表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
59/105

■第59話:吸血鬼の忠告! ……えっ、人間の血より「特製レバニラ」ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

本編をお楽しみください



【場所:天界・管理室】

「……おおっ! おおぉぉっ!!」


神ドラマスは、モニターの前で身を乗り出し、枯れ果てていた目に希望の光を宿した。


画面の中では、魔王城の地下牢(高級サロン)で、魔王がヒナタから「おでんの出汁の取り方」を真剣にメモしているという、ファンタジーの終焉のような光景が広がっている。


しかし、その地下牢に向かって、城の廊下を猛スピードで飛翔していく「一匹のコウモリ」の姿があった。


「魔王軍四天王の一人、吸血鬼ヴァンパイアの公爵・ヴラド! 彼は人間の生き血を啜る真の魔族!」


ドラマスは、神の杖を握りしめた。


「そうだ! 彼は人間を『ペット(携帯食料)』として飼い慣らすために、魔王に人間界への侵攻を唆していた黒幕! 種族の融和など、彼が絶対に許すはずがない!」


ドラマスは、祈るように叫んだ。


「頼むぞヴラド! 狂ったこの世界の空気を、お前のその邪悪な牙でシリアスに引き戻してくれ!!」



【場所:魔王城・地下牢(高級サロン)】

「なるほど。大根は面取りをして、隠し包丁を入れることで、味が染み込みやすくなるのだな」


魔王は、ヒナタから渡されたエプロンを身につけ、真剣な顔でメモを取っていた。


「はい! あと、魔王さんが育てたこのトマト、おでんに入れても酸味がアクセントになって絶対美味しいですよ!」

「ブモォッ!(俺、牛すじ串が食べたいぜ!)」


一行が完全に「今夜の献立」で盛り上がっていた、その時。


バサバサバサッ!! ボンッ!!

