表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/49

■第48話:魔の岩峰アタック開始! ……えっ、この絶壁、アスレチックコースじゃないんですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

本編をお楽しみください



【場所:魔の岩峰・中腹「死の急勾配」】

「ハァ……! ハァ……! み、皆さん……足元に気をつけて……!」


村で雇われたベテラン案内人のハンス(50代・人のいい山男)は、荒い息を吐きながら岩壁にピッケルを打ち込んでいた。


ここは傾斜70度を超える「死の急勾配」。一歩踏み外せば、千尋の谷底へ真っ逆さまである。


「ハンスさん、大丈夫ですか? お水飲みます?」

「ひっ!?」


ハンスが振り返ると、すぐ背後にヒナタがいた。

しかも、「命綱なし」で、普通に階段を登るような姿勢で岩肌に立っている。


「ゆ、勇者様……! なぜロープを付けていないんですか!? 滑落しますよ!」

「あ、これですか? この靴、裏がゴム製なので結構グリップが効くんですよ」


ヒナタは、村で買ったモコモコの防寒ブーツを指差して、ニコッと笑った。


「それに、このくらいの坂なら、アスレチックみたいで楽しいですね!」

「ア、アスレチック……」


ハンスは眩暈を覚えた。

その後ろからは、さらに信じられない光景が続いていた。


「ブモォ~♪(鼻歌)」


ゴズが、片手に「50キロのバーベキューコンロ」、もう片手に「特大テントの束」を担ぎながら、ひょいひょいと岩を飛び越えてくる。


「ふむ。空気が薄いが、心肺機能の鍛錬にはちょうどいいな」


ヴァレリアは、両手に「高級ダッチオーブン」と「食器セット」を持ち、涼しい顔で垂直の壁を駆け上がっている。


「……スヤァ……」


そしてネムリネは、ゴズが背負ったテントの束の上で、見事にバランスを取りながら熟睡していた。


「な、なんなんだあんた達は……!?」


ハンスは、自分の数十年の登山経験が根底から覆されるのを感じた。


「ここは魔の山だぞ……! 数百キロの荷物を持って、しかも笑いながら登れるような場所じゃ……!」

「ゼェ……ゼェ……ヒュー……」


その時、ハンスの耳に、唯一「正常な登山者」の呼吸音が聞こえてきた。


「おお! 宰相様! 大丈夫ですか!」


最後尾で、宰相セバスチャンが岩にしがみつき、白目を剥いていた。

彼は唯一、ハンスの言う通りにピッケルと命綱をフル装備し、顔を真っ青にして這い上がっていた。


「ゼェ……もう……ダメです……」


セバスチャンが掠れた声で呟く。


「足が……ガクガクして……。勇者殿……少し休憩を……」

「えー? セバスチャンさん、もうバテちゃったんですか?」


ヒナタが上から顔を覗き込む。


「まだ山頂まで半分もありますよ! ほら、景色見てください! 最高ですよ!」

「景色なんか見たら……失神します……!」

「セバスチャン、足腰が鈍っているぞ。私が引っ張り上げてやろう」


ヴァレリアが、空いた足(手は塞がっているため)でセバスチャンの襟首を引っ掛け、クレーンのように引き上げ始めた。


「ギャァァァッ! 首が締まるゥゥッ!」



【場所:難所「底なしのクレバス」】

さらに登ること数時間。


一行の前に、巨大な氷の裂け目――クレバスが立ち塞がった。

幅は10メートル以上。底は暗闇に包まれ、冷たい風が吹き上げている。


「ハァ……ハァ……ここは難所ですぞ……!」


案内人のハンスが、震える手でザイル(ロープ)を準備し始めた。


「あちら岸にフックを投げ、橋を架けるしか……」

「わあ! すごい谷間ですね!」


ヒナタがクレバスの縁から下を覗き込む。


「ヤッホー!!」

『ヤッホー……ヤッホー……(こだま)』

「楽しそうですね! じゃあ、向こう岸まで競争しましょう!」


ヒナタは、少し助走をつけると。


タァーンッ!!

重力を無視したような大ジャンプで、10メートルの裂け目を軽々と飛び越えてしまった。


「は?」


ハンスの口からロープが滑り落ちた。


「ブモッ!(とうっ!)」


ゴズも、数百キロの荷物を持ったまま、大岩のように跳躍して着地。

ズドォォン!という地響きと共に、氷の地面が少しヒビ割れた。


「ふむ。私ならあと5メートルはいけたな」


ヴァレリアも、優雅な弧を描いて飛び越える。


「……ん。めんどい」


ネムリネだけは、フワリと浮遊魔法で対岸へ移動した。

残されたのは、ハンスとセバスチャンだけである。


「…………」

「…………宰相様。私、山の案内人を引退しようかと思います」

「ハンス殿……。私も、宰相を辞めて田舎で畑を耕したいです……」


結局、二人はヴァレリアにロープで縛られ、荷物のように対岸へと引っ張り上げられた。



【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、モニターの前で冷えピタを額に貼っていた。


『「死の急勾配」が……ただの階段になった』

『「底なしのクレバス」が……幅跳びの砂場になった』

『雪崩……いや、雪崩を起こしても、あいつら「天然のかき氷だ!」とか言ってシロップかけて食いそうだな……』

『山の神よ……どうか彼らに、「大自然の恐怖」というものを教えてやってくれ……』



【そして山頂へ】

「さあ! もうすぐ山頂ですよ!」


ヒナタの元気な声が、凍てつく空気に響き渡る。

ハンスとセバスチャンは、完全にライフ(体力と精神力)がゼロになり、ゴズに両脇を抱えられて引きずられていた。


「いやぁ、ハンスさんの案内のおかげで、迷わず来れました! ありがとうございます!」


ヒナタが笑顔でお礼を言う。


「……いえ……。私は何も……ただ息をして……引きずられていただけです……」


ハンスの目には、虚無の涙が浮かんでいた。

彼は、「山を舐めるな」という信条を持っていたが、今日、山の方が彼らに舐められているのを悟ったのだ。


「着きましたーッ!!」


ついに、一行は魔の岩峰の頂上に到達した。

そこは、見渡す限りの雲海と、美しい星空が広がる絶景の平地だった。


「よーし! 皆さん、テントの設営開始です!」

「ゴズさんはコンロの火起こし! ヴァレリアさんはお肉のカットをお願いします!」

「最高のグランピングの始まりですよー!」

「ブモォォォッ!!(腹減った!)」


標高数千メートルの「死の山」の頂上で、場違いなバーベキューの準備が着々と進められていく。


しかし、このジュージューと焼ける高級肉の匂いが、山頂の雪の中で眠る「絶対的な捕食者」の鼻をヒクつかせることになろうとは、ヒナタはまだ知る由もなかった。

(第48話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