■第128話:争い続ける舞首! ……えっ、噛み合いの前に「顎関節症」と「アンガーマネジメント」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……スゥ〜、ハァ〜。良質な睡眠用口閉じテープとマイナスイオン加湿器のおかげで、朝の目覚めが実に素晴らしいな」
神ドラマスは、歯黒べったりのエピソードから導入した快眠&鼻呼吸グッズをフル活用し、スッキリとした顔でモニターを見下ろしていた。
画面の中では、ヒナタたちが波の静かな入り江(海岸線)を散歩しているところだった。
「ほう! 五十音順あ段の第7弾、ついに『ま』の刺客の登場だな! その名は舞首!」
ドラマスは、加湿器のスイッチを微調整しながらニヤリと笑った。
「かつて醜い争いの末に互いを斬り合い、首だけになってもなお海上で噛み合い、炎を吐いてグルグルと舞い回る3つの生首! 胴体のない怪異であり、永久に終わらない殺意と執念の塊! このドロドロとした怨念の永久機関に、ヒナタのロジックはどう立ち向かうのだ!?」
【場所:人間界・静かな海岸の入り江】
「う〜ん、潮の香りが心地いいですねぇ。お散歩には最高のロケーションです!」
ヒナタは、四次元リュックを背負って砂浜を歩いていた。
「ゆ、勇者殿……! 前方の海面をご覧くだされ! 何かが凄まじい勢いで回転しておりますぞ……!」
宰相セバスチャンが、震える指で海を指差した。
ガチガチガチッ!! ゴォォォォォッ!!
沖合の海面から数メートル浮き上がった空中で、人間の男の形をした「3つの巨大な生首」が、互いの顔や耳を猛烈な勢いで噛みちぎり合いながら、炎を吐いて旋回していた。
「ひぃぃぃッ!! で、で、出たァァッ!! 首だけで喧嘩しておりますぞォォッ!!」
セバスチャンが悲鳴を上げて砂浜に倒れ込む。
『オラァァッ!! 江黒! お前のその顔が気に入らねぇんだよガブゥゥッ!!』
『黙れ小杉ッ!! 俺の耳を噛むんじゃねぇ! また市、お前も火を吐いてんじゃねぇガリガリッ!!』
『うるせぇぇぇッ!! 俺を仲間外れにするなァァァッ!!』
3つの生首は、血管を爆発させそうなほど顔を真っ赤にし、ガチガチと凄まじい音を立てて互いの歯と顎を打ち付け合っていた。
その衝撃で火の粉が散り、死闘が永遠に続くかと思われた、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、波の音も炎の爆発音も完全に掻き消す「歯科医&アンガーマネジメント講師」が海岸に響き渡った。
『……エッ?』
3つの生首は、互いに噛みついた状態(三つ巴)のまま、空中でピタリと回転を止めた。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと砂浜に置き、鬼の形相で3つの首の「カチカチに強張った顎」をビシッと指差した。
「あなたたち!! そんな強い力で24時間365日、互いに噛みつき合っていたら、噛み合わせの圧で歯のエナメル質がボロボロに砕けて、重度の『顎関節症』と『咬筋の異常発達』を起こすじゃないですか!! 顎を動かすたびに『ジャリジャリ』って関節の不快な擦れ音が鳴ってますよ!! 激痛と偏頭痛の原因です!!」
『が、顎関節症……!? エナメル質……!?』
小杉、江黒、また市の3人は、言われてみれば最近、相手を噛むたびに顎の付け根に激痛が走り、慢性的な頭痛に悩まされていたことを思い出し、噛みついたまま目を白黒させた。
「大体、その喧嘩の理由!!」
ヒナタは今度、空中に浮く3つの顔を交互に指差した。
「『顔が気に入らない』だの『仲間外れにされた』だの、小学生でももっとマシな話し合いをしますよ!! 自分の感情をコントロールできずに、怒りが湧いた瞬間に反射で噛みつくなんて、完全に『アンガーマネジメント』の欠如です!! 怒りのピークは【最初の6秒】なんですよ!! その6秒間をやり過ごす知恵もないから、いつまでも首だけのまま不健康に漂うことになるんです!!」
『あ、アンガーマネジメント……!? 最初の6秒……!? いや、俺たちは怨念で……』
舞首たちは、自慢の怨念と殺意を「ただの怒りのコントロール(6秒の壁)ができない短気な大人」として精神医学的に詰められ、3つの口から同時にポロリと涙をこぼした。
