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■第110話:闇夜に笑うお歯黒べったり! ……えっ、驚かす前に「金属アレルギーの危険」と「審美歯科の推奨(ホワイトニング)」ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……スゥーッ。うむ、加湿空気清浄機の恩恵で、神殿の空気がアルプスの頂のように澄み切っているぞ。シルクのパジャマも肌触りが最高だ」


神ドラマスは、絡新婦のエピソードから導入した快眠グッズに身を包み、極上のリラックス状態でモニターを見下ろしていた。

画面の中では、ヒナタたちが夜の王都、古びた神社の境内を歩いていた。


「ほう! いよいよ和風ホラーの定番、お歯黒べったり(おはぐろべったり)の登場か!」


ドラマスは、ハーブティーのカップを置いて身を乗り出した。


「美しい着物姿の女が泣いていると思い声をかけると……振り返ったその顔には目も鼻もなく、お歯黒を塗った巨大な口だけが不気味に笑う! 人の親切心を逆手に取った、古典的かつ強烈なジャンプスケア(驚かせ)妖怪! このトラウマ必至の顔面崩壊ホラーに、ヒナタの物理ド正論はどう立ち向かうのだ!?」


【場所:人間界・夜の神社】

「夜の神社って、静かで心が洗われますねぇ」


ヒナタは、月明かりに照らされた境内をのんびりと歩いていた。


「ゆ、勇者殿……。あそこのお堂の影で、誰か泣いておりますぞ……」


宰相セバスチャンが、ランタンを持つ手を震わせながら指差した。

そこには、美しい花柄の着物を着た女性が、顔を隠すようにしてうずくまり、シクシクとむせび泣いていた。


「おお、可哀想に。迷子でしょうか。もし、そこのお嬢さん……」


セバスチャンが同情して声をかけ、肩に手を伸ばした。


『……ウフフフフッ!』


女が振り向いた。しかし、その顔には「目」も「鼻」もなかった。

のっぺらぼうの顔の真ん中に、耳まで裂けた巨大な口だけがパックリと開き、真っ黒に染まった歯(お歯黒)を見せつけてニタリと笑ったのだ。


「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 顔がありません! 口だけですぞォォッ!!」


セバスチャンが腰を抜かしてひっくり返る。


『ギャハハハハッ!! 驚いたか人間!! この真っ黒な口で、お前たちを頭から丸呑みに……』


お歯黒べったりが、巨大な口から生臭い息を吐き出してヒナタに襲いかかろうとした、その瞬間。


「ちょっと待って!!!」


ヒナタの、深夜の境内に響き渡る「審美歯科医&オーラルケア指導員ガチギレ・トーン」が炸裂した。


『……エッ?』


お歯黒べったりは、巨大な口を開けたままピタリと固まった。

ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相でお歯黒べったりの「真っ黒な歯」をビシッと指差した。


「あなた!! そのお歯黒、成分は鉄屑てつくずを酢に溶かしたものと、五倍子ふしのタンニンですよね!? そんな酸化した金属の液体を毎日歯に塗りたくるなんて、重度の『金属アレルギー』を引き起こして歯茎がボロボロになりますよ!! 現代の審美歯科ホワイトニングの真逆をいく最悪のダウングレードです!!」

『き、金属アレルギー……!? 審美歯科……!? いや、これは既婚女性の嗜みというか、妖怪としての恐怖の演出で……』


お歯黒べったりは、自慢のホラー要素を「時代遅れのデンタルリスク」として論破され、大きな口をモゴモゴさせた。


「大体、目も鼻もないってことは!!」


ヒナタは、お歯黒べったりののっぺらぼうな顔上半分を指差した。


「常に『口呼吸』しかできない構造じゃないですか!! 口呼吸は口腔内を極度に乾燥させ、唾液の自浄作用を奪って『歯周病』と『強烈な口臭』の原因になります! ほら、近づいただけで酸化した鉄と雑菌の匂いがドブみたいに臭い!!」

