■第136話:膝の上の呪い・人面瘡(にんめんそう)! ……えっ、食べさせる前に「不正なサブプロセス」と「根本原因の特定(ルートコーズ分析)」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……カチッ。スマート街路灯の稼働テスト、オールグリーン。IoTシステムのエラーログもゼロだ。完璧な環境構築だな」
神ドラマスは、提灯お化けのエピソードから導入したスマート照明の下で、不具合の全くない神殿のタスク管理画面を見つめて深く頷いていた。
画面の中では、ヒナタたちが王都の郊外にある、大きな商家を訪ねているところだった。
「ほう! 『い段』の第5弾、『に』の刺客だな! その名は人面瘡!」
ドラマスは、光量調整のダイヤルを回しながら目を細めた。
「人間の膝や太ももに突如として現れ、まるで生きているかのように口を動かして『飯を寄越せ』と要求する恐るべき顔面腫瘍! 食べ物を与えれば大人しくなるが、宿主の栄養を吸い尽くしてやがて死に至らしめるという、寄生型の呪い! この理不尽な身体の乗っ取りに、ヒナタのロジックはどう立ち向かうのだ!?」
【場所:人間界・大商人の屋敷】
「う〜ん、立派なお屋敷ですが、なんだか家全体がどんよりと沈んでいますねぇ」
ヒナタは、四次元リュックを背負いながら、案内された豪華な寝室へと足を踏み入れた。
「おお……勇者様御一行……。どうか、どうか私をお救いくだされ……」
ベッドの上でゲッソリと痩せ細っていたのは、この屋敷の主である豪商だった。
彼が痛々しくめくった布団の下――その左膝には、赤黒く腫れ上がり、人間の「顔」の形をした巨大な腫瘍(人面瘡)がボコッと寄生していた。
『……メシダ……。肉ヲ食ワセロ……。酒ヲ飲マセロォォォ……!』
膝の人面瘡が、不気味に口をパクパクと動かして呻き声を上げる。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 膝に顔がついておりますぞォォッ!!」
宰相セバスチャンが悲鳴を上げ、杖を取り落とした。
「私が過去に恨みを買った者の呪いだそうです……。この顔が腹を空かせて暴れると、膝を砕かれるような激痛が走るのです……。ああ、誰か、この顔に早く肉を与えてくれ……!」
主人が震える手で、召使いに食事を持ってこさせようとした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、寝室の絶望感を完全にデバッグする「凄腕ソフトウェアテスター&皮膚外科学者」が響き渡った。
『……エッ?』
膝の人面瘡は、肉を要求する口を開けたままピタリと固まった。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で豪商と人面瘡を交互にビシッと指差した。
「あなた!! 膝の腫瘍が要求するままに食事を放り込むなんて、システム開発に例えるなら『メモリリーク(異常なリソース消費)を起こしている不正なサブプロセスに対して、ひたすらサーバーのメモリ(RAM)を増設して誤魔化している』のと同じですよ!! 対症療法ばかりで『根本原因』の特定を放棄するなんて、設計と運用が完全に破綻しています!!」
「ル、ルートコーズの特定……!? 不正なサブプロセス……!?」
豪商は、恐ろしい呪いを「ただのシステムのバグ放置」としてIT用語で詰められ、ポカンと口を開けた。
「大体、その顔の形をした悪質な寄生ロジック!!」
ヒナタは、膝の人面瘡をビシッと指差した。
「人間の顔の形に擬態して宿主の同情や恐怖を誘い、カロリーを不正に引き出そうとする『悪意のあるバックドア』です!! 宿主の血管から直接ブドウ糖を吸い上げているのに、さらに外部入力(口)からも直接カロリーを摂取しようとするなんて、構造上の論理性が全くありません!! このままリソースを食い潰させたら、システム全体(宿主の命)がクラッシュ(餓死)しますよ!! すぐにプロセスをキル(強制終了)しなさい!!」
『あ、悪意のあるバックドア……!? プロセスの強制終了……!? いや、俺は恐ろしい呪いの……』
人面瘡は、自らの恐怖の呪いを「論理性のないバグと不正アクセス」として凄腕テスターの視点から完膚なきまでに論破され、膝の上でワナワナと震えた。
