↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
114/166

■第114話:背後の足音・送り犬! ……えっ、食い殺す前に「股関節の負担」と「肉球のケア」の説教ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……ふむ。まずは針葉樹で火床を作り、ストーブが冷めきった状態で煙突掃除をするのが鉄則だな。危うく神殿を火の海にするところだったぞ」


神ドラマスは、人間界の(読者の)鋭いツッコミを真摯に受け止め、薪ストーブの正しいマニュアルを熟読しながらモニターを見下ろしていた。

画面の中では、ヒナタたちが夜の険しい峠道を歩いていた。


「ほう! 次なる怪異は送りおくりいぬか!」


ドラマスは、マニュアル本を閉じて身を乗り出した。


「夜の山道を歩く人間の背後にピタリとつき、足音を忍ばせてついてくる犬の妖怪! 決して振り返ってはいけない。そしてもし石につまずいて転ぼうものなら、その瞬間に群れで襲いかかり食い殺すという狡猾な魔犬! この暗闇のプレッシャーと、一歩も間違えられない極限の緊張感に、ヒナタのド正論はどう立ち向かうのだ!?」


【場所:人間界・夜の峠道】

「う〜ん、夜のハイキングもいい運動になりますね! ペース配分はバッチリです!」


ヒナタは、歩きやすいトレッキングシューズでサクサクと山道を登っていた。


「ゆ、勇者殿……! さっきからずっと、背後の暗闇から『ヒタッ……ヒタッ……』と獣の足音がついてきておりますぞ……!」


宰相セバスチャンが、青ざめた顔でヒナタの袖を掴んだ。


「あれは送り犬です! 決して転んではなりませぬ! 転んだ瞬間に、喉笛を食いちぎられますぞ!!」

『……グルルル……』


暗闇から、赤く光る目と、鋭い牙を剥き出しにした巨大な黒犬が、ヨダレを垂らしながらヒナタたちの背後にピタリと張り付いていた。

人間が疲労で足をもつれさせ、無防備に倒れ込むその一瞬を、今か今かと待ち構えているのだ。


「ヒッ! 勇者殿、石につまずかないように……ああっ!」


セバスチャンが恐怖のあまり足元を疎かにし、木の根に引っかかって「どわぁっ!」と派手に転倒してしまった!


『ガウゥゥゥッ!! 隙を見せたな人間!! 食い殺してやるゥゥッ!!』


送り犬が、凄まじい脚力で地面を蹴り、セバスチャンに飛びかかろうとした、その瞬間。


「ちょっと待って!!!」


ヒナタの、深夜の山を揺るがす「ドッグトレーナー&愛犬家ガチギレ・トーン」が響き渡った。


『……キャンッ!?』


送り犬は、空中でビクッと縮こまり、不時着するように地面に転がった。

ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で送り犬の「ガクガク震えている後ろ脚」と「ボロボロの足裏」をビシッと指差した。


「あなた!! こんな足場の悪い険しい峠道を、毎日毎日長距離歩き回るなんて正気の沙汰ですか!! 犬の歩行ペースも考えずに暗闇を徘徊し続けたら、『股関節形成不全』や『関節炎』を引き起こしますよ!! ほら、さっきジャンプした時、着地のクッションが効かずに後ろ足の関節が鳴ってたじゃないですか!!」

『こ、股関節形成不全……!? 関節炎……!?』


送り犬は、言われてみれば最近、山道を歩くたびに腰から後ろ脚にかけて鈍い痛みがあり、スムーズに走れなくなっていたことを思い出し、シュンと耳を伏せた。


「大体、転んだ人間を食べるってどういうことですか!!」


ヒナタは、送り犬の痩せこけたお腹を指差した。


「人間の肉や骨を丸飲みしたら、消化管に刺さって大事故になります!! しかも塩分過多で腎臓を壊しますよ!! 極めつけはその足裏! アスファルトよりマシとはいえ、ゴツゴツした岩場を素足で走り回って『肉球』がガサガサにひび割れて出血してるじゃないですか!! 愛犬のフットケアと栄養管理を舐めてるんですか!!」

