■ 第213話:湯上がりの大宴会! ……えっ、血みどろの殺し合いじゃなくてカラオケ大会ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
『フ、フフフ……。温泉で背中を流されたくらいで、私が絶望するとでも思ったか!』
激動の神・ドラマスは、充血した目でモニターを睨みつけ、震える指でコンソールを指差した。
『温泉旅館の真の恐ろしさは、湯上がりの「大宴会」にあるのだ! 奴らは今、古竜イグニスが秘蔵していた幻の銘酒「竜殺しの火酒」の樽を開けた! この酒は、一口飲めば理性を消し飛ばし、魔物たちの心の奥底に眠る「凶暴な闘争本能」を100%引き出すという劇薬だ!!』
地球の神様は、座椅子でくつろぎながらお茶をすすっている。
『へえ。じゃあ、今度こそ血に飢えたバケモノたちの本性が爆発するってわけだ』
『いかにもォォォッ!! 魔王、吸血鬼、人狼、そして古竜! 酔いが回った瞬間、奴らは些細なことでイチャモンをつけ合い、大広間を血の海に変える凄惨な殺し合い(デスゲーム)を始めるのだ! これでついに、あのふざけた慰安旅行もバッドエンドを迎えるわァァァッ!!』
【場所:竜の渓谷温泉・特設の大広間】
「カンパーーーイ!!」
ドワァァァァッ!! と、鼓膜を揺るがすような大歓声が大広間に響き渡った。
ヒナタたちが半日かけて(アダムとゴズの超パワーで)丸太を組み上げて作った、100畳ほどある特大の宴会場。
そこには、ヒナタのお手製である「超特大サイズの浴衣」を着流した魔王や怪物たちが、ズラリと車座になって座っていた。
「くぅ〜っ!! 湯上がりの一杯は最高だねぇ!!」
「ブモォ! モルガナのおばちゃんが作ったこの『炎の激辛もつ鍋』、酒に合いすぎるぜ!」
魔王がジョッキを干し、人狼のガルムやミノタウロスのゴズが、鍋をつつきながらバクバクと肉を平らげている。
彼らが飲んでいるのは、古竜イグニスが持ち出してきた致死量のアルコール度数を誇る「竜殺しの火酒」。すでに何杯も空けており、全員の顔が真っ赤に茹で上がっていた。
(天界のドラマスが『よし、完全に酔っ払ったぞ! さあ、本能のままに殺し合えェェッ!!』と叫ぶ)
しかし、彼らの口から飛び出したのは、殺意でも暴言でもなかった。
「……ううっ、ヒック! 俺は、俺はなぁ……!!」
突如、人狼のガルムがジョッキをドンッと床に置き、大粒の涙をポロポロと流し始めた。
「俺は、満月の夜になるたびに理性を失って、みんなから恐れられて……ずっと独りぼっちだったんだよォォ……! なのに、ヒナタの奴……俺の毛並みをブラッシングして、『いい子ですね』って……うわああぁぁんッ!!」
「ガルムゥ……! 分かる、分かるぞその気持ち!!」
隣に座っていた吸血鬼アルカードが、ガルムの肩を抱いて一緒に泣き始めた。
「私もだ……! 日光がダメだからって、いつも暗いお城に引きこもって……日傘さして海に行きたいなんて、誰にも言えなかった……! ヒナタ殿のおかげで、今年の夏はビーチデビューできそうなんだ……!! ウッ、ヒック……!!」
大広間のあちこちで、血みどろの殺し合い……ではなく、アルコールによって『日頃のストレスと孤独感』のタガが外れた魔物たちの、「涙の愚痴り合い&ヒナタへの感謝祭」が始まっていた。
「あはは、アルカードさんもガルムさんも、すっかり酔っ払ってますね〜。はい、お水飲んでくださいね」
「ヒナタァァァッ……! お前ってやつはァァ……!」
ヒナタがお冷を注いで回るたびに、恐ろしい化け物たちが次々とすがりついて号泣する。
「おーい! 湿っぽい話はそこまでにしようぜ! せっかくの宴会なんだ、アレをやろう、アレを!」
すっかり上機嫌の魔王が、広間のステージ(切り株)に飛び乗り、魔法の拡声器(エコー機能付きのマイク魔導具)を握りしめた。