『ド、ドブみたいに臭い……!?』


女性妖怪にとって「口が臭い」という指摘は、どんな物理攻撃よりもクリティカルに精神をえぐった。


「今日から、徹底的な『オーラルケア』と『最新ホワイトニング』を行います!!」


ヒナタは、四次元リュックから、「歯科用超音波スケーラー」「高濃度ホワイトニングジェル」「LED照射器」、そして「口呼吸防止用の医療用マウステープ」を取り出した。


「ゴズさん、口を開けたまま固定して! ヴァレリアさん、うがい用の温水を用意して!!」

「ブモォッ!(おう! 口の臭い奴は嫌われるからな! しっかり治してやるぜ!)」

「ふむ。この真っ黒な歯の汚れ落とし、私の剣のサビ落としより気合が入りそうだ」

『ナ、何ヲ……!? 私ノ恐怖ノお歯黒ガ……!』

「【究極のデンタルエステ&ハリウッドスマイル・プログラム】です!!」


ヒナタは、まず超音波スケーラーを使い、何百年も蓄積していたお歯黒の成分と歯石を「キュイイイイン!」と容赦なく弾き飛ばしていった。


『アァァァッ……!! 歯の表面にこびりついていた黒い鉄の塊が……超音波の振動で根こそぎ剥がれ落ちていく……! 歯茎の腫れも引いて、なんだか口の中が信じられないくらい軽い……!』

「はい、汚れが落ちたらホワイトニングです! ジェルを塗ってLEDを照射しますよ!」


ピカーーッ!!

ヒナタのプロフェッショナルな施術により、真っ黒だった歯は、暗闇の神社を照らすほどの「輝くようなパールホワイト」へと生まれ変わった。


「そして、普段は口呼吸を防ぐためにこの『マウステープ』を貼りなさい! 鼻がないなら、エイルさんに魔法で『呼吸用の小さなスリット(擬似的な鼻)』を作ってもらいますから、これからはしっかり腹式呼吸をすること!」


数時間後。

そこには、真っ黒な歯で人を驚かす不気味な妖怪の姿はなかった。


輝くような白い歯をこぼれるように見せ、さわやかなミントの息を吐きながら、着物姿の「王都No.1・デンタルビューティーアドバイザー(歯磨き粉のCMモデル)」が、満面のハリウッドスマイルを浮かべて立っていた。


『ウフフ……! 自分の歯がこんなに白くてツルツルになるなんて! お歯黒なんて時代遅れね! ヒナタ先生、私、もう人を驚かすのはやめて、この輝く白い歯で王都のオーラルケア産業を牽引するわ!』


お歯黒べったりは、白く輝く歯をキラリと光らせてウインク(目はないが気配で)をすると、意気揚々と夜明けの街へと歩いていくのだった。


「……ゆ、勇者殿。和風ホラーの代名詞が……『金属アレルギーを恐れ、ハリウッドスマイルを手に入れたカリスマ・デンタルモデル』になってしまいましたぞ……」


セバスチャンは、ピカピカに輝く白い歯の残像に目を細めながら、自分も明日は歯医者に行こうと心に誓っていた。


【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、静かにシルクのパジャマの襟を正した。


『お歯黒べったりが……「金属アレルギー」と「口呼吸による口臭」を指摘され、超音波スケーラーで歯石を除去された……』

『恐怖のお歯黒は「ダウングレード」と怒られ、ホワイトニングでハリウッドスマイルのデンタルモデルになった……』


ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「伝統的な恐怖表現(お歯黒)」すら「時代遅れのオーラルケア不足」として論破するヒナタに完全降伏し、通販サイトで「最新型・電動歯ブラシ(ホワイトニング機能付き)」と「デンタルフロス大容量パック」をポチり、自らの神聖なる歯の白さを極限まで高めることを固く誓うのだった。

(第110話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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