鉄格子の隙間から一匹のコウモリが飛び込み、黒い煙と共に、青白い肌をした妖艶な貴族の姿へと変わった。

吸血鬼の公爵、ヴラドである。


『魔王様!! 一体何をされておられるのですか!!』


ヴラドは、エプロン姿の魔王と、くつろぐ勇者一行を見て、怒りに肩を震わせた。


『人間の勇者と茶をしばくなど、言語道断! 我ら魔族の誇りを忘れたのですか!』


ヴラドの赤い瞳が、ギラリと邪悪な光を放つ。


『人間など、我らの偉大なる魔力の前ではただの家畜! 徹底的に痛めつけ、恐怖で支配し、永遠に新鮮な血を搾り取る「ペット」として飼い殺すのが我らの悲願……!』


ヴラドが、鋭い牙を剥き出しにして、ヒナタにマントを翻して見せた。


神ドラマスが「よし! いいぞヴラド!」とガッツポーズをする。


しかし。

ヒナタは、ヴラドの恐ろしい宣言を聞いて、スッと表情を険しくした。


「……あなた」

『ふん。ようやく恐怖を思い出したか、小僧。さあ、その首筋を……』

「血しか飲んでないなんて、ものすごい『栄養失調(偏食)』ですよ!!」


ヒナタは、ズバッとヴラドを指差した。


『……は?』

「見てください、その真っ青な顔色! 目の下にもクマができてるし! 完全な『鉄分不足(貧血)』です!!」


ヒナタは、オカンのような猛烈な勢いでヴラドに詰め寄った。


「液体の食事ばっかりじゃ、胃腸も弱っちゃいますよ! だからそんな、人間をペットにしたいなんていう『ひねくれた考え』になっちゃうんです!」

『ひ、ひねくれた……!? 違う、これは吸血鬼としての本能で……!』

「問答無用です! ヴァレリアさん、ゴズさん、彼をそこの椅子に座らせて!」

「承知した。ふむ、確かに不健康そうな顔をしているな」


ヴァレリアが、ヴラドの両腕を背後からガシッと押さえ込む。


「ブモォォッ!(ほら、大人しく座れ!)」


ゴズが、ヴラドを無理やり椅子に座らせた。


『き、貴様ら! 離せ! 魔王様、コイツらを早く血祭りに……!』


魔王に助けを求めるヴラド。

しかし、魔王は腕を組み、深く頷いていた。


『……うむ。確かにヴラドよ、お前は最近、軍議の時も立ちくらみを起こしていたな。勇者の言う通り、偏食は良くないぞ』

『魔王様ァァァッ!? なぜそっち(健康志向)の味方をするのですか!?』


ヒナタは、すでに携帯用コンロに火をつけ、フライパンに油を引いていた。

そして、リュックから取り出したのは。


「こういう時は、ガツンと鉄分とスタミナを補給できる料理に限ります!」


ヒナタが取り出したのは、新鮮な「牛レバー」と、魔王の畑で採れた「魔界ニンニク(特大)」、そしてたっぷりのニラだった。


『ニ、ニ……ニンニクだとォォォッ!?』


ヴラドの顔が、さらに青ざめた(もはや白紙レベル)。

吸血鬼にとって、ニンニクは触れるだけでも大ダメージの「聖なる毒」である。


「はい! この魔界ニンニク、香りがすっごく良くて食欲をそそるんですよー!」


ジュワァァァァァッ!!

ヒナタが熱したフライパンにニンニクを投入した瞬間、暴力的なまでのガーリックの香りが地下牢に充満した。


『ギャァァァァッ!! 浄化されるゥゥゥッ!! 俺の邪悪な魂が、強烈な食欲の匂いで焼き尽くされるゥゥゥッ!!』


ヴラドは、椅子の上で身悶えしながら悲鳴を上げた。


『おい勇者、焦がさないように火加減に気をつけろよ。そのニンニクは、我が第2農園で手塩にかけて育てた最高級品だからな』


魔王が、フライパンを覗き込みながらアドバイスを送る。


『魔王様ァァッ! なぜ貴方まで料理番組のノリなんですかァァッ!!』


そして、あっという間に。

「魔界ニンニクたっぷりの、特製・スタミナ満点レバニラ炒め」が完成した。


「はい、お待たせしました! 貧血気味のヴラドさんにぴったりの一皿です! 熱いうちにどうぞ!」


ヒナタが、ヴラドの目の前に大盛りのレバニラをドンと置く。


『ふ、ふざけるな……! 我ら気高き夜の貴族が、こんな大衆食堂のメニューのような……しかもニンニクまみれの皿など……!』

「ブモォッ!(男なら四の五の言わずに食え!)」


ゴズが、レンゲに山盛りのレバニラをすくい、ヴラドの口に無理やり突っ込んだ。


『んぐぅッ!? ……あ、アァァッ、浄化……浄化され……』


ヴラドの口の中に、ニンニクのホーリーダメージ(物理)が広がる。

しかし、それと同時に。


(……な、なんだこの、レバーの臭みを完全に消し去る完璧な下処理は……!?)

(シャキシャキのニラと、我が魔王様が育てたニンニクのホクホク感……そしてこの、オイスターソースをベースにした濃厚な甘辛ダレが、白米を……白米を猛烈に欲求してくるゥゥッ!?)


『……っ!!』


ヴラドの瞳から、邪悪な光が消え去った。

代わりに宿ったのは、純粋な「食欲」だった。


『……こ、これ……ごライスの大盛り、あるか……?』

「はい! 炊きたて用意してますよ!」


ヴラドは、レンゲを受け取ると、大盛りの白米と一緒に、ニンニクまみれのレバニラを涙を流しながら無心で掻き込み始めた。


『美味い……美味いぞォォッ! 血液を直接飲むより、はるかに鉄分が体に吸収されていくのがわかる……!』

『今まで人間をペットにしようなどと、なんてコスパの悪い(狩りの手間がかかる)ことを考えていたんだ……! 食堂でレバニラ定食を頼めば、一発で解決するじゃないか……!』

「食後は、魔王さんのトマトで作った『特製・生搾りトマトジュース(無塩)』をどうぞ! 血みたいに赤いから、吸血鬼さんでもテンション上がりますよ!」

『ゴクゴクゴクッ……! ぷはぁっ! トマトの酸味が、脂っこい口の中をさっぱりと洗い流してくれる……! 魔王様、このトマト、最高です!』

『うむ。来年はもっと作付面積を増やすつもりだ』


こうして、魔王軍が誇る最も邪悪な吸血鬼は、ただの*「レバニラとトマトジュースを愛する、健康志向の常連客」へと転職を果たしたのだった。



【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、神の杖をへし折っていた。


『吸血鬼が……レバニラ定食で浄化された……』

『「血を吸う」という種族のアイデンティティすら、「鉄分補給(食事療法)」にすり替えられた……』

『もう、この世界に「悪」は存在しない……。あるのはただ、「美味しいご飯」と「健康的な生活」だけだ……』


ドラマスは、完全に白旗を上げ、モニターの前で静かに燃え尽きていくのだった。

(第59話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