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■ 第222話:血を啜る殺戮の魔剣。……えっ、サビ抜き極上お刺身包丁ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

『ふざけるなァァァッ!! 誰が負けを認めた!! さっきの百腕の巨人はただの小手調べだ!!』


武神ヴァルドが、床をバンバン叩くのをやめてガバッと立ち上がった。

その顔は怒りで真っ赤に茹で上がり、血管がブチ切れそうに浮き出ている。


『いいか! 巨人は「肉体」があるから肩こりだのマッサージだのと誤魔化されたのだ! ならば次は、肉体を持たない【純粋な殺意の塊】を送り込んでやる!』

『あら、ヴァルド。まだやる気? みっともないわよ』


幻神ルキアが呆れたように扇子をパタパタさせるが、ヴァルドは聞く耳を持たない。


『見よ! 我が神域の奥底に封印されし、自律飛行型の最強呪武装……【殺戮の魔剣(ブラッド・サッカー)】だ!!』


モニターに映し出されたのは、ドス黒い赤錆に覆われ、禍々しいオーラを放つ一本の両刃剣だった。


『この魔剣は持ち主を必要としない! 自らの意思で空を飛び、標的の血液を最後の一滴まで啜り尽くすまで絶対に止まらない! お悩み相談もマッサージも不可能! 今度こそ、あの勇者の身体は串刺しになり、全身の血を吸い尽くされるのだァァァッ!!』


【場所:王都から徒歩2日ちょっとの「せせらぎの川辺」・屋外キッチン】

キィィィィィィィンッ!!

上空から、空気を切り裂くような甲高い飛翔音が響き渡った。


「むっ!? なんだあの殺気は!!」


騎士団長ヴァレリアが剣を抜いて上空を見上げる。

真っ赤な流星のように飛来したのは、赤黒いオーラを纏った一本の禍々しい剣だった。


『ギチチチ……! 血ダ……! 生キ血ヲヨコセェェェッ!!』


魔剣は脳内に直接響く念話を撒き散らしながら、一直線に農園の屋外キッチンへと突っ込んでいった。

そこには、ちょうど夕食の準備を始めようとしていたヒナタの姿がある。


「ヒナタ殿ォォォッ!! 避けろ、それは触れただけで血を吸われる呪いの……!」


ヴァレリアが叫んだ、まさにその瞬間。

ズドォォォォンッ!!

魔剣は、ヒナタの目の前にある「分厚い木製のまな板」のど真ん中に、凄まじい勢いで突き刺さった。


「うわぁっ!? びっくりしたぁ!」


ヒナタが目を丸くする。


『ギチチ……! 愚カナ人間ヨ、我ハ殺戮ノ……』


魔剣がヒナタの喉元へ飛び掛かろうと、まな板から抜け出そうとした時だった。


「誰ですか! こんなにサビだらけの包丁を乱暴に放り投げたのは!!」

『……ハ?』


ヒナタは魔剣の恐ろしげな念話を完全に無視し、まな板に刺さった魔剣の刀身(赤黒い血の跡)をジッと見つめて、プンプンと怒り出した。


「見てくださいこの刀身! 真っ赤なサビ(※何千人もの血の跡)がこびりついて、刃こぼれもひどいじゃないですか! 『血が欲しい』って幻聴が聞こえるくらい、鉄分(サビ)が酸化して悲鳴を上げてるんですよ!!」

『……ハァ!? 違ウ、コレハ歴戦ノ血ノ……』

「こんな不衛生な状態でお料理に使ったら、破傷風になっちゃいます! 今すぐお手入れしますからね!」


ヒナタは魔剣をまな板から強引に引っこ抜くと(魔剣は驚きすぎて抵抗できなかった)、タライの中に「重曹」と「クエン酸」と「お酢」をドバドバと混ぜ合わせた【究極のサビ落とし溶液】を作った。


「いきますよ! そーれ!」

『ギ、ギャアアアァァァッ!?』


魔剣はタライの中にドボンと放り込まれた。

シュワシュワシュワッ!! と音を立てて、刀身にこびりついていた何千年分もの「呪いの血の跡」が、重曹とクエン酸の化学反応によって見る見るうちに分解され、剥がれ落ちていく。


