■第23話:盗賊団が襲来! ……えっ、お家がないんですか? じゃあこの城あげます!
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【場所:ヒナタ・オアシス(砂の城・城門前)】
ヒヒィィィン!!
砂塵を巻き上げ、数十頭の馬とラクダに乗った集団が現れた。
顔を布で隠し、曲刀を振り回す男たち。
「ヒャッハー!! 噂は本当だったぜ!」
「水だ! 城だ! お宝の匂いがプンプンするぜぇ!」
彼らは、砂漠を荒らし回る悪名高き盗賊団「赤サソリ団」。
オアシスの噂を聞きつけ、略奪しに来たのだ。
「野郎ども! 突撃だァァァッ!」
「中の人間を皆殺しにして、この城を俺たちのアジトにするんだ!」
ドガガガガッ!!
盗賊たちは、雄叫びを上げて城門(砂製だがダイヤモンド並に硬い)を突破しようとした。
【場所:城の中庭・流れるプール】
「……む?」
浮き輪でプカプカ浮いていたヒナタが、騒ぎに気づいた。
「どうしましたヒナタ殿? 敵襲のようですが」
ヴァレリアが、プールサイドでカクテル(果汁)を飲みながら剣に手を伸ばす。
「ふん、賊ごときが。私の水着姿を見た代償は高くつくぞ」
「エイルさん、迎撃魔法を……」
セバスチャンが指示を出そうとした時、ヒナタがプールから上がった。
「待ってください!」
ヒナタはバスタオルを羽織り、真剣な顔で城門の方へ走った。
「話せば分かります! 彼らだって、喉が乾いているだけかもしれません!」
【場所:城門前】
「おいコラァ! 出てきやがれ!」
盗賊の頭目、ザイードが怒鳴る。
「命が惜しければ、金目の物と水を全て置いて……」
ガチャリ。
城門が開いた。
そこから出てきたのは、風呂上がりのようにホカホカしたヒナタだった。
「ようこそ~! 遠いところから大変でしたねぇ」
「あ?」
ザイードが拍子抜けする。
「な、なんだテメェは? 命乞いか?」
「いえいえ。……あの、皆さん。その格好……」
ヒナタは、盗賊たちのボロボロの服と、日焼けで荒れた肌、そして充血した目(砂嵐のせい)をじっと見つめた。
そして、ヒナタの目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。
「うっ……ううっ……!」
「は?」
盗賊たちが動揺する。なぜ泣く?
「かわいそうに……! ずっと砂漠をさまよっていたんですね……!」
ヒナタは、ザイードの手を両手で握りしめた。
「家もなく……お風呂もなく……こんなに肌が荒れるまで……!」
「いや、俺たちは盗賊で……」
「わかります! 住む場所がないから、仕方なく『家』を求めてここに来たんですよね!?」
ヒナタの脳内変換が発動した。
【盗賊の襲撃】→【ホームレス集団の悲痛な叫び】
「『この城を俺たちのアジトにする』って聞こえました! それほど切羽詰まっていたなんて……!」
「え、あ、まあ、アジトにはしたいけど……」
ザイードは毒気を抜かれた。この少年、純粋すぎる。
ヒナタは涙を拭い、決意の表情で城を見上げた。
「……決めました」
ヒナタは、セバスチャンとヴァレリアたちを振り返って言った。
「この城、彼らにあげましょう!!」
「はあぁぁぁッ!!??」
セバスチャンが絶叫する。
「正気ですか!? あんなに苦労して(主にゴズが)作ったのに!?」
「いいんです!」
ヒナタはキッパリと言った。
「僕はもう、十分に楽しみました。プールも入ったし、城主ごっこもしました」
「でも、彼らには『これからの生活』があるんです!」
ヒナタはザイードに向き直り、巨大な「城の鍵(砂製)」を渡した。
「さあ、受け取ってください!」
「今日からここが、あなた達の『マイホーム』です!」
「……は?」
ザイードの手が震える。
「い、いいのか……? 本当に……? タダで……?」
「はい! もちろん!」
ヒナタはニッコリ笑った。
「あ、でも維持管理は大変ですよ? 毎朝エイルさんの魔法(硬化剤)を上書きしないと崩れちゃいますから、そこの魔導書を読んで勉強してくださいね」
「へ……勉強……?」
「あと、中庭の家庭菜園、トマトがもうすぐ収穫時期なんです。ちゃんと水やりしてくださいね?」
「ゴズさんが作った地下倉庫には、干し肉がいっぱいありますから、みんなで仲良く食べてください!」
盗賊たちは、顔を見合わせた。
略奪するつもりだった。殺すつもりだった。
なのに……なぜか「トマトの水やり」と「家のメンテナンス」を頼まれている。
「お、頭目……どうします?」
部下が小声で聞く。
ザイードは、目の前の立派な城と、涼しげな水、そしてヒナタの笑顔を見た。
長年の砂漠暮らし。洞窟での寝泊まり。不安定な生活。
それが、今日から「プール付き豪邸暮らし」に変わるのだ。
ザイードは、曲刀を捨てて、その場に土下座した。
「ありかどうございまずぅぅぅッ!!」
「一生大事にしますぅぅぅッ!!」
部下たちも一斉に泣き崩れた。
「うおおお! 今日から俺たちも城持ちだー!」
「野菜育てます! 勉強します!」
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、モニターの前で白目を剥いていた。
『防衛戦は……?』
『攻城戦イベントは……?』
『なんで敵に「塩」どころか「城」を送ってるんだァァァッ!!』
しかも、盗賊たちはヒナタの優しさに触れ、完全に改心してしまったようだ。
【盗賊団「赤サソリ」は解散し、自警団「ヒナタ・キャッスル・ガード」を結成しました】
『また……また世界が平和になってしまった……』
『私の用意した悪役が……次々と「良い人」になっていく……』
【場所:オアシスの外れ】
「さようならー! 達者でなー!」
「トマト頼みますよー!」
ヒナタたちは、涙ながらに見送る元・盗賊団に手を振り、再び旅立った。
「ふぅ……。良いことをすると気持ちがいいですねぇ」
ヒナタは清々しい顔で空を見上げた。
セバスチャンは、複雑な顔でラクダに揺られていた。
「……まあ、結果オーライですかな」
「あの城に執着して永住されるよりは、手放して進む方がマシだ……」
こうして、ようやく(本当にようやく)一行はオアシスを後にした。
砂漠越えはまだ半分。
次なる試練は、神様が「もうこれしかねぇ!」と用意した「古代遺跡のダンジョン」である。
しかし、ヒナタが遺跡を「探検」ではなく「リフォーム」し始めないことを、神は祈るしかなかった。
(第23話・完)
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