■ 第219話:神々のチキンレース開幕! ……えっ、百腕の巨人は「究極の農作業マルチタスカー」ですか?
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
『ううっ……。俺の宇宙の神秘が……パティシエに……』
『泣くなアビス。お前はまだ二敗しただけだ……私など数え切れん……』
激動神ドラマスと邪神アビスが、完全に心を折られて床で慰め合っている。
地球の神様は、その横で「いやぁ、君たちの友情が深まって何よりだよ」と笑いながらコーヒーを飲んでいた。
しかしその時、天界の扉がバーンッ!と勢いよく蹴り開けられた。
『情けないぞ貴様ら!! たかが一人の人間に泣かされるとは、神の面汚しめ!!』
眩い光と共に乗り込んできたのは、筋骨隆々で大剣を背負った【武神ヴァルド】。
その後ろには、妖艶な笑みを浮かべる【幻神ルキア】。
そしてさらにその後ろで、「ふわぁ……なんでボクまで呼ばれたの……」とパジャマ姿で枕を抱え、立ったままウトウトしている【怠惰神ターラ】の姿があった。
『見かねてやって来たぞ!』と武神ヴァルドが腕組みをする。
『あんなおままごと男、私が一瞬で恐怖のどん底に叩き落としてやる! いいか、ここからは我々「神々の威信」を懸けた【誰が一番ヒナタを慌てふためかせるかチキンレース】の開幕だ!!』
『フフッ、いいわね。負けた神様は、勝った神様に神力を全額奢るっていうルールでどうかしら?』
『……ボクはパス……勝手にやってて……グゥ』
やる気満々の武神と幻神の横で、怠惰神ターラはさっそく管理室のソファに潜り込んで二度寝を始めている。
ドラマスとアビスは「やめとけ……」「絶対に痛い目を見るぞ……」と警告したが、武神ヴァルドは鼻で笑った。
『フン! 貴様らの送った魔物は「手が空いている」から料理を押し付けられるのだ! ならば、両手が完全に塞がった【純粋な暴力の化身】をぶつければよい! 行け! 我が神域より生み出されし、百本の腕に百の呪武具を持つ修羅……【百腕の巨人】よ!!』
【場所:王都から徒歩2日ちょっとの「せせらぎの川辺」・農園】
ズシィィィィンッ!!
平和な農園のど真ん中に、凄まじい地響きと共に「それ」は降臨した。
身長10メートル。そして最大の特徴は、その胴体から気持ち悪いほど無数に生え揃った「100本の腕」である。さらにその手には、呪われた大剣、血塗られた斧、猛毒の槍など、100種類の凶悪な武器がガッチリと握られていた。
『オォォォォッ!! 我ハ武神ノ矛! 全テヲ微塵ニ斬リ刻ム者ナリ!!』
百本の腕がメチャクチャに振り回され、凄まじい暴風と剣閃が周囲の木々を薙ぎ払う。
「な、なんだあれは! 腕が多すぎて剣の軌道が全く読めんぞ!」
「あんなデタラメな攻撃、いくら団長でも防ぎきれません!」
ヴァレリアとエイルが顔を青ざめさせる。
手にお盆を持ったヒナタが、ログハウスから飛び出してきた。
「あーっ!! ストップ、ストップです!! 待ってください!!」
ヒナタが顔面を蒼白にして叫んだ。
(天界の武神ヴァルドが『見たか! ついに勇者が慌てふためいたぞ!! 私の勝ちだ!!』とガッツポーズをする)
「ちょっとお兄さん!! あなた、100本も腕があるのに、全部の手にそんな重たい武器をずっと握りっぱなしなんですか!!?」
『……ヌ?』
百腕の巨人の動きが、ピタリと止まる。
「人間の腕の重さは体重の約6%って言われてるのに、それが100本もあるなんて……普通に立ってるだけで、肩と首への負担が通常の人間の【50倍】ですよ!? しかも全部の手に武器を持ってるから、痒いところがあっても自分じゃ絶対に掻けないじゃないですか!!」
『……ハッ!?』
百腕の巨人の瞳孔が開いた。
実はこの巨人、生まれた時から「100個の武器を持って戦え」とインプットされていたため、自分の背中や鼻の頭が痒くても、武器が邪魔で一度も掻けたことがなかったのだ。さらに、100本の腕を支える首と肩の筋肉は、常に「鉛を流し込まれたような超・重度の肩こり」に苛まれていたのである。
