■第40話:キノコの森でソテー! ……わあ、このキノコ、焼くと「悲鳴」を上げて美味しいですね!
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【場所:鬱蒼とした「静寂の森」】
「ふぅ……。空気が湿っていますな」
宰相セバスチャンは、馬車(ネムリネ輸送用)の手綱を握りながら周囲を警戒していた。
この森は、猛毒の胞子が舞う危険地帯として知られている。
「……あ!」
突然、ヒナタが馬車を飛び降りた。
「ど、どうしました勇者殿!? 敵ですか!?」
ヒナタは、巨大な木の根元に生えている、毒々しい紫色で、かつドクロマークが入ったキノコを指差した。
「見てくださいセバスチャンさん! 『食材の宝庫』ですよ!」
「ブモォォォッ!(うまそうだ!)」
「い、いやいや! どう見ても毒ですぞ! ドクロが笑ってますよ!?」
「何言ってるんですか! これは希少な『デビル・マッシュルーム』です!」
ヒナタは、図鑑(自作のグルメノート)を開いた。
「毒性は強いですが、適切な下処理をすれば、フグをも超える濃厚な旨味が出るんです!」
「フグ!? ここで調理する気ですか!?」
「当然です! キノコは鮮度が命!」
ヒナタはリュックから、フライパンとバター、そして謎のスパイスを取り出した。
「ヴァレリアさん! 千切り(戦闘)お願いします!」
「エイルさん! 強火で!」
「ふむ。食材のカットか。……私の剣技、厨房でも冴え渡るか」
「やれやれ。火加減は『強めの中火』ですね」
【クッキング・スタート】
ギャアアアアッ!!
ヒナタがキノコに手を伸ばすと、キノコがいきなり目を開き、悲鳴を上げた。
そう、これは魔物「マタンゴ(人食いキノコ)」だったのだ。
『食われる! 逆に食われるゥゥゥッ!』
マタンゴたちが一斉に逃げ出す。
「あっ! 待てーっ!」
ヒナタが包丁を持って追いかける。
「逃げるなんて! さては自分たちが『美味しい』って自覚があるんだな!?」
「くそっ、活きが良すぎるぞ!」
「ブモォォォッ!(捕まえろォォォッ!)」
ゴズが、逃げるキノコをラリアットでなぎ倒す。
「ふんッ!」
ヴァレリアが、空中に舞い上がったキノコを、目にも止まらぬ速さでスライスしていく。
シャシャシャシャッ!!
「エイルさん! フライパンを熱して!」
ジュワァァァァッ!!
バターの溶ける香ばしい匂いが、森に充満する。
逃げ惑う魔物(食材)たちが、次々とフライパンという名の処刑台へと送り込まれていく。
『たすけ……ギャァァァ(いい匂い……)』
【実食タイム】
数分後。
そこには、こんがりと黄金色に輝く「マタンゴのバターソテー・ガーリック風味」が完成していた。
「完成です! さあ、冷めないうちに!」
「……」
セバスチャンは、震えるフォークを持っていた。
「……本当に、死にませんか?」
「大丈夫です! 毒袋はヴァレリアさんが完璧に除去しましたから!」
ヒナタは、パクリと一口食べた。
「ん~っ!!」
ヒナタが天を仰ぐ。
「デリシャス!!」
「この歯ごたえ! 噛むたびに溢れる魔力(旨味)! そして後から来るわずかな痺れが、舌を刺激して最高です!」
「……痺れ?」
セバスチャンが顔面蒼白になる。
その時。
馬車の荷台から、フラフラとネムリネが出てきた。
「……ん。いい匂い」
「あ、ネムリネさん! 起きたんですか?」
ネムリネは、寝ぼけ眼でソテーを掴み、口に放り込んだ。
モグモグ……。
「……!」
ネムリネの目が、カッ!と見開かれた。
「……美味い」
「目が……覚めた」
ドォォォォォン!!
ネムリネの背中から、凄まじいオーラが噴出した。
マタンゴの持つ「興奮毒」が、怠惰な彼女に「覚醒作用(エナジードリンク100本分)」をもたらしてしまったのだ。
「力が……みなぎる……!」
「走りたい。……私、今なら光より速く走れる気がする」
「わあ! すごい効能ですね!」
ヒナタが拍手する。
「セバスチャンさんもどうぞ! 元気になりますよ!」
「い、嫌だァァァッ!!」
無理やり口に押し込まれるセバスチャン。
モグッ。
「……ん?」
「……お? おおおおっ!?」
セバスチャンの腰痛が消えた。
胃痛が消えた。
肌にハリが戻り、髪にツヤが出た。
「なんだこれはァァァッ!! 若返った気がするぞォォォッ!!」
セバスチャンは、叫びながらブレイクダンスを始めた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、モニターの前でサラダを食べていた。
『マタンゴだぞ……?』
『即死級の猛毒胞子を撒き散らす、森の殺し屋だぞ……?』
『なんで「スーパーフード」になってるんだよ!』
『しかも、ネムリネが……あの怠け者が、馬車を追い越して全力疾走してるじゃないか!』
『設定崩壊だ……。私の作った生態系が……「食材」という概念に負けた……』
【森の出口】
「いやぁ、美味しかったですねぇ!」
ヒナタは満足げに腹をさすった。
一行は、全員が「ハイテンション状態」になっていた。
ネムリネは走り回り、セバスチャンは歌い、ゴズは木をなぎ倒しながら進んでいる。
「この調子なら、魔王城までノンストップで行けますね!」
「ヒャッハーーー!! 行くぞオラァァァッ!!(セバスチャン)」
「……薬(毒)が切れた時が怖いな」
ヴァレリアだけが、冷静に剣の脂を拭っていたが、その足取りは妙に軽かった。
こうして、森の魔物を「完食」した一行は、恐ろしいほどの速度で街道を爆走していった。
森に残されたのは、バターの香りと、「もう二度と人間の前に姿を現すまい」と誓ったキノコたちの生き残りだけであった。
(第40話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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