「今日から、徹底的な『顎関節の保護(マウスピース装着)』と『6秒間のアンガーマネジメント・トレーニング』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「歯科用・高耐久シリコン製マウスピース(3人分)」「顎用・冷却クーリングシート」、そして「6秒数えるための特大デジタルストップウォッチ」を取り出した。
「ゴズさん、3人の頭がぶつからないように優しく保定して! ヴァレリアさん、マウスピースをそれぞれの口に素早く装着して!!」
「ブモォッ!(おう! 顎の痛みを抱えたままじゃイライラも募るからな、任せとけ!)」
「ふむ。この素早く動く3つの口に寸分の狂いもなくマウスピースをはめ込む……精密なる剣の柄入れと同じ技だな」
『ナ、何ヲ……!? 俺たちノ永遠ノ死闘ガ……!』
「【究極の顎関節ケア&6秒アンガーコントロール・プログラム】です!!」
ヴァレリアの神速の妙技により、小杉、江黒、また市の3人の口に「特製シリコンマウスピース」がカポッと素早く装着された。
『ンンンッ……!?(か、噛みしめられない!?)』
「はい! 相手に怒りを感じたら、すぐに噛みつかないで! そのストップウォッチを見て、6秒間じっと深呼吸する!! 1! 2! 3! 4! 5! 6!」
スゥ〜……ハァ〜……。
ヒナタのカウントに合わせて、3つの首が深呼吸をする。
『……ッ!? な、なんだこれは……! 6秒間息を吸って吐いたら、さっきまで殺してやろうかと思ってた猛烈なイライラが、嘘みたいにスゥーッと引いていくぞ……!』
『しかも、マウスピースのおかげで、歯を食いしばっても顎の関節に全然響かない! ずっとジンジン痛かった頭痛が消えていく……!!』
「素晴らしい! 怒りのピークを過ぎれば、人間……ううん、生首同士でも冷静に対話ができるんです! あなたたちは3人もいて、しかも空中で共鳴できる素晴らしい声を持っているんだから、喧嘩じゃなくて『ハモり』なさい!!」
ヒナタが、四次元リュックから「アカペラの楽譜(3部合唱)」を取り出して目の前に掲げた。
数日後。
そこには、海上でみにくく噛み合い、炎を吐いて人を脅かす妖怪の姿はなかった。
マウスピースで保護された健康的な顎と、完璧なアンガーマネジメント(6秒呼吸法)を身につけ、その圧倒的な声量と滞空能力を活かして、美しい3部合唱の重厚なハーモニーを響かせる「王都認定・超人気空中アカペラトリオ(ザ・舞首ボーイズ)」として、王都の大ホールで大歓声を浴びる3人の爽やかな姿があった。
『〜♪(6秒耐えて育んだ、友情のハーモニー)』
舞首たちは、一切噛みつくことなく、息の合った完璧なソウルフル・ボイスで観客を魅了していた。
「……ゆ、勇者殿。永遠に噛み合い続ける怨念の化け物が……『顎関節症を克服し、6秒のアンガーマネジメントで友情を取り戻した超人気アカペラグループ』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、彼らの美しい3部合唱に涙を拭いながら、CD(魔導録音具)の予約列に並んでいた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、ノイズキャンセリング・ヘッドホンを外し、静かに溜息をついた。
『舞首が……「噛み合いによる顎関節症」と「アンガーマネジメントの欠如」を指摘され、マウスピースをはめられた……』
『永遠の死闘は「最初の6秒を耐えられない短気」と全否定され、6秒呼吸法とアカペラで超人気ボーカルグループになった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「首だけの怨念の永久機関」すら「歯科医学とアンガーコントロール」で平和的にデバッグしてしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「睡眠時用・カスタムマウスピース」と「イライラを鎮めるアンガーマネジメントの入門書」をポチり、自らの神としての怒りの感情をコントロールし、歯の健康を守ることを固く誓うのだった。
(第128話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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