■第121話:夜空の窒息布・衾(ふすま)! ……えっ、顔を覆う前に「飛膜の乾燥」と「温度管理不足」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……よくできました! 君は本当に毎日、雲の掃除を頑張っているな!」
神ドラマスは、ナマハゲのエピソードから導入した「ほめ育」を実践し、部下の天使のおでこに『よくできましたシール』を貼り付けてご満悦であった。
神殿の空気がかつてなくホワイトに保たれる中、ドラマスはモニターを見下ろした。
画面の中では、ヒナタたちが木々が鬱蒼と茂る、真っ暗な夜の峠道を歩いているところだった。
「ほう! 次なる怪異は、空からの静かなる暗殺者、衾か!」
ドラマスは、天使たちを下がらせて身を乗り出した。
「空を飛ぶ巨大な風呂敷、あるいは巨大なムササビの怪異! 音もなく上空から舞い降り、獲物の顔にピタリと張り付いて窒息死させる恐怖の妖怪! 刃物も通さないと言われるこの柔軟な窒息攻撃に、ヒナタのド正論はどう立ち向かうというのだ!?」
【場所:人間界・夜の峠道】
「う〜ん、今夜は一段と空気が乾燥してますね。お肌の水分が奪われます」
ヒナタは、頬をペチペチと叩きながら、ランタンの灯りを頼りに歩いていた。
「ゆ、勇者殿……! 上空の木々の間から、何か巨大な『座布団』のような影が、音もなく滑空してきますぞ……!」
宰相セバスチャンが、空を指差してガタガタと震え出した。
『……シュルルルル……』
夜の闇に紛れ、マントを広げたような巨大な怪異が、滑るように降下してきた。
「空飛ぶ窒息布」と恐れられる妖怪、衾である。
その正体は、長年を生きて強大な妖力を得た、超巨大なムササビ(あるいはモモンガ)の化け物であった。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 顔を覆い尽くす妖怪ですぞォォッ!!」
セバスチャンが悲鳴を上げてしゃがみ込む。
『ギャハハハッ!! 隙だらけだ人間ども! この絶対に破れない俺様の体で顔面を覆い尽くし、一息残らず奪ってやるゥゥッ!!』
衾が、巨大な飛膜をマントのように大きく広げ、ヒナタの顔面めがけてバサァッ!と覆い被さろうとした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、夜の森の静寂を完全に打ち破る「エキゾチックアニマル専門医&小動物ブリーダー(ガチギレ・トーン)」が響き渡った。
『……ムギュ?』
衾は、顔に張り付く寸前の空中で、不自然にブレーキをかけてモモンガの顔をヒクつかせた。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で衾の「大きく広げた飛膜(両手足の間の皮膚)」をビシッと指差した。
「あなた!! こんな湿度がカラカラに低下した冬の夜風の中で、無防備に皮膜を広げて滑空するなんて正気の沙汰ですか!! 皮膚が限界まで引っ張られて、水分が完全に飛んでるじゃないですか!! 乾燥による『飛膜のひび割れ(皮膚炎)』を起こしたら、二度と空を飛べなくなりますよ!! エキゾチックアニマルのスキンケアを舐めてるんですか!!」
『ひ、飛膜のひび割れ……!? スキンケア……!?』
衾は、言われてみれば最近、滑空するたびに脇腹から手首にかけての皮膚がピキピキと突っ張って痛かったことを思い出し、空中でワナワナと震えた。
「大体、人の顔に張り付こうとするその習性!!」
ヒナタは、衾の冷え切った鼻先を指差した。
「それは人間を窒息させたいんじゃなくて、あなたの『体温調節機能』が限界を迎えてるだけです!! 寒くてたまらないから、人間が吐き出す『温かい呼気(息)』と『顔の放射熱』を求めて張り付こうとしているんでしょ!! 完全に『適切な温度管理(巣箱)』の欠如による、重度の冷え性です!!」
『温かい呼気……!? 巣箱の欠如……!? いや、俺様は恐怖の妖怪で……』
衾は、自分の恐ろしい窒息攻撃が「ただの寒がりな小動物の暖房探しの果て」として医学的に論破され、大きなウルウルの目からポロリと涙をこぼした。
