■ 第211話:恐怖の宿場町襲撃! ……えっ、超優良な観光客の爆買いですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
『フ、フフフ……。国境の砦では、たまたま兵士たちが気絶したから平和に通り抜けられただけだ……!』
激動の神・ドラマスは、充血した目でモニターを睨みつけながら、必死に自分を言い聞かせていた。
『だが次はそうはいかんぞ! ヒナタ一行の向かう先には、多くの商人と旅人が集まる活気ある宿場町「カッセ」があるのだ! あんな魔王軍フルセットのような集団が街に入れば、今度こそ大パニックと暴動が起き、勇者の平和な旅行は悲鳴と逃走劇によって崩壊するはずだァァァッ!!』
ソファの上の地球の神様は、もはや何も言わず、楽しそうにポップコーンを頬張っている。
【場所:街道最大の宿場町「カッセ」】
「ひぃぃぃぃッ!! ま、魔王だァァァァッ!!」
「化け物の大群が攻めてきたぞ!! 街が滅ぼされる!! みんな逃げろォォォッ!!」
宿場町カッセは、未曾有のパニックに陥っていた。
遠くの街道から、文字通り「空を暗雲で覆い隠すほどの絶望のオーラ」を纏った軍団が、のんびりとこちらへ歩いてくるのが見えたからだ。
商人たちは悲鳴を上げて商品を放り出し、住民たちは家の中に逃げ込んで雨戸を固く閉ざした。
街の自警団も武器を構えながらガタガタと震え、誰一人として一歩も前に出ることができない。
「……終わった。俺たちの街は、今日、魔王軍の餌食になるんだ……」
自警団長が絶望の涙を流し、目を閉じた、その時。
「わあーっ! 見てください魔王さん! お店がいっぱい並んでますよ!」
「おお、活気のあるいい街だねぇ! まさに道中の観光スポットって感じだ!」
死の軍団の先頭から、パーカー姿の青年と、アロハシャツを着た魔王の、やけにウキウキした明るい声が聞こえてきた。
「あ、名物の『カッセ饅頭』だって! すっごく美味しそう! おやつに買っていいですか?」
「もちろん! 慰安旅行の資金なら、私が魔界の国庫からたっぷり持ってきているからね。おーい、店主! この美味しそうな饅頭を、そこにあるだけ全部もらえるかな!」
魔王が気さくに声をかけたのは、雨戸を閉め忘れてカウンターの下でガクガク震えていた和菓子屋の店主だった。
「ひっ、ひぃぃ……! 命だけは、命だけはご勘弁を……!」
「ん? なにを怯えているんだい。ほら、お代はこれで足りるかな?」
チャリン、とカウンターに置かれたのは、王国の金貨よりも遥かに純度が高く、分厚く輝く「魔界の特大純金貨」だった。
その圧倒的な黄金の輝きに、震えていた店主の目が、現金なほどにクワッと見開かれた。
「じゅ、純金貨……!? こ、これ一枚で、うちの店が3軒は建ちますぜ!?」
「釣りはいらないよ。みんなで食べるからね! ゴズ君、運んでおくれ」
「ブモォ!(おう! お饅頭ゲットだぜ!)」
そのやり取りを見ていた周囲の商人たちの目に、明らかな「変化」が訪れた。
世界を滅ぼす魔王軍……ではなく、「金払いが異常に良い、信じられないほどの超・大富豪の団体客」に見え始めたのである。
「ま、魔王様ァァァッ!! こちらの『高級日傘』はいかがですか!? 吸血鬼のお兄さんの白いお肌を守るのに最適ですぞ!!」
「むっ、ほう。アルカードよ、この傘はなかなかデザインが良いぞ」
「本当だ。このUVカットの布地、私が今使っているものより上品だな。店主、この傘を色違いで5本もらおう」
吸血鬼のアルカードが優雅に純金貨を弾き飛ばすと、傘屋の親父が「毎度ありィィィッ!!」と歓喜の悲鳴を上げた。
「こちらのハーブ・スパイス屋も見ていってください! 魔女様のお眼鏡にかなう珍しい毒草……もとい、香辛料が揃っております!」
「おや、この乾燥トカゲのしっぽは、カレーの隠し味にいい出汁が出そうだねェ。ヒナタ、これ買っていいかい?」
「いいですねモルガナさん! 今夜のカレーが楽しみです!」
「ミ、ミイラ男の旦那! うちの最高級のシルク布と保湿クリームも!!」
「首なし騎士の旦那! その抱っこ紐にピッタリの、ふかふかの首用クッションはいかがですか!!」
「ウオォ! アダム、コノ大キイ麦ワラ帽子、ホシイ!」
宿場町の商人たちの「恐怖」は、あっという間に「商魂(欲望)」によって完全に上書きされた。
パニックで逃げ惑っていたはずの街は、わずか十数分の間に「魔王軍ご一行様」を大歓迎する、活気に満ちた観光市場へと変貌を遂げてしまったのだ。
「す、すごい経済効果だ……!」
自警団長は、剣を捨ててお饅頭を頬張りながら、感動の涙を流していた。
「たった一つの軍団が通り過ぎるだけで、この街の数年分の売上が叩き出されている……! 魔王軍、万歳!! 慰安旅行、万歳!!」
「あはは、みんなお土産いっぱい買えてよかったですね!」
ヒナタは両手に買い食いの串焼きを持ちながら、満足そうに笑っている。
その背後では、ゴズとアダムが商人たちから買った大量の荷物を山のように抱え、デュラハンのローランも自由な両手に名産品の袋をいっぱいぶら下げていた。
「さあ皆さん、お腹も膨れたし、竜の渓谷に向けて出発しましょう!」
「おおーっ!」
ヒナタの号令に合わせて、世界最強の慰安旅行ご一行は、宿場町の人々から「また来てくださいねー!」「魔王様、道中お気をつけてー!」と、割れんばかりの大歓声と拍手で見送られながら、再びのんびりと街道を歩き出すのであった。
【場所:天界・管理室】
『なんで魔王が観光地で爆買いして、街の経済をメチャクチャ回してるんだァァァァッ!!』
激動神ドラマスの魂の絶叫が、天界のモニター室に空しく響き渡った。
『恐怖のパニックはどうした!? なんで「お代はこれで足りるかな?」って魔界の純金貨をばら撒いて、商人たちから神様みたいに拝まれてるんだよォォォッ!!』
地球の神様は、コーラを吹き出しそうになるのをこらえながら、バンバンと机を叩いて笑っていた。
『ひぃっ……あーっはっはっは!! いやぁ、商人の「儲けたい」って欲望は、世界滅亡の恐怖すらも凌駕しちゃうんだねぇ! 誰も魔王を倒そうとしないどころか、最高のお客様としておもてなししちゃったよ!』
『やめろォォォォッ!! これではただの、超大金持ちの豪遊ツアーではないかァァァァッ!!』
魔王の財力と、ヒナタの平和なピクニック精神が合わさった時、世界に争いなど起こるはずがなかった。
かくして宿場町を平和裏に(経済的に)制圧した一行は、いよいよ目的地である「竜の渓谷」の入り口へと足を踏み入れるのであった。
(第211話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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