■第39話:夜の草原が光り輝く! ……ここを「ヒナタ国立公園」とし、立入禁止にします!
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【場所:街道沿いの平原・野営地】
「ふぅ……。静かな夜ですな」
焚き火のそばで、宰相セバスチャンは胃薬を飲みながら星を見上げていた。
ライオンの檻に住もうとした騒動から数日。ようやく心拍数が正常値に戻りつつある。
「勇者殿も、遊び疲れて静かに寝ているようだ。このまま朝まで平和に……」
その時だった。
ポゥ……。
草原の一角が、淡く発光した。
それを合図に、視界いっぱいに広がる無数の蕾が、一斉に開き始めた。
シャラララ……。
月光を浴びて咲き乱れる、白銀の花々。
それは、まるで地上に天の川が降りてきたかのような、幻想的な光景だった。
「……す、すごい」
セバスチャンも息を呑む。
「これは……『月下美人』の一種か? まさか、この街道沿いにこれほどの群生地があるとは……」
「……セバスチャンさん」
背後から、低い声がした。
振り返ると、ヒナタが仁王立ちしていた。
その目は、感動の涙で潤んでいると同時に、「狂信的な使命感」で燃えていた。
「見ましたか、この奇跡を」
「は、はい。美しいですな」
ヒナタは、震える手で地面に線を引いた。
「決めました」
ヒナタは、街道の真ん中に杭(テント用)を打ち込んだ。
「ここを『ヒナタ・ムーンライト・パーク』として保護区に指定します!」
「今後、この花畑への『車両の乗り入れ』および『無神経な足踏み』を一切禁止します!!」
「はあぁぁぁッ!!??」
セバスチャンが飛び上がる。
「こ、ここは公道ですぞ!? 物流の大動脈ですぞ!?」
「馬車はどうするのですか!」
「迂回してください!」
ヒナタは即答した。
「花を踏むくらいなら、遠回りすべきです! 命の輝きと、物流の効率、どっちが大事なんですか!」
「物流に決まってるでしょうがァァァッ!!」
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、夜食のカップ麺をすする手を止めた。
『綺麗だねぇ……』
『私が適当に配置した「背景用・草セット05」が、月明かりのバグで発光してるだけなんだけど……』
『……え? 封鎖?』
『そこを通らないと、次の街に行けないんだけど?』
『勇者が……勇者が街道を封鎖してどうするんだァァァッ!! 魔王軍の妨害工作かお前は!!』
【1時間後・ヒナタ国立公園】
セバスチャンの胃痛をよそに、管理体制は盤石なものとなっていた。
「ヴァレリアさん! 警備をお願いします!」
「承知。花の呼吸を乱す者は、風圧で吹き飛ばそう」
ヴァレリアは剣を構え、花畑の境界線に立っている。
「エイルさん! 結界を!」
「はいはい。『対物理・絶対防衛シールド』を展開。……蟻一匹通しませんよ」
「ネムリネさん!」
「……ん」
ネムリネは、一番綺麗に咲いている花畑の中央で、クッションに埋もれて寝ていた。
その姿は、まるで「森の眠り姫」のような絵画的芸術性を醸し出している。
「完璧だ……。ネムリネさんが『映えスポット』として機能している……」
ヒナタは満足げに頷いた。
そこへ。
ガラガラガラ……ッ!
深夜の街道を行く、商人の荷馬車が通りかかった。
「おーい! 道を開けてくれー! 急ぎの荷物なんだ!」
御者が叫ぶ。
「ストップ!!」
ヒナタがライト(松明)を振って立ちはだかった。
「この先は自然保護区です! 車両通行止めです!」
「はあ!? ここは街道だぞ!?」
「見てください、この美しい花を! あなたの車輪で、この小さな命を踏み潰せと言うんですか!?」
ヒナタの鬼気迫る説教に、御者がたじろぐ。
「い、いや、でも……」
「迂回路はこちらです!」
ヒナタが指差したのは、ゴズが急ピッチで開墾した「獣道」だった。
「ブモォッ!!(こっちだ!)」
「無理だろ! あんな道、車軸が折れるわ!」
御者が泣きつく。
すると、セバスチャンが土下座をした。
「頼む……! 頼みます商人殿……!」
「通行料なら払う……! 倍払うから……! 勇者(あの管理者)を刺激しないでくれ……!」
「あ、あんたも大変だな……」
商人は、セバスチャンのやつれた顔に同情し、しぶしぶ迂回していった。
【翌朝】
花は朝日で萎み、普通の草原に戻った。
「ふぅ……。守りきりましたね」
ヒナタは、徹夜明けの目で充実感に浸っていた。
「……さあ、行きましょうか」
セバスチャンが、死んだような声で言う。
「花も萎みました。もう守る必要はないでしょう……」
「甘いですセバスチャンさん!」
ヒナタが食い気味に言う。
「来年もまた咲くんです! 根っこを守らなきゃ!」
「僕たちが去った後、誰がこの子たちを守るんですか!?」
「じゃあ一生ここに住むんですかァァァッ!!」
ヒナタは考え込んだ。
そして、茂みの中にいた「ゴブリン(野生)」を見つけた。
「……君」
『ギョ?』
ヒナタは、ゴブリンに自分の「勇者バッジ」と、「管理日誌」を手渡した。
「今日から君が、この公園のレンジャー(管理人)だ」
「給料は、通行人から徴収する『環境保全協力金』で賄いなさい」
「いいね?」
『ギ、ギョギョ!(は、はい!)』
ゴブリンは、勇者の圧とバッジの輝きにひれ伏した。
「よし! 引き継ぎ完了!」
ヒナタは爽やかに笑った。
「行きましょう皆さん! 世界には、まだ守るべき自然が沢山ありますからね!」
一行は、再び旅立った。
背後には、「環境保護団体・ゴブリン支部」によって守られる、謎の聖地を残して。
セバスチャンは、馬車の中で胃薬を飲みながら呟いた。
「……魔王より先に、私の胃壁が崩壊するのが先か……」
神ドラマスは、モニターの前で頭を抱えた。
『なんでゴブリンが「自然保護活動家」にジョブチェンジしてるんだよ……』
『そこは「討伐対象」だろ……』
しかし、旅は続く。
「何もない」場所ほど、ヒナタにとっては「何かある」場所なのだから。
(第39話・完)
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