■第50話:氷竜が離してくれない! ……えっ、山頂に「氷のテーマパーク」を作るんですか?
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
本編をお楽しみください
【場所:魔の岩峰・山頂キャンプサイト(翌朝)】
「ふわぁ~、よく寝ました!」
澄み切った青空と、眼下に広がる雲海。
ヒナタは、特注の極厚寝袋から這い出し、思い切り伸びをした。
標高数千メートルの「死の山」の朝だが、テントの中は魔力ストーブのおかげで春のようにポカポカだ。
「皆さん、朝ごはんの『厚切りベーコンのホットサンド』と『淹れたてコーヒー』ができましたよー!」
「ブモォォォッ!(最高だぜ!)」
「ふむ。山の朝のコーヒーは、五臓六腑に染み渡るな」
「……ん。ベーコン、カリカリ……」
勇者一行は、優雅なモーニングを堪能していた。
そして、その輪の中に、当然のように「巨大な青白い顔」が混ざっていた。
『……小僧。我の分の「ホットサンド」とやらには、チーズを増量してくれ』
氷竜である。
すっかりヒナタの餌付け(特製ダレ&マシュマロ)に屈した絶対零度の覇者は、尻尾をパタパタと振りながらおかわりの皿(岩石)を差し出していた。
「はいはい、チーズ増し増しですね! 氷竜さんはお口が大きいから、100個くらい焼きますね!」
宰相セバスチャンと案内人ハンスは、テントの隅でガタガタ震えながらコーヒーを啜っていた。
「……ハンス殿。ドラゴンが……チーズの増量を要求しています……」
「……はい。私の頭がおかしくなったのでなければ、あいつは今、尻尾を振っていました……」
朝食が終わり、セバスチャンが意を決して立ち上がった。
「さ、さあ勇者殿! 素晴らしいキャンプでしたが、そろそろ出発の時です!」
「この岩峰を下れば、いよいよ魔王の領土! 氷竜殿、長居をして申し訳ありませんでした、我々はこれにて……」
セバスチャンが荷物をまとめようとした、その瞬間。
ズスゥゥゥゥン……!!
氷竜が、下山ルートの入り口にその巨体を横たえ、完全に道を塞いだ。
「えっ?」
『……帰るのか?』
氷竜の青白い眼光が、セバスチャンを射抜く。
「ひっ!? い、いや、我々は世界を救う旅の途中でして……」
『……今日の昼飯は「特製ハンバーグ」だと聞いていたが』
「それは勇者殿が勝手に……!」
氷竜は、鼻から冷たい息をフシューッと吹き出し、あからさまに不機嫌な態度を取った。
『我が領地を荒らしておいて、挨拶もなしに去るとは無礼千万。……どうしても通るというなら、我を倒していくが良い』
ドォォォン!と、氷竜が戦闘態勢(寝そべったまま)に入る。
「な、なんて理不尽な……! 単に昼飯が食べたいだけじゃないですか!!」
セバスチャンが悲鳴を上げる。
「まあまあ、セバスチャンさん」
ヒナタが、ニコニコしながら氷竜の鼻先を撫でた。
「氷竜さん、寂しいんですね?」
『さ、寂しくなどないわ! 我はただ、貴様の作る「ハンバーグ」とやらが、統計学的に見てどの程度の味覚レベルか検証したいだけで……!』
(※すっかり現代の言葉に染まっている)
「じゃあ、仕方ないですね!」
ヒナタは、ポンと手を打った。
「もうしばらく、ここに滞在しましょう!」
「はああぁぁぁッ!?」
セバスチャンとハンスが同時に叫んだ。
「せっかく氷竜さんとお友達になれたんですから! それに、この山頂の環境、めちゃくちゃポテンシャル高いですよ!」
ヒナタは、リュックからスケッチブックを取り出した。
「氷竜さんの『絶対零度のブレス』があれば、溶けない氷が無限に作れますよね!」
「だったら、ここに『巨大なかまくら』とか、『氷の滑り台』とか作って、最高のウィンターリゾートを作りましょうよ!」
『おおっ! それは楽しそうだな! 我のブレスの真の使い道が、ようやく見つかったというわけか!』
氷竜が身を乗り出す。
「ちがァァァッ!! ドラゴンのブレスは破壊の象徴です!!」
セバスチャンが泣き叫ぶ。
「なぜ魔の岩峰に『氷のテーマパーク』を建設しようとしているのですか! 魔王城に行けと言っているでしょうが!!」
「ブモォォォッ!!(俺は雪だるまを作るぜ!)」
「ふむ。氷の彫刻か……剣の精密なコントロールの修行になるな」
「……ん。氷のベッド、ひんやりして気持ちいい……」
仲間たちは、とっくに「テーマパーク建設」のノリになっていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、モニターの前で突っ伏していた。
『「死の山」が……「雪まつり会場」になった……』
『エンシェント・フロストドラゴンが……喜んで「氷の滑り台」を作ってる……』
『魔王よ……もうお前の方から山頂まで迎えに行ってやってくれ……。こいつら、一生下山しない気だぞ……』
【数時間後】
山頂には、氷竜の精密なブレスコントロールによって、見事な「氷の城(かまくら特大サイズ)」と、絶叫「氷の滑り台」が完成しつつあった。
「ヒャッホーゥ!!」
ヒナタが、ソリに乗って滑り台を滑り降りていく。
『グルルルル! 我の作ったコースはどうだ!』
氷竜が誇らしげに胸を張る。
「最高です氷竜さん! あとでハンバーグ3個オマケします!」
ハンスとセバスチャンは、完成した「氷のベンチ」に座り、遠い目で空を見上げていた。
「……ハンス殿。私、もう魔王城に行くの、来年でもいいかなって思えてきました」
「……宰相様。私も、このままここでかき氷屋でも開こうかと……」
こうして、勇者一行は「氷竜の熱烈な引き留め」を理由(言い訳)に、魔の岩峰の頂上で「冬のバカンス」を大満喫することになった。
彼らがこの山を下りるのは、氷竜がハンバーグに飽きるか、あるいは魔王軍が業を煮やして「お迎え」にやって来る時だろう。
(第50話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
皆様からの応援が、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!




