■第24話:巨大蟻地獄に落下! ……わあ、これって「天然のすべり台」ですね!
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【場所:アル・バハラ砂漠・中央部】
「ふんふ~ん♪」
ヒナタは、ラクダに揺られながら鼻歌を歌っていた。
元・盗賊たちに城を譲った清々しさと、カバンに入っている「予備のプリン(魔法で保冷中)」への期待で、足取りは軽い。
しかし。
ズザザザザ……ッ!!
突然、地面が大きく揺らぎ、足元の砂が渦を巻いて流れ始めた。
「な、なんだ!?」
宰相セバスチャンが叫ぶ。
「砂が……沈んでいく!? まさか、流砂か!?」
その範囲は尋常ではなかった。
直径数百メートルに及ぶ巨大なすり鉢状の穴が、突如として口を開けたのだ。
「ひぃぃぃッ! 蟻地獄だァァァッ!!」
「吸い込まれるーッ! 逃げろーッ!」
しかし、傾斜は急すぎて登れない。
ラクダもろとも、一行は砂の渦へと飲み込まれていく。
『ギャアアアアッ!』
底の暗闇からは、巨大な顎を鳴らす魔物の咆哮が聞こえる。
絶体絶命。
誰もが死を覚悟した瞬間――。
「…………!!」
ヒナタの声が響いた。
悲鳴か? 命乞いか?
「ヒャッホォォォォォウ!!」
「は?」
ヒナタは、流れる砂の上に「体育座り」をし、両手を上げて歓声を上げていた。
「すごいスピードです! セバスチャンさん!」
「な、なにがですかァァァッ!?」
「これ、『ロング・滑り台』ですよ! 砂がサラサラしてて気持ちいい~!」
「ヴァレリアさん! バランス取ってください! スノボみたいにいけますよ!」
「ふむ……。なるほど」
ヴァレリアは即座に順応した。
盾をソリ代わりにして、砂の斜面を華麗に滑走し始める。
「この不安定な足場……体幹が鍛えられるな!」
「ブモォォォッ!!(俺様も混ぜろォォォッ!!)」
ゴズは、もはや自ら転がって加速している。
「ちょ、待っ……アーッ!!」
セバスチャンだけが、無様に回転しながら落ちていった。
【場所:天界・管理室】
『食え! 食ってしまえ!!』
神ドラマスは、興奮して立ち上がっていた。
『底にいるのは、レベル60の魔獣「砂漠の処刑人」だ!』
『滑り台気分で降りてきたアホな獲物を、その巨大な顎で真っ二つにするのだァァァッ!!』
【場所:蟻地獄の底】
ズザァァァン!!
一行は、猛スピードで底に到着した。
そこには、家一軒分ほどもある巨大な蟻地獄の主が待ち構えていた。
『ギシャアアアアッ!!(獲物が来たぞ!)』
デス・アントリオンが、凶悪な大顎を開く。
その牙には猛毒があり、鋼鉄さえも噛み砕く。
「ひぃっ……! ば、化け物だ……!」
セバスチャンが腰を抜かす。
しかし、ヒナタは目を輝かせて駆け寄った。
「わあ! カブトムシの大きいやつだ!」
『ギシャ?(は?)』
「すごいハサミですねぇ! かっこいい!」
ヒナタは、殺気立つ魔物の目の前で、まったく動じない。
それどころか、流れてくる砂をスコップですくって、魔物の方へ放り投げた。
バサッ。
『グェッ!?(砂が目に入った!?)』
魔物がのけぞる。
「あ、ごめんなさい! 遊んでほしかったのかなって!」
ヒナタは勘違いした。
蟻地獄が砂を飛ばして獲物を落とそうとする習性を、「砂かけ遊びの誘い」だと解釈したのだ。
「よーし、負けませんよ~!」
「ゴズさん! 『砂合戦』開始です!」
「ブモォォォッ!!(受けて立つぜぇぇぇッ!!)」
ここから、地獄の遊戯が始まった。
ゴズの怪力による「砂の豪速球」と、エイルの風魔法による「砂嵐」が、魔物を襲う。
ドスッ! バシッ! ドドドドッ!!
『ギ、ギャアアアッ!?(痛い! 重い! 埋まる!)』
デス・アントリオンは必死に抵抗しようとしたが、ヒナタたちの「遊び(攻撃)」が激しすぎて、反撃の隙がない。
さらに、ヴァレリアが盾で砂を跳ね返す。
「甘いな。その程度の砂飛ばしでは、私の防御は崩せんぞ」
数分後。
蟻地獄の主は、首まで砂に埋められ、完全に身動きが取れなくなっていた。
「わあ、埋まっちゃいましたね」
ヒナタが近づく。
『(殺される……!)』
魔物が震える。
しかし、ヒナタは魔物の大顎を優しく撫でた。
「砂風呂、気持ちいいでしょう?」
『……え?』
「肩まで浸かると疲れが取れますよ~。最近、砂を飛ばしすぎて肩こってたんじゃないですか?」
ヒナタは、魔物の硬い殻(肩?)をゴリゴリとマッサージし始めた。
「ここ、凝ってますねぇ」
「ブモッ(俺も揉んでやる)」
『あ……そこ……気持ちいい……』
魔獣の殺気が消えた。
冷たい砂の中での待ち伏せ生活。カチカチに固まっていた関節が、ヒナタの指圧と温かい砂風呂によってほぐされていく。
『フシュゥゥゥ……(極楽……)』
デス・アントリオンは、完全に脱力し、恍惚の表情(?)を浮かべた。
【場所:天界・管理室】
『なんでだよォォォォッ!!』
神ドラマスが叫ぶ。
『なんで「処刑人」が「砂風呂の客」になってるんだよ!』
『そこは噛み砕くところだろ! マッサージ受けてうっとりするな!』
【場所:蟻地獄の底・その後】
「ふぅ。さて、そろそろ行きましょうか」
ヒナタが立ち上がる。
「でも、ここから登るのは大変ですねぇ」
セバスチャンが見上げる。
「うむ……。この急斜面、ラクダを連れては無理ですぞ」
すると。
『ギシャ!』
砂風呂から這い出したデス・アントリオンが、自らの背中を差し出した。
「え? 乗せてくれるの?」
『コクン。(いい湯だった。礼に送ってやる)』
「わあ! ありがとうございます!」
「ブモォ!(タクシーだな!)」
一行は、巨大な魔物の背中に乗り込んだ。
デス・アントリオンは、その強靭な足腰と大顎を使って、サラサラ流れる砂の斜面を、ものともせずに駆け上がっていく。
「すごーい! 『逆走エスカレーター』みたい!」
ヒナタが歓声を上げる。
ズバァァァン!!
あっという間に地上へ脱出。
「ありがとうアントリオンさん! また肩凝ったら呼んでねー!」
ヒナタが手を振ると、魔物は名残惜しそうに砂の中へ戻っていった。
セバスチャンは、疲れ切った顔で呟いた。
「……もう、何が来ても驚かんぞ」
「流砂は滑り台。魔物はエレベーター。……この世界、実はすごく便利なんじゃないか?」
宰相の感覚も、徐々に麻痺し始めていた。
(第24話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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