■第140話:廃屋の叫び声・うわん! ……えっ、魂を抜く前に「結論ファーストの欠如」と「不法占拠」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……ん? 海坊主は以前、第103話あたりで成敗した記録が残っているぞ?」
神ドラマスは、過去のクラウドデータ(議事録)を検索し、自分の記憶のバグに気づいて冷や汗を流した。
「いかんいかん、情報過多で私の脳内ストレージも断片化しているようだな。よし、気を取り直して別の『う』の妖怪を召喚するぞ!」
神ドラマスがエンターキーをターン!と叩くと、モニターの標的が切り替わった。
「『う』から始まる怪異、うわんだ! 古い廃屋に潜み、人が通りかかると突然『うわん!』と大音量で叫ぶ! 叫び返さなければ命(魂)を奪われるという、理不尽極まりない初見殺しのノイズ妖怪! このコミュニケーション不能の叫び声に、ヒナタのロジックはどう立ち向かうのだ!?」
【場所:人間界・夜の朽ち果てた廃屋】
「う〜ん、この空き家はかなり老朽化が進んでいますねぇ。倒壊の危険があります」
ヒナタは、四次元リュックを背負い、ギシギシと鳴る床板を避けながら廃屋の廊下を歩いていた。
「ゆ、勇者殿……! なんだかこの家、とても嫌な気配がしますぞ……!」
宰相セバスチャンが、杖を構えながら周囲を警戒した。
その時である。
障子の陰から、黒い影のようなバケモノがヌゥッと顔を出し、鼓膜が破れんばかりの凄まじい大音量で叫んだ。
『ウワァァァンッッ!!!』
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 突然の大声ですぞォォッ!!」
セバスチャンが悲鳴を上げてその場に尻餅をつく。
『ギャハハハッ!! 驚いたか!! 俺はうわん!! 俺の声に驚いて声を出せなかったお前の魂、もらったァァッ!!』
うわんが、セバスチャンの魂を吸い取ろうと大きく息を吸い込んだ、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、廃屋の空気を完全にビジネスライクに凍りつかせる「外資系コンサルタント&不動産管理士」が響き渡った。
『……エッ?』
うわんは、息を吸い込んだポーズのままピタリと固まった。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相でうわんをビシッと指差した。
「あなた!! いきなり『うわん!』なんて、主語も述語も結論もない擬音だけを大声で叫ぶなんて、ビジネス・コミュニケーションとして最悪です!! 相手に何を伝えたいのか『5W1H』が完全に欠落しているし、『PREP法(結論・理由・具体例・結論の順で話す手法)』の基本が全くできていません!! そんなノイズ(無意味な音声データ)を突然ぶつけられたら、相手はパニックになる(エラーを吐く)に決まってるでしょうが!!」
『ピ、PREP法……!? 5W1Hの欠落……!?』
うわんは、自慢の恐怖の叫び声を「ただの結論がない三流のコミュニケーション・エラー」として外資系コンサルのロジックで詰められ、大きな口をワナワナと震わせた。
「大体、その潜んでいる場所!!」
ヒナタは今度、ボロボロに朽ち果てた廃屋の柱を指差した。
「所有者の許可も得ずにこんな倒壊寸前の危険な空き家に住み着くなんて、完全な『不法占拠』です!! しかも床には錆びた釘が散乱していて、踏んだら『破傷風』に感染するリスクMAXですよ!! 安全衛生管理とコンプライアンスが完全に崩壊しています!!」
『ふ、不法占拠……!? 破傷風リスク……!? いや、俺は人を驚かす妖怪で……』
うわんは、自分の不気味なテリトリーを「ただの違法な危険家屋(衛生面最悪)」として全否定され、障子の陰でシュンと小さくなった。
「今日から、徹底的な『ロジカル・シンキング(論理的思考)の訓練』と『スマートなインターホン業務への移行』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「外資系コンサル直伝・ロジカルコミュニケーション入門(書籍)」「喉を労る、艶消しマット包装の高級はちみつボイスケアのど飴」、そして「ノイズキャンセリング機能付き・最新型スマートインターホンシステム」を取り出した。
「ゴズさん、うわんさんが逃げないように座らせて! ヴァレリアさん、そののど飴をうわんさんの口に放り込んで、叫びすぎた喉の炎症を抑えて!!」
「ブモォッ!(おう! 意味もなく大声出す奴は近所迷惑だからな、静かにしろ!)」
「ふむ。この喉の奥に的確に飴玉を射出する……暗器の投擲と同じだな」
『ナ、何ヲ……!? 俺ノ恐怖ノ叫ビガ……!』
「【究極のロジカル・トーク&シン・レセプション(受付)プログラム】です!!」
ヒナタたちの手により、のど飴を舐めさせられたうわんは、ヒナタの熱血指導(PREP法の叩き込み)を数時間にわたって受けることになった。
「いいですか! まずは『結論』から話す! その次に『理由』! 相手に的確に情報を伝えるのが、声の大きなあなたの本来の役割です!!」
『……っ!! こ、これだ!! ただ無意味に「うわん!」と叫ぶより、「いらっしゃいませ(結論)、ここは危険です(理由)」と論理的に伝えた方が、人間とのコミュニケーションが100倍スムーズに成立するじゃないか……!!』
うわんは、ロジカル・シンキングの美しさに心底感銘を受け、高級のど飴の潤いと共に深く頷いた。
数日後。
そこには、廃屋に潜んで意味不明な叫び声で通行人の魂を奪う迷惑妖怪の姿はなかった。
綺麗にリノベーションされた王都のコワーキングスペースの入り口で、艶消しマットのスタイリッシュなスマートインターホン越しに、「結論ファーストで的確な案内を行う、王都認定・超優秀なレセプショニスト(受付・案内係)」として、美しく通ったバリトンボイスを響かせる青年の姿があった。
『(ピンポーン)……お疲れ様です! 本日の会議室は3階B室です(結論)。なぜなら、A室は現在空調のメンテナンス中だからです(理由)。エレベーターをご利用ください(提案)!』
元・うわんは、一切のノイズもない完璧なPREP法で、利用客をスマートに案内していた。
「……ゆ、勇者殿。意味不明な叫び声の妖怪が……『5W1Hをマスターし、結論ファーストで案内をする超優秀なスマート受付係』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、うわんのあまりにも的確で聞き取りやすい案内に感動し、王国の受付システムも彼に監修してもらおうと名刺を差し出していた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、自分の手元にあった「結論の書かれていない冗長な報告書」を無言でシュレッダーにかけた。
『うわんが……「結論がないPREP法無視の叫び声」と指摘され、ロジカル・シンキングを叩き込まれた……』
『廃屋の恐怖は「破傷風リスクと不法占拠」と怒られ、スマートインターホン越しに的確な案内をする優秀な受付係になった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「初見殺しの叫び声妖怪」すら「ビジネス・コミュニケーションの欠如」として外資系コンサルのロジックで論破してしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「自分用のロジカル・ライティングの専門書」と「マット仕上げの高性能スマートインターホン」をポチり、自らの神殿での情報伝達も、すべて結論ファースト(PREP法)で統一することを固く誓うのだった。
(真・第140話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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