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■ 第210話:世界最強の慰安旅行、出発! ……えっ、世界滅亡の進軍じゃないんですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

『ウ、ウワアアアァァァァッ!! な、なんだこの異常な魔力反応はァァァッ!!』


激動の神・ドラマスの絶叫とともに、天界の管理室にけたたましい緊急アラームが鳴り響いた。

真っ赤に明滅するモニターには、【世界崩壊レベル・災害級(MAX)】の文字が踊っている。

ソファでゲーム雑誌を読んでいた地球の神様が、のんびりと顔を上げた。


『おや、どうしたんだいドラマス君? 君、もう手札(刺客)は残ってないって言ってたじゃないか』

『私ではない!! あのふざけたキャンプ地の連中だ!! 今まで一歩も動かなかったあいつらが……ついに、大所帯で「移動」を開始しおったのだァァァッ!!』


モニターの広域マップには、魔王、アンデッド、西洋妖怪、人類最強の騎士と賢者という、ファンタジー世界における「歩く絶望」の集合体が、一つの巨大なシンボルとなって街道を進み始めている光景が映し出されていた。


『くそっ! 魔王軍の総本山でもなく、帝国の本隊でもない! 世界最強の戦力が密集した「最悪の軍団」が、ついに世界征服に向けて動き出したぞォォォッ!!』


【場所:王都から続く街道・「せせらぎの川辺」跡地】

「はーい皆さん! 忘れ物はありませんね? おやつは300円までですよー!」


快晴の空の下、パーカー姿の勇者ヒナタが、手作りの「ツアーガイド用の小旗」を振りながら元気よく声を上げた。


「ワフッ!(おやつのお肉、ちゃんと持ったぜ!)」

「ウオォ! 丸太小屋、戸締マリ、カンペキ!」

「シュルルルル……(日焼け止め、塗りました……)」


巨大なリュックを背負った人狼のガルム、荷車を引く人造人間のアダム、そしてサングラスをかけたメデューサが元気よく返事をする。


「さてヒナタ君、今回の目的地はどこだったかな?」

「はい、魔王さん! 今日からみんなで『竜の渓谷温泉』へ、二泊三日の慰安旅行です! 毎日畑仕事や開拓でお疲れですからね、広いお湯に浸かって、美味しい温泉卵を食べましょう!」


魔王はアロハシャツのような派手な開襟シャツを着て「いいねぇ!」と笑い、死霊術師のリッチは首に手ぬぐいを巻き、吸血鬼のアルカードはUVカットの巨大パラソルを差し、デュラハンのローランは抱っこ紐に生首を入れて浮き輪を持っている。

そう、彼らにとってはただの「慰安旅行」である。

しかし。


「……おい、エイル。私たちの周りだけ、とんでもない『瘴気』と『覇気』が渦巻いているのだが」

「ええ。魔王の魔力、死霊術師の死のオーラ、吸血鬼と魔女の呪力……。これらが一点に密集しているせいで、ただ歩いているだけなのに『空が暗雲に覆われ、大地が震える』という絶望の行軍エフェクトが発生してしまっていますね」


ヴァレリアとエイルが冷や汗を流しながら周囲を見渡す。


ヒナタ一行が進む道は、彼らから漏れ出る強大すぎるプレッシャーのせいで、太陽が雲に隠れ、周囲の森のモンスターたちが泡を吹いて気絶し、川の魚が恐怖で水底にへばりつくという、まさに「魔王軍の最終進軍」そのものの光景となっていた。


「さあ皆さん、ピクニック気分で楽しく歩きましょうね〜!」


ヒナタは全く気付かずに、小旗を振って先頭を歩いていく。


【場所:街道の途中・ガルディア国境砦】

「て、敵襲ゥゥゥッ!!」


街道の途中にある中立国の国境砦で、見張り台の兵士が悲鳴を上げて腰を抜かした。


「ど、どうした!? どこの軍勢だ!」


砦の守備隊長が慌てて望遠鏡を覗き込む。

そして、そのレンズ越しに見えた光景に、隊長の眼球が飛び出さんばかりに見開かれた。


「ま、ま、ま……魔王……!? なぜ魔王が先陣を切って歩いている!? その隣には、おとぎ話の死霊術師! 後ろには暗黒大陸の化け物ども! ぎゃあああッ、王国の剣聖と賢者まで、洗脳されて連行されているぞォォォッ!!」

「た、隊長! 奴らの足音だけで、砦の城壁がヒビ割れています!!」


絶望。完全なる絶望である。

数万の軍隊ですら勝てない世界最強の化け物たちが、一丸となって自分たちの砦に向かって歩いてくるのだ。


「お、終わった……。世界は今日、終わるのだ……!」


守備隊長はガクッと膝から崩れ落ち、砦の兵士たちも全員、戦う前から恐怖で泡を吹いて気絶してしまった。


「あれ? 砦の皆さーん、こんにちはー!」


そこへ、のんびりとした足取りでヒナタ一行が到着した。


「ブモォ? なんだこいつら、全員地面にひっくり返って寝てるぞ?」


荷物持ちのゴズが首を傾げる。

ヒナタは気絶している兵士たちを見て、ポンッと手を打った。


「なるほど! きっと夜勤明けで、疲れ果ててお昼寝中なんですね! 門番のお仕事って立ちっぱなしでハードですからねぇ」


ヒナタは静かに「シーッ」と指を立てて、仲間たちに静粛を促した。


「みんな、起こさないように静かに通りましょう。あ、そうだ。モルガナさん、お弁当少し余ってますよね?」

「ヒッヒッヒ、あるよ。特製スパイスをまぶしたタンドリーチキンサンドがね」


ヒナタは、気絶している守備隊長の枕元に、モルガナ特製の美味しいお弁当と、「夜勤お疲れ様です! ちゃんと食べてスタミナつけてくださいね」と書いた可愛らしい手紙をそっと置いてあげた。


「よし! じゃあお邪魔しました〜!」


ヒナタ一行は、完全に無力化(気絶)した砦の門を、フリーパスで悠々と通り抜けていくのだった。


【場所:天界・管理室】

『なんで国境の砦が、一発の矢も射られずに陥落してるんだァァァァッ!!』


激動神ドラマスが、モニターに向かって血の涙を流して絶叫した。


『砦の連中は夜勤明けじゃない! 貴様らの絶望的なオーラに当てられて、ショック死寸前で気絶しただけだろうが!! なんで「お疲れ様です」ってタンドリーチキンを差し入れして、そのまま平和に国境を越えてるんだよォォォッ!!』


ソファの上では、地球の神様が腹を抱えて笑い転げていた。


『あーっはっはっは! こりゃあ傑作だ! ヒナタ君たちはただ「温泉旅行」に行きたいだけなのに、周りの国々は「世界を滅ぼす魔の軍団の進撃」だと思って勝手にバタバタ倒れていく! 究極のすれ違いコントじゃないか!』

『笑い事ではない!! あいつらがこのまま無自覚に進軍を続ければ、大陸中の国家が恐怖で自主降伏(パニック)してしまうわァァァッ!! 早く……早く温泉に着いてくれェェェッ!!』


神の悲鳴を置き去りにして、世界最強の慰安旅行ご一行は、のんびりと(周囲に壊滅的な恐怖を撒き散らしながら)竜の渓谷へと向かって歩みを進めるのであった。

(第210話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援(トラフィック)が、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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