■第35話:水の神殿で乙姫と対決! ……勝負内容は「宴会芸(ダンスバトル)」ですか?
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【場所:地底湖の深淵・水の神殿】
ボコボコボコ……ッ。
エイルの「水中呼吸魔法」と、首長竜プレッシーの背中に乗って、一行は湖の底にある巨大な神殿に到着した。
珊瑚で作られた柱、真珠で飾られた屋根。
それはまさに、絵本で見た「竜宮城」そのものだった。
「ようこそお越しくださいました、勇者様一行……」
神殿の奥から、十二単をまとった絶世の美女が現れた。
優雅な身のこなし、艶やかな黒髪。
彼女こそ、この神殿の主――に化けた、魔王軍・魔海将軍オクタヴィア(正体は巨大タコ女)である。
『クックック……。ここに来たが最期。骨抜きにして魂を喰らってやるわ……』
オクタヴィアは心の中で舌なめずりをした。
しかし、ヒナタはプレッシーから飛び降り、目をキラキラさせて叫んだ。
「本物の乙姫様だーッ!!」
「すごい! やっぱり竜宮城は実在したんだ!」
「ヒ、ヒナタ殿……」
宰相セバスチャンが耳打ちする。
「あの方、凄まじい妖気(魔力)を感じますぞ。ただの姫君ではありません。……おそらく魔族の将軍クラスかと」
「えっ!?」
ヒナタが驚く。
「魔族の将軍……ということは!」
「そうです、罠ですぞ!」
「……ということは、この後の『宴会』も、魔界レベルの『超・豪華エンターテインメント』が期待できるってことですね!?」
「なんでそうなるゥゥゥッ!?」
【場所:神殿・大広間】
オクタヴィアは、豪華な食事(毒入りではないが、眠り薬入り)を用意していた。
しかし、ヒナタは席に着くなり言った。
「乙姫様! 料理も素晴らしいですが……竜宮城といえばアレですよね?」
「『タイやヒラメの舞い踊り』!」
『……は?』
オクタヴィアが固まる。
「僕、あれを見るのが夢だったんです! さあ、ミュージックスタート!」
ヒナタが手拍子を始める。
『え、いや、私はこれから貴様らを眠らせて……』
「ブモッ!(踊れ! 踊れ!)」
「ふむ。異文化の舞踏か。手合わせ願いたいものだ」
ヴァレリアまで期待の眼差しを向けている。
オクタヴィアは冷や汗をかいた。
『くっ……! ここで断れば怪しまれる……』
『ええい、部下たちよ! 出てこい!』
ドロドロドロ……ッ!
オクタヴィアが召喚したのは、深海に住む凶悪な魔物たち。
鎧をまとった人食い鯛と、巨大な牙を持つヒラメ(デビル・フラットフィッシュ)だ。
『さあ、踊り(攻撃)狂え! 勇者どもを血祭りに……』
「わあ! 迫力あるぅぅぅッ!」
ヒナタが歓声を上げた。
「すごい! 前衛的なコンテンポラリーダンスですね!」
「よし! 僕たちも混ざりましょう!」
「負けてられませんよ! 『ダンスバトル』の開幕です!」
【第1回・竜宮城ダンスバトル】
ズンドコズンドコ♪(ゴズの腹太鼓)
「ワン・ツー! ワン・ツー!」
ヒナタが、襲いかかってくる人食い鯛の手を取り、華麗にステップを踏む。
『ギョッ!?(攻撃が躱された!?)』
『いや、リードされてる!?』
「ヴァレリアさん! ヒラメさんとタンゴを!」
「承知! ……ふんッ! 貴様のステップ(攻撃)は甘い!」
ヴァレリアは、ヒラメの突進を受け流し、優雅に回転させて壁に叩きつけた(ダンスの決めポーズ)。
「エイルさん! 照明!」
「はいはい。ストロボ効果を出しますよ」
ビカビカビカッ!!
『目が! 目がァァァッ!!』
魔物たちは、勇者一行の「完璧なリズム感(物理攻撃)」に翻弄され、次々と踊り疲れてダウンしていく。
「乙姫様! 次はあなたの番ですよ!」
ヒナタが、玉座に座るオクタヴィアを指名した。
『わ、私!?』
「将軍クラスのダンス、見せてください!」
「ブモォォォッ!(コール! コール!)」
『き、貴様ら……調子に乗るなよ……!』
オクタヴィアはブチ切れた。
正体(タコ足)を一部露出し、8本の足で猛烈なステップを踏み始めた。
『見てろ! これが魔界の「死のタコ踊り(デス・オクトパス・ダンス)」だ!』
ドタバタドタバタ!!
ものすごい高速ステップ。
普通ならソニックブームで肉が裂ける。
しかし、ヒナタは感動して拍手した。
「すごい! 一人で『阿波踊り』の連ができる人数だ!」
「キレッキレですね! でも、ちょっとリズムが走ってますよ!」
「僕が手本を見せます! 『ソーラン節』です!」
「どっこいしょー! どっこいしょー!」
ヒナタの魂の演舞に、オクタヴィアの部下たちも思わず、
『ソ、ソーラン! ソーラン!』
と合いの手を入れてしまった。
【1時間後】
「はぁ……はぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……」
神殿の床には、力尽きた魔物たちと、汗だくで倒れ込むオクタヴィアの姿があった。
完全なる「踊り疲れ」である。
「いやぁ、いい汗かきましたねぇ!」
ヒナタだけが、スライム・ドリンクを飲んで爽やかだった。
『……ば、化け物め……』
オクタヴィアは震える手で、懐から小箱を取り出した。
『……持ってけ……』
『やるよ……。これ以上、付き合いきれん……』
それが、伝説の秘宝「玉手箱」だった。
「わあ! ありがとうございます!」
「優勝賞品ですね!」
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、モニターの前で真顔だった。
『魔将軍が……ソーラン節で負けた……』
『私のシリアスな水中戦が……「盆踊り大会」になった……』
『もういい。開けろ。その箱を開けてしまえ』
『中身は「老化の煙」だ。おじいちゃんになって、少しは落ち着け……』
【場所:神殿・出口】
「さあ、開けますよー!」
ヒナタは、ワクワクしながら玉手箱の紐を解いた。
「3、2、1……オープン!」
ボシュゥゥゥゥッ!!
真っ白な煙が、ヒナタたちを包み込む。
「ゲホッ! け、煙が!」
セバスチャンが慌てる。
「ま、まさか伝説通り、老人になってしまうのでは!?」
煙が晴れる。
そこには――。
「……あれ?」
ヒナタは、おじいちゃんになっていなかった。
その代わり、顔が「真っ白にメイク(白塗り)」されていた。
「わあ! 『おしろい』だ!」
ヒナタが鏡を見る。
「バカ殿様みたい! 面白い!」
「ブモッ!(俺も真っ白だ!)」
「ふむ……。美白効果がある煙か?」
どうやら、ヒナタの「状態異常無効スキル」と「ポジティブ補正」が、
【老化】→【白髪・白塗り(メイク)】
へと呪いを変換してしまったようだ。
「乙姫様! 素敵なメイク道具、ありがとうございました!」
「ハロウィンで使えますね!」
『……帰れ。頼むから帰ってくれ……』
オクタヴィアは、涙目で手を振った。
こうして、竜宮城(魔窟)を「ダンスホール」に変えた一行は、意気揚々と地上へ帰還した。
手には、無限に白塗りできる「玉手箱」を持って。
(第35話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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