「今日から、徹底的な『ルートコーズ(根本原因)の特定と切り離し』、そして『患部の完全なアイソレーション(隔離)プログラム』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「艶消しマット仕上げの、医療用・超強力ハイドロコロイド被覆材(特大サイズ)」「高濃度サリチル酸配合の角質軟化パッチ」、そして「患部の炎症レベルを監視する、非接触型・生体トラッキングセンサー」を取り出した。
「ゴズさん、ご主人様の足が動かないようにしっかりホールドして! ヴァレリアさん、このサリチル酸パッチを、腫瘍の口を完全に塞ぐようにミリ単位の精度で貼り付けて!!」
「ブモォッ!(おう! 宿主を食い物にする寄生虫は俺が許さねぇぜ! 動くなよ!)」
「ふむ。この悪辣な顔の呼吸孔を、寸分の狂いもなく完全に物理封鎖する……暗殺の毒封じと同じ手口だな」
『ナ、何ヲ……!? 俺ノ恐ロシイ呪イガ……!』
「【究極のバグの切り離し&ハイドロコロイド・シーリング(完全密閉)プログラム】です!!」
ヴァレリアの神速の動きにより、人面瘡のパックリと開いていた口は「高濃度サリチル酸パッチ」によって完璧に塞がれ、その上から艶消しマットの超強力なハイドロコロイド被覆材が、膝全体を覆うようにガッチリと貼り付けられた。
『ンンンッ……!?(く、口が開かない! 外部からのカロリー供給(不正アクセス)が完全に遮断された!?)』
「はい! そのまま一切の栄養を与えずにアイソレーション(隔離)します! サリチル酸が異常増殖した細胞の根本原因に直接作用し、ハイドロコロイドが患部の治癒力を最大限に引き出します!」
数日間のアイソレーション(隔離治療)の結果――。
外部からの栄養供給を絶たれ、テスターによる完璧なバグ修正(治療)を受けた人面瘡は、見る影もなくシュルシュルと縮んでいき、ただの「小さなタコ(角質)」のようなサイズにまで退化した。
『おおっ……!? 膝の激痛が……完全に消え去った! しかも、腫瘍が縮んだ跡に貼ってくれたこの生体トラッキングセンサーが、私の健康状態を24時間監視してくれている!』
豪商は、すっかり健康的な顔色を取り戻し、ベッドから勢いよく立ち上がった。
そこには、人の膝に寄生して命を啜る恐ろしい呪いの顔の姿はなかった。
縮んで大人しくなった細胞の上に艶消しマットのセンサーを被せられ、宿主の膝への負担や血糖値のスパイクを検知すると「ピピッ」と可愛らしい振動で警告を発する、「王都認定・ウェアラブル健康管理AI(元・人面瘡)」として、主人の健康維持にフルコミットする便利なデバイスの姿があった。
『ピピッ!(ご主人様、本日の歩数が不足しています! ルートコーズ分析に基づき、あと2000歩のウォーキングを推奨します!)』
元・人面瘡は、宿主のシステム(身体)を完璧にサポートする優秀なサブプロセスとして生まれ変わっていた。
「……ゆ、勇者殿。恐ろしい寄生型の呪いが……『ルートコーズを特定され、不正なバックドアを塞がれて便利な健康管理デバイス』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、全く不具合を起こさなくなった豪商の膝センサーに感心し、自分もこの完璧なデバッグ技術を学ぼうとメモを取っていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、神殿のシステムダッシュボードを静かに閉じた。
『人面瘡が……「ルートコーズの特定を放棄したメモリリーク」と指摘され、サリチル酸パッチで口を塞がれた……』
『呪いの寄生は「不正なバックドアからのカロリー摂取」と怒られ、完全隔離されて便利なウェアラブル健康管理デバイスになった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「肉体を乗っ取る恐ろしい呪い」すら「不正なサブプロセスと根本原因のバグ放置」として凄腕テスターの論理で完全にデバッグしてしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「高機能ハイドロコロイド被覆材」と「システム監査・バグトラッキングの専門書」をポチり、自らの神殿のシステムにも一切の異常なリソース消費を許さないことを固く誓うのだった。
(第136話・完)
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