■第126話:暗闇の納戸婆! ……えっ、脅かす前に「シックハウス症候群」と「断捨離」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……よし! 配列のエラーも修正完了! 今度こそ正真正銘の『あ段』の続きだ!」
神ドラマスは、先ほどのケアレスミスを反省し、ホワイトボードに『あ・か・さ・た・な』とデカデカと書き出してからモニターに向かっていた。
画面の中では、ヒナタたちが王都の片隅にある、長年放置されたホコリっぽい「古いお屋敷」の清掃と探索を頼まれているところだった。
「ほう! 次なる『な』の刺客は、日本のクラシックな密室ホラー、納戸婆か!」
ドラマスは、神の杖を握り直してニヤリと笑った。
「薄暗い物置(納戸)の奥深くに潜み、扉を開けた者に襲い掛かる老婆の怪異! 逃げ場のない閉鎖空間での不意打ちと、蓄積された陰湿な妖気! いくらヒナタでも、このホコリまみれの密室の恐怖には悲鳴を上げるはずだ!!」
【場所:人間界・古いお屋敷の奥の納戸】
「う〜ん、このお屋敷、何年も換気されてないみたいですね。空気が淀んでます」
ヒナタは、ハンディモップでパタパタとホコリを払いながら廊下を進んでいた。
「ゆ、勇者殿……! この一番奥の『納戸(物置)』から、何か不気味な気配が……」
宰相セバスチャンが、ギギギ……と音を立てて古い引き戸を開けた。
バサァァァッ!!
『ヒィーッヒッヒッヒ!!』
扉が開いた瞬間、尋常ではない量のホコリと共に、ボロボロの着物を着た白髪の老婆――納戸婆が、暗闇の中から巨大なホウキを振り下ろしてきた。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 納戸の化け物ですぞォォッ!!」
セバスチャンが悲鳴を上げ、ホウキの一撃を間一髪で避けて尻餅をつく。
『勝手に開けるんじゃないよォ! ここはアタイの寝床だ! 驚いて腰を抜かしたまま、ホコリにまみれて息絶えるがいいさァァッ!!』
納戸婆が、さらにホコリを巻き上げながら不気味に笑い、再びホウキを振りかざした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、密室の淀んだ空気を一掃する「整理収納アドバイザー&呼吸器内科」が響き渡った。
『……エッ?』
納戸婆は、ホウキを振り上げたままピタリと固まった。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で納戸婆の背後に広がる「足の踏み場もないガラクタの山」をビシッと指差した。
「あなた!! 何十年も使っていないガラクタを溜め込んで、こんなホコリとカビだらけの密閉空間に引きこもるなんて正気の沙汰ですか!! 換気ゼロの汚部屋にずっといたら、建材の化学物質やハウスダストを吸い込み続けて『シックハウス症候群』や『重度の気管支喘息』になりますよ!! ほら、あなた自身もさっきから軽く咳き込んでるじゃないですか!!」
『シ、シックハウス症候群……!? 喘息……!?』
納戸婆は、言われてみれば常に喉がイガイガして、ホウキを振るたびに息苦しかったことを思い出し、老婆の顔をヒクつかせた。
「大体、その収納状況!!」
ヒナタは、納戸の中に無造作に積まれた古い壺や破れた布の山を指差した。
「モノを捨てられない『ためこみ症』の末期です!! 収納の基本は『今使っているか・いないか』の区別! ただ押し込んでいるだけの空間は『収納』とは呼びません、ただの『ゴミ捨て場』です!! 生活動線が完全に死んでるから、妖怪なのに出不精になるんですよ!!」
『た、ためこみ症……!? ゴミ捨て場……!? いや、アタイは恐ろしい密室の妖怪で……』
納戸婆は、自分の不気味なテリトリーを「ただの動線が死んだ汚部屋」として完膚なきまでに論破され、ホウキをポロリと落とした。
「今日から、徹底的な『換気・空気清浄』と『こん〇りメソッド準拠の断捨離プログラム』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「HEPAフィルター搭載・業務用空気清浄機」「N95マスクとゴーグル」「ラベルライター(テプラ)」、そして「サイズ別のモジュール式・半透明収納ケース(大量)」を取り出した。
「ゴズさん、空気清浄機のスイッチを入れて! ヴァレリアさん、全員にマスクを配って、納戸の窓を全開に!!」
「ブモォッ!(おう! ホコリを吸ったら肺をやられるからな、完全防備だ!)」
「ふむ。このガラクタの山を一刀両断……いや、仕分けしていくというわけか」
『ナ、何ヲ……!? アタイノ恐ロシイ暗闇ガ……!』
「【究極の断捨離&シン・ウォークインクローゼット構築プログラム】です!!」
ヒナタたちの手により、納戸婆はN95マスクを強制的に装着させられ、ヒナタの容赦ない「仕分け作業」がスタートした。
「はい、お婆さん! この壺、持ってて『ときめき』ますか!?」
『と、ときめき!? いや、ただそこにあったから何百年も……』
「はい、処分(お焚き上げ)!! 次、この布切れは!?」
ヒナタの圧倒的な判断スピードにより、ガラクタの山は「残すモノ」と「捨てるモノ」に猛スピードで分別されていく。残されたアイテムは、ラベルライターで綺麗にナンバリングされた半透明の収納ケースに美しく収められていった。
『おおっ……!? な、なんだこれは……! どこに何があるか一目でわかる! そして空気清浄機のおかげで、淀んでいた空気が信じられないほどクリアだ……! 息が……めちゃくちゃしやすい!!』
数時間後。
そこには、ホコリまみれの暗闇で人を脅かす不気味な老婆の姿はなかった。
清潔な割烹着を着こなし、完璧に整理整頓された「モデルルームのようなシン・ウォークインクローゼット」の中で、美しい収納術をドヤ顔で披露する「王都認定・カリスマ整理収納アドバイザー(納戸のプロ)」の姿があった。
『フフフ……。ヒナタ先生! 動線が確保されたら、なんだか外に出て色んな家の収納をアドバイスしたくなってきたよ! モノを捨てるって、心もスッキリするんだねぇ!』
元・納戸婆は、ホウキを「お掃除モップ」に持ち替え、活き活きとした笑顔で出張収納サービスの準備を始めていた。
「……ゆ、勇者殿。密室のトラウマ妖怪が……『シックハウス症候群を克服し、ときめきメソッドをマスターしたカリスマ収納アドバイザー』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、美しくラベリングされた収納ケースの見事さに感心し、王城の備品管理室の整理も彼女に依頼しようと心に決めていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、ホワイトボードの「な」の文字に花丸を描き、ペンを静かに置いた。
『納戸婆が……「換気ゼロのシックハウス症候群」と「ためこみ症」を指摘され、業務用空気清浄機を回された……』
『不気味な密室は「動線が死んだ汚部屋」と全否定され、断捨離とラベルライターでカリスマ整理収納アドバイザーになった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「暗闇の密室の恐怖」すら「整理整頓の欠如と空気の淀み」として物理的にお掃除してしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「モジュール式・収納ケースセット」と「最新型・ラベルライター」をポチり、自らの神殿の散らかった書類や小道具を、ときめきに従って一気に断捨離することを固く誓うのだった。
(第126話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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