表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
56/100

■第56話:無抵抗で地下牢へ! ……えっ、この牢屋、予約制の高級サロンですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

本編をお楽しみください



【場所:魔王城・内部エントランス】

「いやぁ、お城の中も立派ですね! 天井が高い!」


ヒナタは、お上りさんのようにキョロキョロと城内を見回していた。


門前の「ご近所パワー」に気圧されて一時休戦した衛兵たちに案内され、一行は城の奥へと進んでいた。しかし、分厚い扉をいくつか抜け、完全に外部のオカンたちが届かない区画に入った途端。


ガチャンッ!!

背後の扉が施錠され、通路の暗がりから無数の衛兵たちが湧き出してきた。


『フハハハ! 罠とも知らずにノコノコと入ってきたな、愚かな勇者よ!』


先ほどの衛兵隊長が、今度は自信満々に槍を突きつけた。


『ここには近所のオバチャンはいない! 貴様らはここで捕らえ、魔王様の尋問を受けてもらう! 出会えーッ!』

「むっ! 卑劣な罠か!」


ヴァレリアが剣の柄に手をかけ、ゴズが鼻息を荒くする。


「やはり魔王軍! 勇者殿、ここは私が道を切り開きますぞ!」


セバスチャンも杖を構え、いよいよ魔王城での大立ち回りが始まる……!


「あ、皆さんストップです」


ヒナタが、両手を広げて仲間を制止した。


「せっかくお邪魔させてもらったんですから、城の中で暴れちゃダメですよ。泥んこ遊びの後でお風呂も入ってないし、ここは大人しく案内してもらいましょう」


ヒナタは、衛兵隊長に向かってニコッと笑い、両手首を揃えて差し出した。


「はい、捕まります。お部屋に案内してください!」

『……は?』


衛兵隊長は拍子抜けした。

抵抗されて激しい戦闘になる想定だったのに、勇者が「手錠プリーズ」の姿勢で待っている。


『お、おう……。よし、こいつらを地下の特級牢獄へブチ込め!』


こうして、勇者一行は一切の抵抗(とシリアスな戦闘)を放棄し、魔王城の最も深く暗い地下牢へと連行されていった。



【場所:魔王城・地下牢】

ガシャン!

重厚な鉄格子が閉められ、鍵がかけられた。

そこは、光も届かないジメジメとした石造りの地下牢。

床にはカビの生えた藁が敷かれ、壁には不気味な鎖がぶら下がっている。


「……終わりましたな」


セバスチャンは、カビ臭い藁の上に膝から崩れ落ちた。


「勇者が無抵抗で捕まるなど……。我々はここで、一生陽の光を見ることもなく、魔族の慰み者として……」

「わぁ! 結構広いですね!」


ヒナタの声が、地下牢に明るく響いた。


「でも、ちょっとホコリっぽくて空気が悪いです。皆さん、まずは『大掃除』から始めましょう!」

「……はい?」


ヒナタは、いつもの四次元リュックから、ほうき、ちりとり、モップ、そして特製の手作り洗剤を取り出した。


「ゴズさんはそこの鉄格子のサビ落としをお願いします! ヴァレリアさんは、天井のクモの巣取りを! ネムリネはその藁を全部外に捨ててきて!(※鉄格子の隙間からポイポイ捨てる)」

「ブモォッ!(任せろ! ピカピカにしてやる!)」

「ふむ。剣のリーチを活かせば天井にも届くな」

「……ん。この藁、チクチクして寝れない。捨てる」


ヒナタの号令のもと、勇者パーティー(捕虜)による、前代未聞の「地下牢クリーニング」が始まった。


【数時間後】

見張りを担当していた牢番の魔族ゴブリンは、退屈そうにあくびをしながら巡回に戻ってきた。


『どれどれ、人間の勇者ども、今頃は絶望して泣き喚いて……』


牢番が、特級牢獄の前に立った瞬間。

彼は自分の目を疑った。


『…………えっ?』


そこにあったのは、カビ臭い地下牢ではなかった。


床の石畳はチリ一つなく磨き上げられ、ピカピカに光を反射している。

鉄格子のサビは完全に落とされ、なぜかそこには可憐な「ドライフラワーのリース」が飾られていた。

壁の鎖は綺麗に束ねられて「オシャレな間接照明(ヒナタの魔道具)」のフック代わりに再利用されている。


そして、部屋の中央には。

どこから出したのか、ふかふかの絨毯の上に立派なアンティーク調のテーブルとソファが置かれ、「優雅なアフタヌーンティー」が開催されていた。


「あ、見張りの人! お疲れ様です!」


ヒナタが、ティーポットを片手に鉄格子越しに話しかけてきた。


「ちょうどスコーンが焼き上がったところなんです。クロテッドクリームと特製のイチゴジャムを添えて……あ、紅茶はダージリンでいいですか?」

『へ? あ、はい。お構いなく……』


牢番は、漂ってくる極上のバターの香りと紅茶の芳醇な匂いに抗えず、無意識に鉄格子越しにカップと皿を受け取ってしまった。


サクッ。


『……美味ぁぁぁぁいっ!! なんだこのサクサクしっとり感は!!』


牢番は、涙を流しながらスコーンを頬張った。


『俺、こんな美味い菓子、生まれて初めて食った……!』

「ふふっ、おかわりいっぱいありますからね!」

「……ん。ここのソファ、沈み込みが絶妙……最高……」


ネムリネは、ヒナタが持ち込んだ高級カウチソファでスヤスヤと眠っている。

セバスチャンだけが、ティーカップを震わせながら呟いていた。


「……これは、幻覚……? 地下牢のはずなのに、王都の高級サロンより居心地が良い……。私は、とうとう発狂してしまったのでしょうか……」



【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、もはやツッコミの言葉すら発さず、虚無の顔でモニターを見つめていた。


『「絶望の特級牢獄」が……「完全予約制の高級サロン」になった……』

『見張りのゴブリンが……鉄格子越しに「紅茶のおかわり」を要求してる……』

『もういい……。好きにしてくれ……。拷問器具をコート掛けにでもなんでもするがいいさ……』


ドラマスは、悟りを開いた僧侶のように、静かに目を閉じた。



【そして魔王の元へ】

『……おい、勇者たちは大人しくしているか?』


しばらくして、衛兵隊長が様子を見に地下へ降りてきた。


『はっ! 現在、勇者様たちは「二杯目のアールグレイ」を楽しんでおられます!』


牢番のゴブリンが、口の周りにジャムをつけながらビシッと敬礼した。


『アールグレイ……? 貴様、何を言っている……』


隊長が牢屋の中を覗き込み、そして、その光景(高級サロン)を見て石化した。


「あ、隊長さん! ご案内ですか? お茶会も終わったので、いつでも大丈夫ですよ!」


ヒナタは、パパッとティーセットを片付け、リュックを背負った。


「お部屋、綺麗に掃除しておいたので、次のお客さん(囚人)も快適に過ごせると思います!」

『…………』


衛兵隊長は、完全に戦意を喪失した顔で、牢屋の鍵を開けた。


『……もういい。魔王様が呼んでいる。ついてこい……』


こうして、歴史上最も「手厚く(自前で)もてなされた捕虜」であるヒナタ一行は、ついに魔王が待つ玉座の間へと案内されるのだった。

(第56話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