■第33話:オアシスで隠れんぼ! ……えっ、そこ「保護色(カモフラージュ)」使うんですか?
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【場所:オアシス都市「アル・トフラ」・中央広場】
「ふぅ……。ここは平和な街ですな」
宰相セバスチャンは、水を補給しながら安堵していた。
大きなトラブルもなく、魔物もいない。
子供たちの笑い声が響く、牧歌的な光景だ。
「もーいーかーい?」
「まーだだよー!」
無邪気な声。
セバスチャンが微笑ましく眺めていると、横でヒナタが「戦場(遊び場)の目」をしていた。
「……セバスチャンさん」
「は、はい?」
ヒナタは、リュックを地面に置いた。
そして、靴紐をギュッと結び直した。
「子供たちの『索敵能力』を甘く見てはいけません」
「彼らは『気配』に敏感です。本気で隠れないと、一瞬で見つかりますよ」
「……え?」
ヒナタは、広場で遊ぶ子供たちの輪に、音もなく近づいた。
「ねえ、僕も入れてくれない?」
「わあ! お兄ちゃんもやる?」
「いいよー! じゃあお兄ちゃんが隠れる役ね!」
「ありがとう。……でも、手加減はしないよ?」
ヒナタはニヤリと笑った。
「総員、散開! 『本気隠れんぼ(ガチ・ハイド)』開始です!」
「ブモォォォッ!(俺様が鬼だァァァッ!)」
「ふむ。都市迷彩の訓練か。悪くない」
「やれやれ……。認識阻害魔法のテストをしますか」
一瞬にして、勇者一行(セバスチャン除く)が街の中に消えた。
【場所:天界・管理室】
『おい待てェェェッ!!』
神ドラマスが、モニターに向かって叫んだ。
『なんでだ! なんで補給地点で「特殊部隊ごっこ」を始めるんだ!』
『子供相手だぞ!? 接待プレイしろよ!』
『なんでヴァレリアは屋根の裏に張り付いてるんだよ! 忍者か!』
【10分後・オアシス全域】
「もーいーかーい!」
「もーいーよー!」
子供たちが一斉に探し始める。
しかし。
「あれー? お兄ちゃんいないよー?」
「お姉ちゃん(ヴァレリア)も見つかんない!」
「牛さん(ゴズ)だけすぐ見つかったー!」
「ブモッ……(体がデカすぎて隠れられねぇ……)」
ゴズは即座に確保され、子供たちのジャングルジムにされていた。
問題はヒナタたちだ。
子供たちが路地裏を探しても、市場を探しても、影も形もない。
「どこだー! 出てこーい!」
子供たちの探索範囲は、いつしか街の外れまで広がっていた。
その時。
広場の噴水の近くで、セバスチャンが困り果てていた。
「勇者殿ー! どこですかー! そろそろ出発の時間ですぞー!」
「……セバスチャンさん」
「ひぃっ!?」
セバスチャンが飛び上がった。
声は聞こえるのに、姿が見えない。
「足元です」
「えっ?」
セバスチャンが下を見ると、噴水の縁にある「石像」が、わずかに瞬きをした。
「……ゆ、勇者殿!?」
「シーッ! 声が大きいですよ」
ヒナタは、全身に泥と灰を塗りたくり、石像と完全に同化していた。
そのクオリティは、ハリウッドの特殊メイク並みだ。
「な、何やってるんですかァァァッ!?」
「『擬態』です。子供たちの視覚情報から、僕という存在を消しました」
「バカな!? 隠れんぼでそこまで!?」
「遊びだからこそ、全力を尽くすんです!」
ヒナタ(石像)が力説する。
「見つかった時の『悔しさ』と、見つけた時の『達成感』……それを教えるのが、大人の義務ですから!」
【30分後】
「うわーん! 見つかんないよー!」
「お兄ちゃんどこー!?」
子供たちが半泣きになり始めた。
さすがに難易度「Sクラス(勇者級)」は厳しすぎたか。
すると、ヒナタ(石像)がスッと立ち上がった。
