロの道のりを進むのに、半日を費やしていた。
『…………』
天界の神ドラマスは、無言でモニターを見つめていた。
怒鳴る気力も失せ、今は虚無の目で「牛のマッサージシーン」を眺めている。
『(早く……早く着いてくれ……。もうボス戦とか期待しないから、せめて「街に入る」というフラグだけでも立ててくれ……)』
そして、夕暮れ時。
ついに、丘の向こうに「港町ポルト」の街並みが見えてきた。
海に面した美しい白亜の街だ。
「おお! 見えましたぞ!」
セバスチャンが歓喜の声を上げる。
「やっと……やっと着いた! これで陛下に報告ができる!」
ヴァレリアもエイルも、さすがに少しホッとした顔をしている。
「ふぅ、ようやくベッドで寝られるか」
「宿に着いたら、まず泥を落としたいですね」
ゴールは目の前。
あとは坂道を下るだけだ。
しかし。
ヒナタだけは、街ではなく「逆方向の森」を凝視していた。
「……ん?」
「どうしました勇者殿? さあ、行きますよ」
セバスチャンが促すが、ヒナタは動かない。
「シーッ。静かに」
ヒナタが口に指を当てる。
「あそこの切り株の上……見てください」
全員が視線を向ける。
そこには、虹色に輝く鱗を持ち、尻尾が二股に分かれた、手のひらサイズのトカゲがいた。
「あれは……まさか!」
エイルが眼鏡を光らせる。
「絶滅したと言われる幻獣『ニジイロトカゲ』!? 生きていたのか!」
「えっ、レアなんですか?」
ヒナタの目が、今日一番の輝きを見せた。
「はい! 学術的価値は計り知れません! 一目見るだけで奇跡と言われる……ああっ!?」
エイルが叫ぶのと同時に、トカゲがピュッと森の奥へ逃げ出した。
その瞬間。
ヒナタの足が、神速の速さで動いた。
「待ってぇぇぇぇッ!!」
「え?」
ヒナタはリュックを放り出し、街とは「真逆の方向(森の奥)」へと猛ダッシュした。
「逃さないで! 仲良くなりたい! 写真撮らせてぇぇぇッ!」
「ちょ、勇者殿!?」
セバスチャンが手を伸ばすが、ヒナタは驚異的な(興味関心がある時だけの)身体能力で、藪の中へ消えていく。
「お、おい! 待てヒナタ!」
ヴァレリアが慌てて追いかける。
「森の奥は危険だ! 護衛が必要だぞ!」
「待ってください! そのトカゲの生態サンプルは私が!」
エイルも目の色を変えて走り出す。
「ブモォォォ!(俺様も行くぜ!)」
ゴズも続く。
残されたのは、呆然と立ち尽くすセバスチャンだけ。
目の前には、夕日に輝く港町。
背後からは、遠ざかっていく勇者たちの声。
「あっちだ! 木の上に登ったぞ!」
「わぁ、綺麗! 捕まえないで、驚かさないで~!」
「待てー!」
『ああああああああああああああああッ!!!!』
天界から、神の魂の絶叫が響き渡った。
『目の前だぞ!? ゴールは目の前だったんだぞ!?』
『なんで……なんでそこで「Uターン」するんだァァァァッ!!』
セバスチャンは、がっくりと膝をついた。
「……陛下。申し訳ございません」
「勇者一行は……『レアなトカゲを追って、未知の樹海へ突入』しました……」
こうして、勇者一行の現在地は、
「次の街の手前」
から
「迷いの森の奥深く(圏外)」
へと更新された。
港町への到着予定日は、未定となった。
(第6話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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