■第25話:オアシスの美女が誘惑! ……えっ、「肩こり」が酷いんですか?
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
本編をお楽しみください
【場所:オアシス都市「アル・カマル」・酒場】
「ふぅ……。普通の街ですねぇ」
一行は、久しぶりの「屋根のある建物」でくつろいでいた。
前のオアシス(自作)も良かったが、やはり人のいる街は落ち着く。
しかし、宰相セバスチャンだけは警戒していた。
(勇者殿は有名になりすぎた……。ここにも、その名声を狙う輩がいるはず……)
その予感は的中した。
酒場の喧騒を切り裂くように、甘い香水の香りが漂ってきた。
「あら……。あなたが噂の勇者様?」
現れたのは、このオアシス一番の美女と名高い高級娼婦、ライラだった。
透き通るような薄布の踊り子衣装。妖艶な視線。豊満な肢体。
男なら誰でも一度は夢見る、砂漠の宝石だ。
「うっ……! で、出たな『傾国の美女』!」
セバスチャンが身構える。
(まずい! ヒナタ殿のような純朴な少年など、一撃で骨抜きにされてしまう!)
ライラは、ヒナタの隣にすっと腰掛けた。
その距離、ゼロセンチ。
「はじめまして、お姉さん。日向です」
ヒナタは、いつものニコニコ顔で挨拶した。
(ふん、チョロい坊やね。私の色香でメロメロにして、財布の紐も秘密も全部吐かせてあげるわ)
ライラは、しなやかな指先でヒナタの胸板をなぞった。
「ねえ、勇者様。旅でお疲れでしょう?」
耳元で甘い吐息を吹きかける。
「私の部屋で……『特別なこと』して癒やしてあげましょうか?」
セバスチャンが絶叫寸前になる。
「いかーん!! 勇者殿! それは罠ですぞ!!」
しかし、ヒナタはキョトンとして答えた。
「特別なこと……?」
「ええ。ふかふかのベッドで……二人きりで……汗をかいて……」
ライラが意味深にウインクする。
ヒナタの目が、カッと見開かれた。
「サウナですかッ!!?」
「……は?」
「すごい! この街、個室サウナがあるんですか!?」
ヒナタが食いついた。
「汗をかいて癒やす……最高じゃないですか! 整いたい! 今すぐ整いたい!」
「ち、違うわよ坊や」
ライラが焦る。
「もっと……こう、肌と肌を触れ合わせて……」
彼女はヒナタの手を取り、自分の柔らかな頬に当てた。
「ほら、熱いでしょ……?」
普通の男なら理性が飛ぶ瞬間だ。
しかし、ヒナタの表情が「医師」のように真剣になった。
「……あ」
ヒナタは、ライラの首筋や肩を、真剣な手付きで触診し始めた。
「熱いというより……『ガチガチ』じゃないですか!」
「へ?」
「首のリンパが詰まってます! それにこの肩! 鉄板みたいですよ!」
ヒナタは悲痛な声を上げた。
「お姉さん、無理して笑ってますけど……本当はすごく辛いんじゃないですか!?」
「え、あ、いや、これは職業病というか……」
「ダメです! 放っておけません!」
ヒナタは立ち上がった。
「セバスチャンさん! 『施術』の時間です!」
「ゴズさん! お湯とタオルを!」
「へ、へい!」
ライラの「誘惑タイム」は、強制的に「ヒナタ整体院・出張診療」へと変更された。
【数十分後・酒場のVIPルーム】
「あだだだだッ!! そこッ! 効くぅぅぅッ!!」
ライラの悲鳴(歓喜)が部屋に響いていた。
ベッドの上で、ヒナタによる「勇者式・激痛足つぼマッサージ」が行われていたのだ。
「ここ、肝臓のツボですね。お酒飲み過ぎてませんか?」
「ひぃぃッ! ごめんなさいぃぃッ!」
「こっちは睡眠不足のツボです。目の下のクマ、化粧で隠しても体は正直ですよ」
ヒナタは、親指に「闘気」を込めて押し込む。
「ああっ……! すごい……! 血が……血が巡っていくぅぅッ!」
ライラは今まで、男に体を売ることはあっても、「体を労ってもらった」ことなど一度もなかった。
常に愛想笑いを浮かべ、客の相手をして、心も体もボロボロだったのだ。
「はい、最後はホットタオルで温めますね」
ヒナタが、蒸しタオルをライラの目に優しく乗せた。
「お姉さん、頑張りすぎですよ」
ヒナタの優しい声が降ってくる。
「綺麗になるのは良いことだけど、まずは自分が元気じゃなきゃ」
「今日はもう、何も考えずに寝てください」
「……うっ……ううっ……」
タオルの下から、涙が溢れ出した。
「誘惑」するはずだった。
「利用」するはずだった。
なのに……こんなに優しくされたら……。
「……ありがとう……勇者様……」
ライラは、赤子のように安らかな寝息を立てて眠りに落ちた。
【場所:酒場の外】
「ふぅ。重症でしたねぇ」
ヒナタは額の汗を拭った。
セバスチャンは、ぐったりと壁に寄りかかっていた。
「……勇者殿。貴方という人は……」
「まさか、あの魔性の女を『寝かしつける』とは……」
ヴァレリアがニヤリと笑う。
「フッ、ある意味『骨抜き』にしたな。彼女、起きたらヒナタ殿の信者になっているぞ」
「ブモッ!(いいことしたな!)」
【場所:天界・管理室】
『ちがうゥゥゥゥッ!!』
神ドラマスが、モニターに向かって叫んだ。
『そこは「大人の駆け引き」だろォォッ!!』
『なんで「健康ランド」になってるんだよ! 色気もへったくれもないわ!』
『しかも、あの子……引退して「整体師」を目指そうとしてるじゃないか!』
ドラマスの用意した「ハニートラップ(精神攻撃)」は、ヒナタの「純粋なお節介」によって、「職業斡旋」という予想外の結末を迎えた。
神様の胃痛は、マッサージでは治りそうになかった。
(第25話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
皆様からの応援が、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!




