■第43話:国王からの緊急指令! ……えっ、隣村で「魔王軍主催・大運動会」が開催中なんですか?
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【場所:ド・イナカ領・滞在3日目の朝】
「う~ん、おはようございます!」
ヒナタは、最高に目覚めが良かった。
枕元には昨日買った「木彫りの熊(特大)」が鎮座している。
「今日は陶芸教室ですね! 楽しみだなぁ!」
しかし。
リビング(宿の食堂)に入ると、空気が凍りついていた。
宰相セバスチャンが、青ざめた顔で一枚の羊皮紙を握りしめている。
その手は震えていた。
「……勇者殿」
「どうしました? 朝ご飯の漬物が売り切れですか?」
「違います!!」
セバスチャンが叫んだ。
「王都から……国王陛下直々の『緊急伝令』が届きました!」
「へえ、王様から? 元気にしてるかな?」
「悠長なことを言っている場合ではありません!」
セバスチャンは羊皮紙を広げた。
【緊急指令:魔王軍の別動隊が、隣の「アル・サト村」を襲撃中! 至急救援に向かわれたし!】
「……隣村?」
ヒナタが首を傾げる。
「はい! ここから馬車で半日の距離です!」
「魔物たちが村を占拠し、食料を奪い、村人を苦しめているそうです!」
「今すぐ観光を中止し、討伐に向かわねばなりません!」
セバスチャンは必死だった。
(頼む……! 今度こそ真面目に聞いてくれ……!)
しかし、ヒナタは腕組みをして考え込んだ。
「うーん……。でも、今日の陶芸教室、予約しちゃったしなぁ……」
「それに、魔物退治って、なんか殺伐としてて……」
(ダメだ! このままでは動かない!)
セバスチャンの脳内で、緊急会議が開かれた。
ヒナタを動かすには、「正義感」だけでは足りない。
必要なのは……「ワクワク感」だ。
セバスチャンは、震える声で「超解釈(嘘)」を付け加えた。
「……勇者殿。実は、報告には続きがあります」
「魔物たちは、ただ暴れているわけではないのです」
「……?」
「奴らは……村の広場を占拠し、『力比べ大会』を開催しているとのこと!」
「村人たちを強制参加させ、『綱引き』や『玉入れ』で競わせているらしいのです!」
「!!」
ヒナタがガタッと椅子を立ち上がった。
「つ、綱引き……!? 玉入れ……!?」
「はい! しかも優勝賞品は、村の特産品『幻の蜂蜜』だとか!」
「村人たちは、負けたら蜂蜜を奪われる……そんな理不尽なゲームを強いられているのです!」
ヒナタの目に、怒りの炎が宿った。
「許せない……!」
ヒナタが拳を握りしめる。
「神聖な『運動会』を、略奪の道具にするなんて……!」
「スポーツマンシップへの冒涜です!!」
「そ、そうですとも!」
セバスチャンが乗っかる。
ヒナタは、仲間たちに号令をかけた。
「総員、注目!」
「隣村で、魔王軍による『卑劣な運動会』が開催されています!」
「我々はこれに乱入し、正々堂々と勝利して、村の平和(と蜂蜜)を取り戻します!」
「ブモォォォッ!!(綱引きなら負けねぇ!)」
ゴズが鼻息を荒くする。
「ふむ。競技となれば、騎士として遅れはとれんな」
ヴァレリアが準備運動を始める。
「……ん。玉入れ、魔法で全部入れる」
ネムリネが起きた。
「よし! 出発です!」
「陶芸教室は延期! 今すぐ『アル・サト村』へ殴り込み(エントリー)に行きます!」
「うおおおおッ!!」
【場所:アル・サト村・入り口】
数時間後。
ヒナタ一行は、土煙を上げて隣村に到着した。
そこには、確かに魔物たちがいた。
オークの集団が、村の入り口をバリケードで封鎖している。
『ギャハハ! ここは俺たちの拠点だ!』
『食い物をよこせ!』
普通の略奪だ。
どこからどう見ても、運動会などやっていない。
しかし、ヒナタの目には「入場ゲート」にしか見えなかった。
「あそこが受付ですね!」
ヒナタは、バリケードに向かって堂々と歩いて行った。
『あ? なんだテメェは?』
オークの隊長が斧を構える。
『死にたいのか?』
「遅れてすみません! エントリー希望の『勇者チーム』です!」
ヒナタは、オークの目の前に「参加申込書(ただの紙切れ)」を叩きつけた。
『は?』
「種目は何ですか? 障害物競走? それとも騎馬戦?」
「準備はできてますよ! かかってきなさい!」
『な、何を言って……』
「ブモォォォッ!!(準備運動完了だ!)」
ゴズが、ウォーミングアップとして近くの大岩をベンチプレスし始めた。
「フッ……。私の足について来れるかな?」
ヴァレリアが、反復横跳び(残像が見えるレベル)を開始。
「……ん。これ、応援旗」
ネムリネが魔法で、空中に巨大な旗(「必勝」と書いてある)を掲げた。
『ひぃっ!? こ、こいつらヤベェぞ!』
オークたちが後ずさりする。
「さあ! 第1種目は何ですか!?」
ヒナタが、キラキラした目(と殺気)で迫る。
セバスチャンは、馬車の影で祈っていた。
「……頼む。魔物たちよ……」
「空気を読んでくれ……! 『戦闘』ではなく『競技』に応じてくれ……!」
魔王軍の別動隊は、未知の恐怖(スポーツガチ勢)に直面していた。
彼らが「略奪」を諦め、「綱引き」のロープを探し始めるまで、あと数分の命運だった。
(第43話・完)
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