「そんなガチガチの肩で暴れ回ったら、筋肉が断裂しちゃいますよ! みんなーっ! 緊急マッサージ大会です!!」
ヒナタの号令のもと、せせらぎの川辺に集う「手先の器用な化け物オールスターズ」が一斉に動いた。
「よし、俺様の触手の出番だな! 【古きもの】式・五本触手同時指圧!」
『ピガガ!(我々【ミ=ゴ】ノ、精密外科手術用ハサミデ、100本ノ腕ノ爪ヲ全テ綺麗ニ切ッテヤロウ!)』
「ブモォ! 凝り固まった肩には、俺様とアダムの超パワー揉みほぐしだぜ!」
エルダー・シングの触手が巨人の肩甲骨の隙間にズブズブと入り込み、ミ=ゴたちが飛び回りながら巨人の伸び放題だった爪をピカピカに切り揃え、デュラハンのローランが空いた手で巨人の背中に特大の温湿布をバンバンと貼っていく。
そしてヒナタ自身も、ハシゴに登って巨人の首の付け根に「極上のアロマオイル」を塗り込み、ゴリゴリとリンパを流していった。
『オ、オォォ……? ナ、ナンダコレハ……?』
百本の腕から、チャリン、ガラン……と、呪われた武器が次々と地面に滑り落ちていく。
『アァァァ……! カタガ……100本ノ腕ノ重ミガ……消エテイク……! 痒カッタ背中ノド真ン中ニモ、手ガ届ク……!! ナントイウ軽サ……ナントイウ極楽カ……!!』
百腕の巨人は、もはや100本の腕をダラーンと脱力させ、口から魂を半分出しながら、農園のど真ん中で「へにゃあっ」と幸せそうに座り込んでしまった。
「よし、これで首も肩もスッキリですね! あ、お兄さん! その100本の腕があれば、これ、すごく得意なんじゃないですか?」
ヒナタが満面の笑みで差し出したのは、大量の「軍手」と「カゴ」だった。
「ちょうど今から、秋の『ジャガイモの大収穫』をしようと思ってたんです。お兄さんの100本の腕で一気に掘り起こしてくれたら、1日かかる作業がたったの5分で終わっちゃいますよ!」
『オォォォッ!! マカセロ!! コノ軽クナッタ100本ノ腕、全テジャガイモ掘リニ捧ゲヨウゾォォォッ!!』
数分後。
そこには、時速300キロの猛スピードで「土を掘る」「芋を洗う」「カゴに入れる」「トラックに積む」という全工程を、100本の腕で同時に完璧な連携でこなしていく、究極の全自動農業マシーンと化した巨人の姿があった。
「すげえ! 百腕のおっさん、一瞬で畑が綺麗になっちまったぜ!」
「うむ、これほど農作業に特化した才能があったとはな!」
魔王やゴズたちが、巨人の圧倒的な作業効率にスタンディングオベーションを送っている。
【場所:天界・管理室】
『なんで俺の百腕の修羅が、軍手はめてジャガイモの仕分け作業してんだァァァァッ!!』
武神ヴァルドが、先ほどまでの威勢はどこへやら、大剣を放り投げて床にうつ伏せになり、拳で床をバンバンと叩いて号泣した。
『100種類の武器を持つ殺戮兵器だぞ!? なんで「腕が100本もあるから肩こりが50倍ですね!」なんていう理学療法士みたいな理屈でマッサージされて、究極の農作業マルチタスカーになってんだよォォォッ!!』
その後ろでは、ドラマスとアビスが「あーあ、言わんこっちゃない」「だからアレは規格外なんだって」と、すっかり悟りを開いた顔でお茶を飲んでいた。
『フフッ、ヴァルドの負けね。ダサいわぁ』
幻神ルキアが、扇子で口元を隠しながら妖しく笑う。
『純粋な暴力なんて通じるわけないのよ。人間の最も脆い部分は「精神」……。次はこの私が、絶対に逃れられない「精神崩壊の幻術」をあの勇者にかけてあげるわ……!』
ルキアが意気揚々と次の刺客の準備を始める中、ソファの上では、怠惰神ターラが「むにゃ……ジャガイモ……美味しそう……」と寝言を言いながら、鼻提灯を膨らませている。
この「勝負事に全く興味のない神様」が、後にヒナタにとって【最大の強敵】となることを、今はまだ誰も知る由もなかった。
(第219話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
皆様からの応援が、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!




