■第16話:魔獣の大群が包囲! ……わあ、すごい「歓迎パレード」ですね!
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
本編をお楽しみください
【場所:魔王城・玉座の間】
「遅い……!!」
魔王の怒号が、暗黒の城を揺るがした。
「勇者召喚から数ヶ月……。なぜ奴らはまだ『海』にいるのだ!?」
「普通ならとっくに城に乗り込んでくるレベル(レベル50前後)の時間だぞ!?」
側近の魔族が震えながら報告する。
「は、はい……。報告によりますと、無人島で『秘密基地作り』に没頭したり、海上で『ティーパーティー』を開催していたとの情報が……」
「なめとんのかァァァッ!!」
魔王が玉座の肘掛けを粉砕した。
「いいだろう。来ないなら、海の藻屑にしてくれる!」
「全海軍を出せ! 1万の魔獣で船を取り囲み、木っ端微塵にするのだ!」
【場所:魔の海域・船上】
ザザザザザッ……!!
水平線が黒く染まった。
魚人族の軍勢、巨大な海蛇、鎧をまとった古代魚、空を飛ぶ怪鳥。
その数、1万以上。
「ヒィィィッ!! 出たァァァッ!!」
宰相セバスチャンが絶叫する。
「魔王軍の主力艦隊だ! 終わった……! さすがにこの数は無理だ!」
船を取り囲む殺気。逃げ場はない。
魔獣の将軍(巨大なサメ男)が、船首の前に躍り出て叫んだ。
『ガハハハ! 愚かな人間どもよ! 我が名は魔海将軍シャーク!』
『貴様らの船旅もここまでだ! 恐怖に歪む顔を見せろォォォッ!!』
絶体絶命のピンチ。
ヴァレリアが剣を抜き、エイルが杖を構える。
「チッ……数が多いな。ヒナタ殿を守り切れるか……?」
しかし。
ヒナタは、デッキの最前列で身を乗り出し、パチパチと拍手をした。
「……す、すごい」
『あ?』
シャーク将軍が動きを止める。
「見てください皆さん! 『イルカショー』ですよ!」
ヒナタが目を輝かせて叫んだ。
「い、イルカ……?」
セバスチャンが固まる。
「だって見てください! こんなに綺麗に並んで! 息ぴったりのフォーメーション!」
ヒナタは、殺気立った包囲網を「シンクロナイズド・スイミング」だと勘違いしていた。
「魔王さんって、エンターテイナーだなぁ! こんなサプライズを用意してくれてたなんて!」
『な、何を言っている……? 我々は貴様らを殺しに……』
「あ、今のジャンプ、10点満点です!」
ヒナタが、飛び跳ねた海蛇(威嚇攻撃)に向かって、手元のスケッチブックに書いた『10』の数字を掲げた。
『は?』
「こっちの魚人さんの槍さばきもキレキレですねぇ! 練習したんですか?」
「ブラボー! アンコール!」
ヒナタは満面の笑みで、ポケットから出した「クッキー」を投げた。
「はい、ご褒美の餌ですよ~!」
パクッ。
最前列の魚人が、反射的にクッキーをキャッチしてしまった。
『おいバカ! 何食ってんだ!』
将軍が怒鳴る。
『い、いえ将軍! これ……バターが効いてて美味いです!』
その瞬間、空気が変わった。
殺気立っていた1万の魔獣たちが、ざわめき始める。
『え、餌? 攻撃じゃなくて?』
『ていうか、あの人間……俺たちを見て笑ってやがるぞ』
『すげぇ余裕だ……。もしかして、俺たちが「踊らされてる」のか?』
そして、決定打を放ったのはゴズだった。
「ブモッ! ブモモッ!(おいお前ら、腹減ってんだろ?)」
ゴズが、船の食料庫から大量の「干し肉」を持ってきた。
「ブモォ!(勇者様の奢りだ! 食え!)」
ドサササッ!
高級干し肉の雨が降る。
魔王軍の兵士たちは、過酷な軍務で腹を空かせていた。
『に、肉だァァァッ!』
『いただきまーす!』
「こら待て! 隊列を乱すな! ……ぐぬっ、美味い!」
将軍シャークも、飛んできた骨付き肉の誘惑には勝てなかった。
【数分後・海上】
そこは、戦場ではなく「ふれあい動物園」と化していた。
「よしよし、いい子だねぇ。背中撫でてあげる」
ヒナタは、巨大なサメ(将軍)の鼻先を撫でていた。
『くぅ~ん……(そこ、気持ちいい……)』
シャーク将軍は、完全に手懐けられていた。
ヒナタの「動物に好かれるオーラ」と「ゴッドハンド(マッサージ)」の前では、海の暴君もただの大型犬だ。
「ヴァレリアさん見てください! サメ肌ってザラザラしてて面白い!」
「ふむ。剣の柄に使えそうだな」
「エイルさん、記念撮影お願いします!」
「はいはい。……まさか、魔王軍艦隊をバックにピースサインをする日が来るとは」
パシャッ。
1万の魔獣たちが、カメラに向かってポーズをとる。
「ありがとうみんなー! 楽しかったよー!」
ヒナタが手を振ると、魔獣たちは一斉に海面を跳ねて応えた。
『勇者様バンザイ!』
『また肉くれよなー!』
『道中気をつけてー!』
船は、魔獣たちが作った「アーチ」の下をくぐり抜け、悠々と進んでいく。
それはまさに、VIP待遇の「パレード」そのものだった。
【場所:魔王城・玉座の間】
「…………」
魔王は、水晶玉に映る映像を見て、無言で通信を切った。
「……解散」
「へ?」
「もういい。海軍は解散だ」
魔王は玉座に深く沈み込んだ。
「奴らは……戦う気がない。戦う気がない奴を殺そうとする我々が、なんだか『空気の読めない野蛮人』に見えてくる……」
「これが……勇者の精神攻撃か……!」
恐るべき精神汚染。
魔王軍最強の艦隊は、「餌付け」と「ナデナデ」によって、一兵も損なうことなく無力化された。
【場所:天界・管理室】
『アハハハハハハ!』
地球の神様は、腹を抱えて笑っていた。
『おいドラマス! 見たか今の! 「10点満点」だってよ!』
対する異世界の神ドラマスは、もはや反応すらなかった。
彼は部屋の隅で膝を抱え、ブツブツと呟いていた。
『……もう陸だ。陸にさえ着けば……』
『次は乾燥地帯……。水はない……。魚もいない……』
『今度こそ……今度こそ……』
神様の祈りは届くのか。
しかし、ヒナタのリュックには、魔海将軍から貰った「竜宮城への招待状(または海底の秘宝)」が詰め込まれていた。
(第16話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
皆様からの応援が、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!




