■第5話:カスタマーサポート(地球)の対応が塩すぎる件
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【場所:次元の狭間・神界通信室】
『おい!! 地球の管理者!! 出ろ!!』
激動神ドラマスは、次元を超えたホットラインに向かって怒号を飛ばしていた。
モニターには「接続中」の文字。
『あんたの世界の人間だろ! 不良品だぞ! クーリングオフさせろ!』
数回のコールの後、ダルそうな声と共に通信が繋がった。
『あー、はいはい。地球神ですけどー。……うわ、ドラマス君か。声デカいよ君』
モニターに映ったのは、ポテチを食べながらソファでくつろぐ地球の神様だった。
背景には、ヒナタたちが楽しそうにBBQをしている映像が流れている。
『見ているんだろう!? この惨状を!』
ドラマスが食い気味に叫ぶ。
『貴様が送ってきた勇者「ヒナタ」だ! 召喚して一ヶ月半、まだ王都の隣の丘で畑を耕しているぞ!』
『しかも、私の送った騎士も魔導師も、あろうことか魔族までもが、奴に餌付けされて骨抜きにされた! どう落とし前をつけてくれるんだ!』
地球神は、指についたポテチの粉を舐めながら答えた。
『えー? でも、君の世界「平和」になったじゃん』
『は?』
『見てごらんよ。最強の騎士と魔族が、仲良く肩を組んで「マイムマイム」を踊っている姿を。……これぞ真の平和だろ?』
『魔王討伐なんて野蛮なことしなくても、ヒナタ君が世界中を「ピクニック会場」に変えれば解決じゃない?』
『ふざけるなァァァッ!!』
ドラマスが机を叩く。
『私の世界は「剣と魔法とロマン」のファンタジーなんだよ! 「ほのぼの牧場ライフ」じゃないんだよ! ジャンル違いも甚だしいわ!』
『うーん、そう言われてもなぁ』
地球神はあくびをした。
『一度送った魂は返品不可って規約だし。それに、ヒナタ君を選んだのは君の「召喚陣」だろ?』
『「波乱万丈な人材」を求めてガチャを回したら、「規格外(SSR)」が出ちゃった。……自業自得だねぇ』
『ぐぬぬ……! ならば、奴の「性格設定」を書き換えろ! もっと好戦的に……』
『無理無理。個人の人格権の侵害になるから』
地球神はバッサリと断った。
『というわけで、こっちは忙しいから(映画見たいから)。あとはそっちで「演出」頑張ってね、敏腕ディレクターさん?』
プツン。
通信が切れた。
『あ、あいつぅぅぅぅ……ッ!!』
ドラマスはギリギリと歯ぎしりをした。
誰も助けてくれない。この「放送事故」を立て直せるのは、自分しかいないのだ。
『いいだろう……。ならば、権力を使うまでだ!』
ドラマスは、下界の王城に向かって、最大級の「神託」を降ろした。
【場所:王城「グランベル」・玉座の間】
バリバリバリバリッ!!
凄まじい雷鳴と共に、玉座の間に神の怒声が響き渡った。
『国王よ!! 何をしている!!』
『勇者一行が、いつまでも王都の軒先で遊んでいるぞ! これは王家の恥だと思わんのか!!』
国王は玉座から転げ落ちんばかりに驚き、平伏した。
「か、神様!? も、申し訳ございません! 宰相を送ったのですが、彼も帰ってこなくて……」
『ええい、言い訳無用!』
『今すぐ「王命」を出せ! 「次の街へ進まねば、王宮からの仕送り(資金援助)を打ち切る」と脅せ!』
『強制的に馬車に乗せろ! 縛り上げてでも次のエリアへ運ぶのだ!!』
「は、ははーーっ!! 直ちに!!」
神のブチ切れ案件により、王城は大パニックになった。
「総員出撃! 何が何でも勇者様を『次の街』へ移動させろぉぉぉッ!!」
【場所:せせらぎの川辺】
その日、ヒナタたちのキャンプ地に、王宮の兵士たちが雪崩れ込んできた。
「勇者ヒナタ様! 並びにヴァレリア団長! エイル殿! 宰相閣下!」
隊長が必死の形相で叫ぶ。
「こ、国王陛下より厳命です! 『直ちに旅立て』と!」
「もし今日中に出発しなければ……勇者への支援金をストップし、この丘を『王家直轄のゴミ処理場』にすると仰せです!!」
「ええっ!?」
ヒナタが驚いて、じょうろを落とした。
「ゴミ処理場になっちゃうんですか? せっかくお花が咲いたのに……」
「むぅ……。陛下も強引だな」
ヴァレリアが焼き鳥を食べる手を止める。
「しかし、王命とあっては逆らえん。……ここでの暮らしも、潮時か」
「残念ですねぇ。この川の主を釣るまではいたかったのですが」
エイルも名残惜しそうに釣竿を畳む。
宰相セバスチャンに至っては、「まだ帰りたくない……」と小声で呟いていた。
ヒナタは、愛着のあるログハウスと畑を見渡し、少し寂しそうに微笑んだ。
「仕方ありませんね。神様も『進め』って言ってたみたいですし」
「わかりました。行きましょう、次の場所へ」
兵士たちは安堵で泣き崩れた。
「あ、ありがとうございますぅぅぅ! これで俺たちの首が繋がるぅぅぅ!」
こうして、ついに勇者ヒナタは重い腰を上げた。
王命という名の強制力によって、一行は住み慣れた(一ヶ月半もいた)「最初の丘」を後にすることになったのだ。
『やった……! やっとだ……!』
天界でドラマスがガッツポーズをする。
『これで物語が動く! 次は港町だ! 海の魔物との激闘が待っているぞ!』
しかし、神様は忘れていた。
ヒナタが「馬車」ではなく、「徒歩」を選んだことを。
そして、道中のあらゆるものが、ヒナタの興味を引いてしまうことを。
「あ、見てくださいヴァレリアさん。珍しいキノコが生えてますよ!」
「ほう、これは美味そうだな」
「お茶に合うかもしれません。……ちょっと休憩して、味見してみましょうか」
出発から10分後。
一行は、丘のふもと(わずか500メートル先)で、再びポットのお湯を沸かし始めていた。
『進めよォォォォッ!! ゴミ処理場にするぞォォォッ!!』
神様の胃痛が治る日は、まだ当分来そうになかった。
(第5話・完)
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【重要なお知らせ(更新時間のお引っ越し)】
明日(23日・月曜)より、本作の定時更新時間を現在の「21:10」から、【20:10】へ変更(前倒し)させていただきます!
(※別連載が完結するため、そちらの枠を引き継ぐ形になります)
明日からは1時間早く、20:10にヒナタの異世界蹂躙をお届けしますので、引き続きよろしくお願いいたします!
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