■第36話:怠惰の将軍が登場! ……えっ、戦うのが面倒だから「お昼寝勝負」ですか?
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【場所:魔王城・玉座の間】
「えぇ~……。やだぁ……」
玉座の間に、気だるげな声が響いた。
声の主は、パジャマのようなローブを纏い、空中に浮かぶクッションの上で丸まっている少女。
彼女こそ、魔王軍最強の魔力を持つとされる、怠惰将軍ネムリネである。
「行けネムリネ! 貴様しかいないのだ!」
魔王が必死に説得する。
「勇者は『遊び』で我が軍を無力化している! ならば、そもそも『遊びにも乗らない』貴様なら勝てるはずだ!」
「むりぃ……。遠いもん……。砂漠とか暑いし……」
ネムリネは欠伸をした。
「勇者とかどうでもいいよぉ……。滅んだら起こして……」
「……あいつら、ものすごく寝心地のいい『魔法の絨毯』を持ってるぞ」
魔王は嘘をついた。(いや、あながち嘘ではないが)
「……!」
ネムリネの片目が開いた。
「さらに、伝説の『安眠枕(水竜のクッション)』も持っているらしい」
「……行く」
ネムリネが即答した。
「その枕、奪って……二度寝する……」
こうして、物欲(睡眠欲)に釣られた最強の将軍が、重い腰を上げた(浮いたまま)。
【場所:砂漠の出口付近】
「ふぅ……。そろそろ砂漠も終わりですね」
ヒナタたちは、ラクダに揺られて進んでいた。
荷物はパンパンだ。お土産、ドードーの羽、ピンポンボタン、そして玉手箱。
その時。
フワァ……。
道の真ん中に、巨大な枕を抱いた少女が浮いていた。
その周囲だけ、なぜか重力が歪んでいるように見える。
「……ん。来た」
ネムリネが、眠そうにヒナタたちを見下ろした。
「敵襲です!」
セバスチャンが叫ぶ。
「あの方……! 間違いありません! 魔王軍の幹部クラスです!」
「ものすごい魔力だ……! 空間が歪んでいる!」
ヴァレリアが剣を抜く。
「貴様、何者だ! 名乗れ!」
「……ネムリネ。……魔将軍」
彼女は名前を言うだけで疲れたように、ぐったりとした。
「……戦うの面倒くさい。……死んで(永眠して)」
ブワッ!!
ネムリネが指を一本動かすと、強烈な「強制睡眠波動」が放たれた。
食らえば二度と目覚めない、即死魔法だ。
「ぐっ……! 瞼が……重い……!」
「意識が……!」
セバスチャンとヴァレリアが膝をつく。
しかし。
ヒナタは、パジャマ姿のネムリネを見て、パァァァッと顔を輝かせた。
「わあ……! その格好!」
「……?」
「その『人をダメにするクッション』の浮遊版! そして最高級シルクのパジャマ!」
ヒナタは魔法を無視して(状態異常無効)、ネムリネの手を握った。
「あなた、プロの『お昼寝師』ですね!?」
「……は?」
ネムリネの目が点になった。
「すごい! 砂漠のど真ん中でそのリラックス感! 尊敬します!」
「僕も『いかに快適に寝るか』を研究してるんです!」
「……研究?」
「はい! 見てください!」
ヒナタはリュックから、「最高級ペルシャ絨毯(ふかふか加工済み)」と、「水竜のビーズクッション(予備)」、そして「ひんやりスライム枕」を取り出した。
「これ、僕の『三種の神器』です。どうぞ試してみてください!」
ネムリネは、警戒しつつもクッションに触れた。
プニッ。
「……っ!」
ネムリネの表情が変わった。
「……なにこれ……。雲……?」
「低反発と高反発のハイブリッドです! 砂漠の熱気も遮断しますよ!」
「……寝ていい?」
「どうぞどうぞ!」
ネムリネは、ヒナタの特設ベッドにダイブした。
『…………』
数秒後。
「……スヤァ……」
最強の将軍が落ちた。
魔法戦も、剣戟も、舌戦もなく。
ただ「寝心地」という一点において、彼女はヒナタに屈服した。
【1時間後】
「むにゃ……。最高……」
ネムリネが目を覚ました。
今まで、硬い玉座や冷たい石の床で寝ていた彼女にとって、ヒナタの提供する環境は「天国」だった。
「気に入りましたか?」
ヒナタが、冷たい麦茶を差し出す。
「……ん。これ、欲しい」
「いいですよ。あげるのは無理だけど……一緒に使いますか?」
「……一緒?」
「はい。僕たちと旅をすれば、毎日このベッドで寝られますよ」
「移動中も、ゴズさんが揺れないように運んでくれます」
「ブモッ!(任せろ!)」
ネムリネは考えた。
魔王城に帰れば、また「働け」と言われる。
ここなら、最高級の寝具と、世話焼きの執事がいる。
「……決めた」
ネムリネは、枕を抱きしめて宣言した。
「私、魔王軍やめる。……ここで寝る」
「えええええッ!!??」
セバスチャンが絶叫する。
「て、敵の将軍ですよ!? 仲間に入れるんですか!?」
「いいじゃないですか。彼女、戦う気なさそうですし」
ヒナタは笑った。
「それに、野宿の時に『安眠魔法』かけてもらったら便利ですよ!」
「……かける。安眠、得意」
ネムリネがVサイン(指一本)をした。
【場所:天界・管理室】
『嘘だろォォォォッ!!』
神ドラマスが、モニターに向かって叫んだ。
『戦えよ! 「ダルい」って理由で寝返るなよ!』
『私の作った最強キャラが……ただの「居候」になった……』
『魔王……ごめん。お前の人選ミスだ……』
『あいつ(ヒナタ)の前に、「欲」に忠実な奴を出しちゃダメなんだよ……』
【場所:旅の再開】
こうして、一行に新たな(そして全く働かない)仲間が加わった。
ラクダの上ではなく、ゴズが引っ張る「荷車(ベッド仕様)」の上で、幸せそうに寝息を立てるネムリネ。
「……Zzz……魔王様……ごめん……ふかふかには勝てない……」
ヒナタは、そんな彼女を見て満足げに頷いた。
「仲間が増えるって、楽しいですねぇ!」
セバスチャンは、胃薬を飲み込んだ。
「……もう、何も言いますまい」
「ただ、食費と……クリーニング代がかさむことだけは覚悟しておこう……」
勇者一行は、戦力(主に睡眠力)を大幅に強化し、砂漠を抜けて次のエリアへと進んでいく。
しかし、ネムリネが起きている時間は、1日のうち30分(おやつの時間)だけだった。
(第36話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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