「おっと、宴会といえば『隠し芸』と『カラオケ』だな! まずはトップバッター、デュラハンのローラン君! お願いするよ!」
「うむ! 任せておけ!!」
浴衣姿の首なし騎士ローランがステージに上がり、自分の「生首」を両手で高く掲げた。
「ゆくぞ! 究極の自立機動・生首ジャグリング!!」
ローランが自分の首をポンッと空中に放り投げると、生首が自ら空中で「ヨッ! ハッ!」と掛け声を上げながら、りんごやミカンと一緒に見事なジャグリングの軌道を描き始めた。
「「「ウオオォォォォッ!! すげええぇぇッ!!」」」
「ローランの旦那、大爆笑だぜ!!」
大広間がドッと沸く。
人類最強の騎士であるヴァレリアと賢者エイルまでもが、完全に出来上がった顔でタンバリンとマラカスをシャンシャンと鳴らして盛り上げている。
「さあさあ、次は歌だ! ここの管理人、古竜イグニス殿! ぜひ一曲頼む!」
『オ、オォォ……! 我が歌ってよいのか!? ならば、数百年ぶりに喉を震わせようぞ!!』
ドスシン! と、広間の床を揺らして、超巨大な古竜イグニスがステージに上がった。
その小さな前足には、ヒナタが作ってくれた特大の「温泉タオル」が握り締められている。
『〜〜〜♪♪(※超絶に渋くて重低音の効いた、昭和のド演歌のメロディ)』
「ウオォォ……! イグニスのオヤッサン、シブイ……! 泣ケルゼ……!」
「アダムの旦那が号泣してるぞ! 誰かハンカチを!」
古竜イグニスが、何百年も一人で温泉を管理してきた孤独と、今日初めて背中を流してもらった感動を込めて、魂の演歌を熱唱する。
そのあまりのコブシの効きっぷりと美声に、魔女モルガナもミイラ男ラムセスも、肩を組んで左右に揺れながら涙を流して聞き入っていた。
「はい皆さん、いっぱい歌って暑くなったでしょうから、デザートですよ〜!」
そこへ、ヒナタとエイルが、氷魔法でキンキンに冷やした「超特大・竜の渓谷フルーツパフェ」を台車に乗せて運んできた。
「「「ウオオオォォォォッ!! パフェだァァァッ!!」」」
「ヒナタ最高!! 慰安旅行バンザーーーイ!!」
魔王も古竜もアンデッドも、全員が肩を組み、フルーツパフェを囲んでマイムマイムを踊り始めた。
殺意や悪意など1ミリも存在しない。
そこにあるのは、ただひたすらに平和で、涙もろくて、楽しくて仕方がない「オジサンたちの最高の社員旅行」の光景であった。
【場所:天界・管理室】
『なんで古竜が、マイク握ってコブシを効かせた演歌を熱唱してるんだァァァァッ!!』
激動神ドラマスは、もはやお決まりとなったスタイルで、床に顔を擦り付けて号泣していた。
『闘争本能はどうした!! なんで「ずっと独りぼっちで寂しかったんだよォ」って酔い潰れて泣き上戸になってるんだよォォォッ!! しかもデュラハン、てめぇ自分の生首でジャグリングして宴会のウケを狙うなァァァッ!!』
ソファの上では、地球の神様が腹を抱え、涙を流して笑い転げている。
『ひぃっ、ゲホッ……あーっはっはっは!! 傑作だ、傑作すぎるよドラマス君!! どんだけ恐ろしいバケモノも、お酒が入ったらただの「寂しがり屋の酔っ払い」と「宴会部長」になっちゃうんだねぇ! ほら、人類最強の剣聖が、魔王の歌に合わせてタンバリン叩いてるぞ!』
『やめろォォォォッ!! 私のダークファンタジーが、ただの「中小企業のドタバタ社員旅行」に成り下がってしまったわァァァァッ!!』
神の嘆きをBGMに、竜の渓谷の夜は更けていく。
ヒナタの「おもてなし」によって完全に毒を抜かれた最強の怪物たちは、この日、種族や因縁の壁を完全に超え、一生モノの「絆」を深め合うのであった。
(第213話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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