バリバリと泥が剥がれ落ちる。
「……ふふっ。僕の勝ちだね!」
「あ! いたーッ!!」
「すげー! 石になってたー!」
子供たちが歓声を上げて集まってくる。
「お兄ちゃんすごい! 魔法使いなの!?」
「忍者なの!? 弟子にして!」
「えへへ、修行すれば誰でもできるよ」
ヒナタは泥を落とし、子供たちの頭を撫でた。
「じゃあ次は、僕が鬼をやる番だね」
「みんな、30秒数える間に隠れて!」
「わーい! 隠れろーッ!」
子供たちが蜘蛛の子を散らすように逃げる。
ヒナタは目を閉じて数え始めた。
「いーち、にーい……」
【場所:天界・管理室】
『……まだやるのか?』
神ドラマスは、こめかみを押さえた。
『もう勝っただろ? 満足しただろ?』
『「次は鬼」って……これ、無限ループ入ってないか?』
その予感は的中した。
ヒナタが鬼になれば、彼の「千里眼(探知スキル)」と「足跡追跡」が火を噴く。
「みーつけた!」
「うわっ、なんでわかったの!?」
「匂いだよ。君、朝ごはんにパン食べたでしょ?」
「すげぇぇぇッ!!」
子供たちはヒナタの神業に大興奮。
「もう一回! もう一回やって!」
「次は負けないもん!」
ヒナタも、
「よし! 次は範囲を『砂漠エリア』まで広げよう!」
「ヴァレリアさん、包囲網を敷いて!」
と、完全に「軍事演習」のノリで応戦してしまった。
【夕暮れ時】
「はぁ……はぁ……」
セバスチャンは、ベンチで燃え尽きていた。
出発予定時刻から、既に5時間が経過していた。
隠れんぼは、「缶蹴り」に進化し、さらに「ドロケイ(泥棒と警察)」へと発展し、街中を巻き込んだ大運動会になっていた。
「か……帰らない……」
「勇者殿が……子供たちのボスになってしまった……」
広場では、ヒナタを中心にした「子供防衛隊」が結成されていた。
「隊長! あっちに隠れ場所を見つけました!」
「よし! よくやった! ご褒美にアメちゃん支給!」
「ブモォ!(俺もアメくれ!)」
【別れの時】
日が沈み、子供たちの親が迎えに来た頃。
ようやく「解散」の号令がかかった。
「え~、もう行っちゃうの?」
「隊長、行かないでよ~!」
子供たちが、ヒナタの足にしがみついて泣き出した。
「もっと遊びたい~!」
「教えてほしい隠れ技がいっぱいあるのに~!」
ヒナタも、潤んだ瞳で子供たちを見つめた。
「みんな……。楽しかったね」
「でも、僕には使命があるんだ」
(※主に「魔王を倒す」ことだが、今は「世界中の遊び場を制覇する」ことにすり替わっている)
ヒナタは、一人の少年の手に、自分の「泥団子(カモフラージュ用)」を握らせた。
「これを授けよう」
「僕がいなくなっても、この団子を見れば……今日の『本気の遊び』を思い出せるはずだ」
「た、隊長……! 大切にするよ!」
「ありがとう隊長ーッ!!」
子供たちは敬礼で見送った。
ヒナタも、ビシッと敬礼で返した。
「出発! 面舵いっぱい!」
「ブモォォォッ!!」
一行は、夕日に向かって歩き出した。
セバスチャンは、疲れた足を引きずりながらも、少しだけ微笑んだ。
「……まあ、悪くない一日でしたな」
「彼らにとって、一生忘れられない『英雄』になったでしょう」
神ドラマスは、モニターの前で呟いた。
『……頼むから、次は「大人しく」してくれ』
『私の心臓が持たん……』
しかし、次のエリアは「魔の迷宮」。
そこでヒナタが「大人しく」するはずがなかった。
(第33話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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