■第28話:隠し部屋に閉じ込められた! ……わあ、これぞ究極の「秘密基地」ですね!
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【場所:ピラミッド・地下不明階】
「おや? この壁のヒビ、何か変ですね」
ヒナタは、回廊の隅にある小さな亀裂を見つけ、何気なく指で突いた。
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
「な、なんだ!? 地震か!?」
セバスチャンが叫ぶ間もなく、床がパカッと開き、一行は真っ暗な穴へと吸い込まれた。
「うわあああああッ!!」
ドスンッ!!
落下したのは、数メートル下の石造りの部屋だった。
全員が着地した瞬間、頭上の床がガシャーン!と閉まる。
完全なる密室。出口なし。
「い、痛たた……。こ、ここは……?」
セバスチャンが震える手で照明(発光ゴケ)を掲げる。
そこは、四畳半ほどの狭い石室だった。
壁には見たこともない奇妙な文字。扉も窓もない。
そして、空気が澱んでいる。
「た、大変だ! 閉じ込められた!」
セバスチャンが壁を叩く。
「開きません! びくともしない! エイル殿、転移魔法を!」
エイルが杖を振るが、光は出ない。
「……ダメですね。この部屋、強力な『神代の封印』が施されています。魔法はおろか、音さえも外に漏れません」
「そ、そんな……! これでは窒息死か、餓死か……!」
「神よ……! なぜ我々を見捨てたもうた……!」
セバスチャンが絶望の淵に立たされた。
【場所:天界・管理室】
『え……? どこ?』
神ドラマスは、モニターに顔を近づけていた。
勇者一行の反応が消えたのだ。
『マップには……そんな部屋ないぞ?』
『座標バグか? いや、ここは……』
ドラマスは、古い古い設定資料集(神話時代のメモ)を引っ張り出した。
そして、顔面蒼白になった。
『……思い出した。これ、私が世界を創る時に作った「テスト用ルーム(ボツ案)」だ』
『あまりに頑丈に作りすぎて壊せなかったから、そのまま埋めて忘れてたやつだ……』
『やべぇ! あそこ、私の権限でも外から開けられないぞ!』
『詰んだ! 勇者が「バグ部屋」で詰んだァァァッ!!』
神様すらも焦る緊急事態。
脱出不可能。ゲームならリセット案件だ。
【場所:隠し部屋(ボツ部屋)】
「終わった……。ここで干からびて死ぬんだ……」
セバスチャンが膝を抱えて震える。
しかし。
ヒナタは、部屋の四隅をコンコンと叩き、満足げに頷いていた。
「……素晴らしい」
「は?」
「セバスチャンさん。ここ、すごいです」
ヒナタは、リュックから以前買った「最高級ペルシャ絨毯」を取り出し、床に敷き始めた。
「完全防音! 完全遮光! そして適度な狭さ!」
「これぞ男のロマン……『究極の隠れ家』ですよ!!」
「……はあぁぁぁ!?」
「見てください、この壁の文字。開発中って書いてありますよ(神代文字解読不可)」
「きっと、古代の人が一人になりたくて作った『書斎』みたいなものですね!」
ヒナタはテキパキと「模様替え」を始めた。
* 絨毯を敷く(防寒対策)。
* クッション(水竜にあげた残り)を置く。
* ランタン(発光ゴケ)をいい感じの間接照明にする。
* 水パイプ(バザールで購入)をセットする。
あっという間に、殺風景な石室が「おしゃれなチリング・ルーム」に変貌した。
「さあ皆さん! 靴を脱いで上がってください!」
「外の世界の喧騒から離れて、自分だけの時間を楽しみましょう!」
セバスチャンは呆気にとられた。
「し、死ぬんですよ!? 出られないんですよ!?」
「何言ってるんですか。リュックには非常食(干し肉とプリン)が山程あります」
「それに、出られないってことは、『誰も入ってこない』ってことじゃないですか!」
「つまり、王様からの催促も、魔王軍の襲撃も、ここなら関係ないんです!」
「!!」
その言葉に、ヴァレリアとエイルが反応した。
「……確かに。誰にも邪魔されない空間か」
ヴァレリアが剣を置き、クッションに深く沈み込む。
「騎士団の仕事も、修行もない……。ふむ、悪くない」
「静かですね……。研究が捗りそうだ」
エイルが魔導書を開く。
「この部屋の壁の文字、解読しがいがありますよ」
「ブモッ……(寝る……)」
ゴズは即座に熟睡モードに入った。
【数時間後】
神ドラマスが、必死に「脱出コマンド」を探している間。
モニターの中の隠し部屋は、「まったり空間」と化していた。
「ん~、この水パイプ、香りがいいですねぇ」
ヒナタは寝転がりながら、煙をくゆらせている。
「ヒナタ殿、トランプやりませんか?」
「いいですねエイルさん。大富豪で負けた人が肩たたきですよ」
「ふっ、受けて立とう」
セバスチャンだけが、入り口の天井を見上げて叫んでいた。
「だ、誰かーッ! 助けてくれーッ!」
「セバスチャンさん、うるさいですよ」
ヒナタがピシャリと言う。
「せっかくの『おこもり時間』なんですから、静かに楽しんでください」
「楽しむ!? これを楽しめる神経がわかりませんぞ!!」
「ほら、セバスチャンさんも座って」
ヒナタは、温かいお茶(携帯コンロで沸かした)を差し出した。
「一生出られないなら、一生ここで楽しく暮らせばいいじゃないですか」
「……っ」
その極論すぎるポジティブさに、セバスチャンは毒気を抜かれた。
「……はぁ。もう、どうにでもなれ」
セバスチャンは諦めて、絨毯の上に座った。
「お茶……美味いですな」
「でしょう? 狭いところって、妙に落ち着くんですよねぇ」
【場所:天界・管理室】
『開いたァァァァッ!!』
神ドラマスが、徹夜でプログラムを解析し、ようやく「隠し扉」のロックを解除した。
『危なかった……! あやうく勇者を「座敷童」にしてしまうところだった……!』
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
ピラミッドの隠し部屋の天井が、轟音と共に開いた。
『さあ出ろ! 今すぐ脱出するんだ!』
神様が叫ぶ。
しかし。
ヒナタたちは、眩しい光に目を細め、不満そうに見上げた。
「……あーあ。開いちゃいましたね」
ヒナタが残念そうに呟く。
「早かったですね。まだトランプの決着がついてないのに」
ヴァレリアも腰が重い。
「……閉めませんか?」
「ブモッ(賛成)」
『出ろよォォォォッ!!』
『二度と開けないぞ! コンクリートで埋めるぞコラァァァッ!!』
結局、神様のブチ切れによって強制退去させられた一行。
「あ~あ、いい部屋だったなぁ」
「また来たいですね」
ヒナタたちは、後ろ髪を引かれながら、再び広大なピラミッド探索(という名の観光)へと戻っていった。
セバスチャンだけが、「助かった……」と涙を流して神に感謝していた。
(第28話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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