「今日から、徹底的な『飛膜の保湿ケア』と『パーフェクトな温度管理(ケージ環境)』を提供します!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「小動物用・高保水セラミド&ホホバオイル配合クリーム」「モモンガ専用・特大もこもこフリース・ポーチ」、そして「USB充電式・ペット用遠赤外線パネルヒーター」を取り出した。
「ゴズさん、衾さんが風邪を引かないように優しく抱きとめて! ヴァレリアさん、パネルヒーターの電源を入れて!!」
「ブモォッ!(おう! 小動物は冷えが命取りだからな、温めてやるぜ!)」
「ふむ。この巨大なムササビを傷つけずにホールドする……力の加減が問われるな」
『ナ、何ヲ……!? 俺様ノ恐ロシイ窒息攻撃ガ……!』
「【究極の飛膜保湿&極上もこもこポーチ・お迎えプログラム】です!!」
ヒナタは、ゴズに抱えられた衾の乾燥しきった飛膜に、最高級の小動物用ホホバオイルクリームをたっぷりと、そして優しく塗り込んでいった。
『アァァァッ……!! こ、これは……! 砂漠のように乾ききって突っ張っていた飛膜が、オイルの保湿ベールで信じられないほどしっとり、プルプルになっていく……! 腕を広げても全く痛くない……!』
「はい、お肌が潤ったら、すぐにお家に入って!!」
ヒナタは、パネルヒーターでホカホカに温められた「特大もこもこフリース・ポーチ」の口を開いた。
衾は、その中から漂う「圧倒的な温もり」と「暗くて狭い安心感」の誘惑に抗えず、シュルルッ!とポーチの中に飛び込んだ。
『おおっ……!? な、なんだこのフリース素材の極上の肌触りは……! 人間の顔に張り付くよりも100倍温かいし、何より息苦しくない! ここが……俺様の探し求めていた真の「安住の地」……!!』
衾は、生涯で初めて味わう「完璧な温度管理の巣箱」に感動し、ポーチの奥で丸まって「キュルル……」と幸せそうな寝息を立て始めた。
「どうですか? 人の顔なんて塞がなくても、このヒーター付きポーチがあればいつでもヌクヌクですよ! これからは、その立派な飛膜を活かして、もっと人の役に立つことをしてみませんか?」
ヒナタが、ポーチ越しに優しく撫でながら語りかける。
数日後。
そこには、夜道で人の顔に張り付いて窒息させる恐ろしい妖怪の姿はなかった。
ヒナタに作ってもらった「専用もこもこポーチ(配達バッグ仕様)」を身に纏い、プルプルに潤った飛膜で夜空を滑空しながら、王都の緊急の郵便物や小包を音もなく届ける「王都認定・空飛ぶ癒やし系配達員(モモンガ急便)」として、人々に大人気の巨大モモンガの姿があった。
『キュッ!(お届け物だキュ! サインはそこに頼むキュ!)』
元・衾は、配達先の玄関でポーチから顔を出し、愛嬌たっぷりにサインをねだるのだった。
「……ゆ、勇者殿。空からの暗殺者が……『飛膜の乾燥を克服し、もこもこポーチに魅了された深夜の超優秀なクーリエ(配達業者)』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、全く窒息の危険がない可愛いモモンガの配達員から手紙を受け取りながら、物流の発展に深く感心していた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、手に持っていた「よくできましたシール」を静かにデスクに置いた。
『衾が……「飛膜の乾燥」と「温度管理不足」を指摘され、ホホバオイルを塗り込まれた……』
『窒息攻撃は「暖を取りたいだけの冷え性」と見抜かれ、ヒーター付きもこもこポーチで配達業者になった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「顔面を覆う窒息の恐怖」すら「エキゾチックアニマルの適切な飼育環境の欠如」として完璧に解決してしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「自分用の着る毛布(もこもこフリース素材・ポーチ型)」と「足元用パネルヒーター」をポチり、自らの神殿でのデスクワーク環境を、小動物並みに温かく快適な空間に改造することを固く誓うのだった。
(第121話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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