『ヤ、ヤメロ! 我ガ誇リ高キ呪イノ血糊ガァァァ……! ……アレ? ナンカ、コビリツイテタモノガ取レテ、刀身ガ息ヲ吹キ返シタミタイニ軽イ……?』

「よし! サビが浮きましたね! 次は砥石(といし)です!」


ヒナタはタライから魔剣を取り出すと、水を張った三種類の砥石(荒砥、中砥、仕上げ砥)を用意した。

シャッ、コォォォ……。シャッ、コォォォ……。

ヒナタの熟練の手つきが、魔剣の刃こぼれを滑らかに削り、刀身の角度を完璧に整えていく。


『ア、アァァァッ……!! ソコッ! ソノ刃先ノ角ド……何千年も誰ニモ研ガレズニ丸クナッテタ部分……ッ! アァァ、絶妙ナ角度デ削ラレテイクゥゥゥッ……!!』


魔剣にとって、極上の砥石による研磨は、人間でいうところの「超高級エステ」にして「究極の整体マッサージ」であった。

ヒナタが仕上げの砥石で磨き上げ、最後に布で拭き取ると……そこには、呪いの赤黒いオーラなど微塵もない、鏡のように周囲の景色を美しく反射する、銀色に輝く【至高の一振り(特大包丁)】が誕生していた。


「はい、ピカピカです! すごく綺麗な両刃の包丁ですね!」

『オォォォ……ッ!! 我ガ刀身ガ、生マレタバカリノ頃ノヨウニ輝イテイル……!!』


魔剣は感動に打ち震え、自ら空中にふわりと浮き上がった。


「あ、包丁さん! 自分で動けるなら、ちょうどよかったです! このお魚、捌(さば)いてくれませんか?」


ヒナタがまな板の上に乗せたのは、ゴズたちが川で捕まえてきた、体長3メートルはある巨大な「バケモノマグロ」だった。


『ムッ! コノ分厚イ肉! ドクドクト流レル大量ノ血液……! 血ダ! 血ヲ啜ラセロォォォッ!!』


魔剣が本能に従い、巨大マグロに向かって突撃する!

ズバババババッ!!

魔剣の凄まじい切れ味と、空を飛ぶ超スピードの乱舞。

それは結果的に、巨大マグロを一瞬にして完璧な「五枚おろし」にし、骨に身を一切残さず、美しく角の立った極上の「お刺身」へと造り変えてしまった。


『フハハハハッ!! 斬レル! 斬レルゾォォ!! コノ極上ノ刃ノ感覚! モットダ、モット色ンナモノヲ斬ラセロォォォッ!!』

「すごーい! 包丁さん、お刺身の天才ですね! じゃあ次は、こっちの大量の玉ねぎの『みじん切り』と、キャベツの『千切り』もお願いします!」

『マカセロォォォッ!!』


トトトトトトトトトトトトトトトッ!!!


数分後。

屋外キッチンには、目にも留まらぬ速さで空を飛び回り、玉ねぎとキャベツをミリ単位の完璧な千切りにしていく「全自動の超有能キッチンスライサー(元・殺戮の魔剣)」の姿があった。


マグロの血をたっぷり浴びて(お刺身を作って)血への渇望も完全に満たされた魔剣は、すっかり「調理の快感」に目覚めてしまったのである。


「ヒナタ殿……あの包丁の動き、もはや神業だな」

「ええ。私たちの剣術よりも遥かに精密な千切りです。今夜のマグロのお刺身と付け合わせのサラダが楽しみですね」


ヴァレリアとエイルが、拍手を送りながら感心している。


【場所:天界・管理室】

『なんで俺の殺戮の魔剣が、空飛んでキャベツの千切りしてんだァァァァッ!!』


武神ヴァルドが、今度こそ完全に心をへし折られ、床に大の字になって絶叫した。


『血を啜る自律型の兵器だぞ!? なんで「サビだらけで刃こぼれしてますね!」って重曹で洗われて砥石で研がれて、全自動のキッチンスライサーになってんだよォォォッ!!』


その横で、ドラマスとアビスが「うんうん」「分かるよその気持ち」と、ヴァルドの背中を優しくさすって慰めている。


『あーっはっはっは!! ヴァルド君、君もこれで立派な被害者の会の一員だ!!』


地球の神様は、笑いすぎて腹筋が吊りそうになりながら転げ回っていた。


『最高の刺客だったよ! おかげでヒナタ君のキッチンの設備がまた一つ最新式になっちゃったね!!』

『う、ううっ……! 俺の……俺の武力が……お刺身包丁に……ッ!!』


武神ヴァルド、二度目の挑戦にして完全敗北(ノックアウト)である。


『……チッ。筋肉バカのヴァルドはやっぱりダメね』


呆れ返る被害者の会の三柱を尻目に、幻神ルキアが扇子をバチッと閉じた。


『次は私よ。あのふざけた「タスク処理」なんかじゃ追いつけないくらいの、本物の幻術……いや、「過去の記憶の改ざん」で、あの男の精神を内側から崩壊させてやるわ……!!』


負けず嫌いの神々のチキンレースは、いよいよ幻神ルキアの第2ラウンドへと突入するのであった。

(第222話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援(トラフィック)が、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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