■第49話:魔の岩峰で絶品バーベキュー! ……えっ、この氷竜さん、マシュマロの焼き加減にうるさいんですか?
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【場所:魔の岩峰・山頂の特設キャンプサイト】
「う~ん! 最高ですね!」
氷点下数千メートルの「死の山」の頂上。
そこに広がるのは、完全防寒の大型テント、煌々と燃えるバーベキューコンロ、そしてランタンの暖かな光だった。
「ゴズさん、そのお肉、もうひっくり返していいですよ!」
「ブモォッ!(任せろ! 特製タレを塗るぜ!)」
ジュワァァァァッ……!!
高級肉の脂が炭火に落ち、食欲を暴力的に刺激する煙が立ち昇る。
ヴァレリアは、ダッチオーブンで作った「岩山特製ポトフ」を器によそっていた。
「ふむ。標高が高いため沸点が下がるが、この密閉鍋なら問題ないな。完璧な火の通りだ」
「……ん。お肉、美味しい……(寝袋に包まりながら食べるネムリネ)」
一方、道中死にかけていた案内人のハンスと、宰相セバスチャンは。
「ハフッ、ハフッ……! な、なんだこの美味い肉は……!」
「冷え切った体に……熱いスープが染み渡ります……生きててよかった……」
二人は、ストーブでぬくぬくと温められたテントの中で、涙を流しながら肉を頬張っていた。
(もはや、ここは地獄の岩峰ではなく、天国のアウトドアリゾートだ……!)
しかし。
彼らが平和な晩餐を楽しんでいた、その時だった。
ズドドドドド……ッ!!
突然、山頂全体が激しく揺れ、猛烈な吹雪がテントを打ち付けた。
「な、なんだ!? 雪崩か!?」
ハンスがスープを零しそうになる。
『……グルルルルル……』
地鳴りのような低い唸り声。
吹雪の向こうから、巨大な影が姿を現した。
全身を鋭い氷の鱗で覆われ、青白い眼光を放つ伝説の魔獣――【古の氷竜】である。
『我が眠りを妨げ、神聖なる頂を汚す羽虫どもめ……!』
氷竜の咆哮が、空気を凍らせる。
『その罪、絶対零度の息吹をもって償うが……』
「ひぃぃぃぃッ!! 出たァァァッ!! 山の主だァァァッ!!」
ハンスとセバスチャンが抱き合って絶叫した。
「終わった! こんな山頂で逃げ場なんて……!」
しかし。
ヒナタは、氷竜を見上げてパッと顔を輝かせた。
「あ! ご近所さんですか!」
『……は?』
氷竜の動きが止まる。
「すいません、バーベキューの匂い、うるさかったですか? それともお腹空いてます?」
ヒナタは、串に刺さった特大のマンガ肉(ゴズ専用)を手に取り、氷竜の鼻先に突き出した。
「これ、よかったら一緒にどうですか? ちょうどいい感じのミディアムレアですよ!」
『き、貴様……我を愚弄する気か! 我は誇り高き氷の……』
「ブモォォォッ!(遠慮するな! 口を開けろ!)」
ゴズが、空気を読まずに氷竜の巨大な顎をガシッと掴み、特大の肉串を強引に突っ込んだ。
スポッ。
『むぐぅッ!?』
「あーっ! ゴズさん乱暴ですよ! でもまあ、冷めないうちにどうぞ!」
氷竜は、口の中に突っ込まれた肉を吐き出そうとした。
しかし。
ジュワァァァ……。
炭火の香ばしさ、濃厚な肉汁、そしてヒナタが調合した「特製ガーリック醤油ダレ」の旨味が、数百年「生の凍った魔物」しか食べてこなかった氷竜の味蕾を直撃した。
『…………!?』
氷竜の青白い目が、見開かれた。
(な、なんだこの複雑な味わいは……!? 氷のように冷たい我が体に、熱い肉汁が……火の魔法でもないのに、心が、心が温かくなる……!?)
氷竜は、ゴクリと肉を飲み込んだ。
「どうですか?」
ヒナタが首を傾げる。
『…………』
氷竜は、そっとコンロの前に座り込んだ。
そして、前足をちょこんと揃え、しっぽをパタパタと振りながら言った。
『……おかわり。タレ多めで頼む』
「はーい! 喜んで!」
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、もはやツッコミの言葉すら失っていた。
『氷竜……。絶対零度の化身……』
『誇り高きドラゴンが……「タレ多め」って注文してる……』
『私の設定した最強クラスのモンスターが……ただの「腹ペコの大型犬」になってるじゃないか……』
ドラマスの胃薬の消費量は、限界を突破していた。
【深夜のテント内】
数時間後。
吹雪の吹き荒れる外とは打って変わり、巨大テントの中は天国だった。
「リーチです!」
「ブモォ!(ドロー4だ!)」
「くっ……! ゴズ、貴様いつの間に手札を……!」
ヒナタ、ゴズ、ヴァレリアが、毛布にくるまりながら白熱の「ウノ」を繰り広げている。
そして、その横には。
『……おい小僧。この「マシュマロ」とやらは、まだ焼けないのか?』
氷竜が、テントのストーブの前に丸くなり、尻尾の先で器用にマシュマロを炙っていた。
(※大きすぎるため、テントに頭と首だけ突っ込んでいる)
「あー、氷竜さん、火に近づけすぎです! 焦げちゃいますよ!」
ヒナタが笑いながら注意する。
『むっ。我としたことが、火加減を誤るとは……。もう一度だ。今度はキツネ色に仕上げてみせる』
すっかりグランピングの魅力(とマシュマロの魔力)に取り憑かれた氷竜は、真剣な眼差しでストーブと睨み合っていた。
ハンスとセバスチャンは、テントの隅で完全に魂が抜けていた。
「……ハンス殿。山の主が……マシュマロを焼いています……」
「……はい。もう、私の知っている登山は、この世のどこにもありません……」
こうして、魔の岩峰の恐るべき夜は、極上のバーベキューとカードゲームの笑い声に包まれながら、平和(?)に更けていくのだった。
(第49話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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