■第113話:立ち昇る怨煙・煙々羅! ……えっ、むせかえる前に「不完全燃焼」と「一酸化炭素中毒」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……ポカポカだな。隙間風防止テープのおかげで、神殿の暖房効率が劇的に上がったぞ。足元が全く冷えない」
神ドラマスは、足洗邸のエピソードで学んだ「気密性の重要さ」を即座に神殿に取り入れ、Tシャツ一枚でも快適な室内でモニターを見下ろしていた。
画面の中では、ヒナタたちが木枯らしの吹く山道を抜け、古びた山小屋の囲炉裏で暖を取ろうとしているところだった。
「ほう! 次なる怪異は煙々羅か!」
ドラマスは、ホットコーヒーを淹れながらニヤリと笑った。
「かまどや囲炉裏から立ち上る煙に宿り、不気味な顔を浮かび上がらせて人を脅かす妖怪! 部屋中に充満する煙で視界と呼吸を奪い、パニックに陥れるという逃げ場のない恐怖! 物理攻撃が一切通じない『気体』の化け物に、ヒナタのド正論はどう立ち向かうのだ!?」
【場所:人間界・古びた山小屋】
「う〜ん、外は随分と冷え込みましたね。火の温もりがありがたいです」
ヒナタは、囲炉裏のそばで冷えた手をこすり合わせていた。
「ゆ、勇者殿……! この囲炉裏の煙、なんだか異常に目に沁みますぞ……! ゴホッ、ゲホッ!」
宰相セバスチャンが、涙目になりながら激しく咳き込んだ。
モクモクモク……。
突然、囲炉裏から上がる煙が異常に濃くなり、部屋中を黒く覆い尽くし始めた。
そして、うねる煙の中に、巨大で不気味な「人間の顔」がヌゥッと浮かび上がったのだ。
『……ケホッ……苦シイカ……。煙ニ巻カレテ……息絶エルガイイ……』
煙の顔が、ニタリと歪んで不気味な声を上げる。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 煙が顔になっておりますぞォォッ!! ゴホッ!」
セバスチャンが喉を押さえて床に倒れ込む。
『モットダ……モット煙ヲ吸イ込メェェ……!』
煙々羅が部屋の酸素を奪い、ヒナタたちを黒煙で包み込もうとした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、部屋の空気を震わせる「薪ストーブ・インストラクター&防災管理者」が響き渡った。
『……エッ?』
煙々羅は、モクモクと広がるのをやめて空中でピタリと固まった。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で囲炉裏で燻っている「薪」をビシッと指差した。
「あなた!! こんなモクモクと異常な量の煙を出すなんて、薪の乾燥不足による『不完全燃焼』じゃないですか!! 水分を含んだ薪を燃やしたら、暖かくならないどころか『一酸化炭素(CO)』が大量発生して、最悪の場合一酸化炭素中毒で死に至りますよ!! 換気もせずにこんな煙を出すなんて、防災意識が欠落してます!!」
『い、一酸化炭素中毒……!? 防災意識……!?』
煙々羅は、妖怪としての呪いではなく「ただの有毒ガスの発生源」としてマジギレされ、煙の顔をヒクヒクと引きつらせた。
「大体、その煙突と排気口!!」
ヒナタは、小屋の煤だらけの煙突を指差した。
「不完全燃焼の煙を出し続けたから、煙道の中にタールや『クレオソート』がビッシリとこびりつきます!! それを放置したら、煙突内部で引火する『煙道火災』を引き起こして、山小屋ごと全焼しますよ!! 炎のコントロールとメンテナンスを舐めてるんですか!!」
『ち、チムニーファイヤー……!? 全焼……!?』
煙々羅は、自分の存在そのものが「火災のメガトン級リスク」であることを論理的に指摘され、煙の輪郭を震わせた。
「今日から、徹底的な『燃焼効率の最適化』と『煙突のオーバーホール』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「薪用・デジタル含水率計」「高効率・二次燃焼ストーブ」「一酸化炭素チェッカー」、そして「プロ仕様・煙突掃除用ワイヤーブラシ」を取り出した。
「ゴズさん、今すぐ小屋の窓を全開にして換気! ヴァレリアさん、その湿った薪を外に出して、代わりにこの『含水率15%以下の完璧に乾燥した広葉樹の薪』を準備して!!」
「ブモォッ!(おう! 一酸化炭素は無臭だから怖いんだぜ! 換気だ換気!)」
「ふむ。この真っ黒な煙道、私の魔法で一気に煤を吹き飛ばしてやろう」
『ナ、何ヲ……!? ワシノ恐怖ノ怨煙ガ……!』
「【究極のクリーンバーン&煙道火災撲滅・安全暖房プログラム】です!!」
ヒナタはまず、囲炉裏の火を最新型の「二次燃焼ストーブ」へと移し替えた。
そして、含水率計でしっかりと乾燥が確認された良質な薪を投入する。
『アァァァッ……!! こ、これは……! 不完全燃焼の黒い煙(ワシの体)が、ストーブ上部の二次燃焼室で未燃焼ガスとして再着火され、美しいオーロラのような炎に変わっていく……!』
煙として部屋に充満するはずだった煙々羅の体は、最新ストーブの圧倒的な燃焼効率によって、一切の煙を出さない「極上のクリーンな熱エネルギー」へと完全燃焼させられていった。
「はい、燃焼が安定したら、煙突のメンテナンスです!」
ヒナタとヴァレリアの協力により、煙突内部にこびりついていた危険なクレオソートの塊が、ワイヤーブラシでゴリゴリと削り落とされていく。
『おおっ……!? 煙突の通りが良くなって、強烈な「ドラフト(上昇気流)」が発生しているぞ! 新鮮な空気がどんどん吸い込まれて、炎がさらに力強く、美しく燃え上がる……!』
数時間後。
そこには、部屋中を燻らせて人を苦しめる迷惑な煙の妖怪の姿はなかった。
煙突からは陽炎のように無色透明な排気だけが立ち上り、山小屋の中は二次燃焼ストーブの美しい炎と、遠赤外線の極上の温もりで満たされていた。
そしてストーブの炎の中には、薪の炎を完璧にコントロールし、美しく揺らめく「王都認定・薪ストーブ施工&メンテナンスのトップアドバイザー(火の精霊風)」が、優しく微笑んでいた。
『ヒナタ先生、ありがとう! 不完全燃焼で燻っていた俺の体も心も、完璧な二次燃焼でスッキリ晴れ渡ったぜ! これからは人を脅かすのはやめて、王都の家々に「安全で煙の出ない極上の炎」を提供するストーブ職人として生きるよ!』
煙々羅(改め・クリーンバーン職人)は、ストーブの中でパチッと小気味良い音を立ててウインクをした。
「……ゆ、勇者殿。窒息の恐怖が……『不完全燃焼を克服し、二次燃焼の美しさを伝える薪ストーブ職人』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、一酸化炭素チェッカーの安全な数値を確認しながら、ストーブの炎の揺らぎに心底癒されていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、コーヒーカップを静かにテーブルに置いた。
『煙々羅が……「不完全燃焼と一酸化炭素中毒」を指摘され、窓を全開にされて換気された……』
『煙は「煙道火災の原因」と怒られ、二次燃焼ストーブで完全燃焼させられてストーブ職人になった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「気体の妖怪」すら「燃焼工学と防災管理」で物理的に解決してしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「キャンプ用・二次燃焼焚き火台」と「デジタル一酸化炭素チェッカー」をポチり、自らの神殿の庭で極上のクリーンな焚き火ライフを楽しむことを固く誓うのだった。
(第113話・完)
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