『に、肉球がガサガサ……!? 塩分過多……!? いや、俺は妖怪として……クゥーン……』


恐ろしい魔犬は、自分の行動が「寿命を縮める最悪の生活習慣」として詰められ、完全に子犬のように丸まってしまった。


「今日から、徹底的な『関節サポート』と『極上のドッグウォーク環境』を提供します!!」


ヒナタは、四次元リュックから、「グルコサミン・コンドロイチン高配合・シニア対応ドッグフード」「肉球保護用・オーガニック蜜蝋クリーム」「夜間散歩用・LEDピカピカハーネス」、そして「ショック吸収機能付き・バンジージャンプ素材のハンズフリーリード」を取り出した。


「ゴズさん、美味しいお水を用意して! ヴァレリアさん、この子を優しく撫でてリラックスさせてあげて!!」

「ブモォッ!(おう! 犬は人間の一番の友だからな! 水だぞ!)」

「ふむ。この漆黒の毛並み、ブラッシングのしがいがあるな。よしよし」

『ナ、何ヲ……!? 俺ノ殺戮ノ本能ガ……!』

「【究極のドッグヘルスケア&安全・快適ウォーキングプログラム】です!!」


ヒナタはまず、送り犬のガサガサにひび割れた巨大な肉球に、オーガニック蜜蝋クリームをたっぷりと擦り込んだ。


『ヒャンッ……!! 痛かった足の裏が……クリームの保湿成分でしっとりプニプニになっていく……! これなら岩の上を歩いても全然痛くないぞ……!』

「はい、足のケアが終わったら、関節に優しいご飯です! 転んだ人間なんかより、こっちの方が100倍栄養バランスが良いですよ!」


ヒナタが差し出した高級ドッグフードを、送り犬は「ガツガツガツッ!」と涙を流しながら一瞬で平らげた。


『ウ、ウマい……!! しかも、食べたそばから関節の軟骨に栄養が染み渡って、腰の痛みがスゥーッと引いていくようだ……!』

「仕上げは安全対策です! 暗い夜道は危険ですから、このLEDハーネスを着けて! そして、歩く時はこの『ショック吸収リード』を使います! 飼い主(私)の腰とあなたの首、両方の衝撃を吸収して関節を守ってくれる優れものですよ!」


ヒナタは、腰巻きタイプの伸縮性ハンズフリーリードを装着し、送り犬のハーネスとカチャリと繋いだ。


『おおっ……!? リードがビヨーンと伸び縮みして、急に走っても首がガクンとならない! しかもLEDがピカピカ光って、夜の山道でも足元がハッキリ見えるぞ!!』


数十分後。

そこには、暗闇に潜んで人を食い殺す恐ろしい魔犬の姿はなかった。


ピカピカ光る安全ハーネスを身に纏い、プニプニの肉球と痛みのない股関節で軽快に尻尾を振りながら、ヒナタの隣をショック吸収リードで完璧な「リーダーウォーク」で並走する、「王都認定・夜の山道セーフティーガイド犬(超健康)」の姿があった。


『ハッ、ハッ、ハッ!(ヒナタ先生、関節サポート食最高だワン! これからは人を食べるのはやめて、迷えるハイカーたちを安全な道へエスコートするワン!)』


送り犬は、キラキラした瞳でヒナタを見上げ、嬉しそうに「どっこいしょ」とヒナタの足元で伏せをするのだった。


「……ゆ、勇者殿。恐怖の魔犬が……『肉球ケアと関節サポートに感動し、完璧なリードマナーを身につけた山岳ガイド犬』になってしまいましたぞ……」


セバスチャンは、すっかり懐いて尻尾を振る巨大な犬の顎の下を撫でながら、ペットケアの重要性に深く感銘を受けていた。


【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、薪ストーブのマニュアル本を静かに閉じた。


『送り犬が……「股関節の酷使」と「肉球のダメージ」を指摘され、蜜蝋クリームでプニプニにされた……』

『転んだ人間を食べるのは「塩分過多と栄養不良」と怒られ、ショック吸収リードとLEDハーネスで完璧なしつけを施された……』


ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「魔犬の恐怖」すら「愛犬の歩行環境とヘルスケアの問題」として完璧に解決してしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「神獣用の関節サポートサプリ」と「衝撃吸収・ハンズフリーリード」をポチり、自らの使い魔たち(神獣)の健康寿命を極限まで伸ばすための徹底的なペットケアを開始するのだった。

(第114話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。