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■第109話:魅惑の毒蜘蛛・絡新婦! ……えっ、食い殺す前に「ハウスダスト・アレルギー」と「スーパー繊維の無駄遣い」の説教ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……ふぅ。天然ミネラル・クレイパックを洗い流した後のこの肌のツヤ! まるで生まれたてのベビーゴッドのようだ」


神ドラマスは、泥田坊のエピソードから学んだ究極のスキンケアを終え、ツルツルの美肌を鏡で確認してからモニターへと向き直った。

画面の中では、ヒナタたちが王都近郊の深い森の奥、薄暗く荒れ果てた「廃屋」へと足を踏み入れているところだった。


「ほう、次なる怪異は絡新婦じょろうぐもか!」


ドラマスは、化粧水をパッティングしながら身を乗り出した。


「絶世の美女に化けて旅人を誘い込み、隙を見て本来の巨大な蜘蛛の姿を現す! そして、決して切れることのない強靭な糸で獲物をグルグル巻きにし、生きたまま養分を啜り尽くすという猟奇的なトラップ妖怪! この逃げ場のない密室と、物理的に拘束される絶望の前に、ヒナタの生活指導もついに糸に巻かれて沈黙するはずだ!!」


【場所:人間界・森の奥の廃屋】

「うわぁ、随分と年季の入ったお屋敷ですねぇ。ちょっとホコリっぽいですけど」


ヒナタは、ギシギシと鳴る床板を踏みながら、呑気に周囲を見渡した。


「ゆ、勇者殿……! 天井や壁の至る所に、ベタベタした蜘蛛の巣が張られておりますぞ……! 嫌な予感がします!」


宰相セバスチャンが、顔にへばりついた糸を払いながら震え上がった。


『……おや、迷い人の皆様。こんなむさ苦しい所ですが、どうぞおくつろぎくださいな……』


ふすまの奥から、艶やかな着物を纏った息を呑むほどの美女が、蠱惑的こわくてきな笑みを浮かべて現れた。


「おお……! なんとお美しい……!」


セバスチャンが思わず見惚れた、その瞬間。


『ヒヒヒ……! 隙だらけだねぇ、愚かな男ども! 極上の養分、骨の髄まで吸い尽くしてあげるわァァッ!!』


美女の顔が裂け、背中から巨大で毛むくじゃらの「8本の蜘蛛の脚」が突き出した!


絡新婦が本来のおぞましい姿を現し、天井から強靭な白い糸の束を投網のように放ち、ヒナタたちをグルグル巻きにしようとした、その時。


「ちょっと待って!!!」


ヒナタの、廃屋のホコリを吹き飛ばす「清掃業者&アパレル開発部ガチギレ・トーン」が響き渡った。


『……エッ?』


絡新婦は、糸を放ちかけた姿勢でピタリと空中に固まった。

ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で「部屋中に張り巡らされた蜘蛛の巣」をビシッと指差した。


「あなた!! 部屋の換気もせずにこんなベタベタした巣を四方八方に張り巡らせるなんて、正気の沙汰ですか!! 巣にホコリやダニ、虫の死骸が吸着して、完全な『ハウスダスト』の温床になってるじゃないですか!! こんな不衛生な密室にいたら、重度のアレルギー性鼻炎や小児喘息ぜんそくを引き起こしますよ!!」

『ア、アレルギー性鼻炎……!? 喘息……!?』


絡新婦は、聞き慣れないアレルギー用語に思わず8つの目を瞬かせた。


「大体、その糸!!」


ヒナタは、絡新婦が手から放とうとしていた強靭な蜘蛛の糸を指差した。


「クモの糸は、同じ太さの鋼鉄よりも何倍も強靭で、ナイロン以上の伸縮性を持つ『夢のスーパー繊維(シルクタンパク質)』なんですよ!! 軽量で強度抜群、しかも生分解性のあるエコ素材! そんな世界を変える超高級素材を、その辺の男を捕まえるための『ハエ取り紙』みたいに使うなんて、素材のポテンシャルへの完全な冒涜です!! 産業革命を舐めてるんですか!!」

『す、スーパー繊維……!? エコ素材……!? いや、アタイは男を捕食するために……』


絡新婦は、自分の殺戮用の糸が「アパレル業界の革命的素材」として力説され、完全に毒気を抜かれてしまった。


「今日から、徹底的な『ハウスダスト除去』と『サステナブルなアパレル生産』を開始します!!」


ヒナタは、四次元リュックから、「業務用サイクロン式クリーナー(HEPAフィルター搭載)」「高性能・加湿空気清浄機」「プロ仕様の糸車(紡毛機)」、そして「アパレルデザインの教本」を取り出した。


「ゴズさん、掃除機で部屋中のホコリと古い巣を一気に吸い取って! ヴァレリアさん、空気清浄機のフィルターをセットして!!」

「ブモォッ!(おう! ハウスダストは気管支をやられるからな! 吸いまくってやるぜ!)」

「ふむ。見えないホコリを吸い込むこの魔導具(掃除機)、恐るべき吸引力だ」

『ナ、何ヲ……!? アタイノ死ノ罠ガ……!』

「【究極のハウスダスト撲滅&エコ・アパレル起業プログラム】です!!」


ゴズが操作するサイクロン式クリーナーの圧倒的な吸引力により、廃屋に蔓延していた不衛生な蜘蛛の巣とホコリが、瞬く間に吸い込まれていく。


さらに高性能空気清浄機が稼働し、澱んでいた廃屋の空気が「アルプスの高原」のように清浄化された。


『ゲホッ……ハァッ! な、なんだいこの空気の美味しさは……! 今までホコリっぽくて、実はアタイもずっと喉がイガイガしてたんだけど……信じられないくらい深呼吸がスッキリするわ……!』


絡新婦は、HEPAフィルターの威力に感動し、8つの目をキラキラさせた。


「はい、空気が綺麗になったら、次はお仕事です!」


ヒナタは、糸車(紡毛機)を絡新婦の前にドンッと置いた。


「人を食べるのはやめて、あなたのその強靭で美しい『スーパーシルク』を紡ぎなさい! そして、防弾チョッキ並みの強度を持ちながら、シルクのようになめらかな『超・高級ドレス』を仕立てるんです! アパレル業界で天下を取れますよ!!」


絡新婦は、ヒナタの熱意に押され、8本の脚を器用に使いこなしながら糸車を回し始めた。

カラカラカラカラ……。


『……すごい! アタイの糸が、こんなに美しい光沢を放つ布地になっていく……! これなら、どんな刃物も通さず、しかも通気性抜群のドレスが作れるわ! 男を食うより、この生地を高値で売り捌いた方が、何百倍も儲かるじゃないの!!』


モノづくりの喜びに目覚めた絡新婦は、持ち前の器用さ(8本脚)をフル稼働させ、凄まじいスピードで最高級のテキスタイルを織り上げていった。


数ヶ月後。

そこには、廃屋で男を待ち伏せして食い殺す、おぞましい妖怪の姿はなかった。


ホコリ一つない超クリーンなタワーマンションの最上階にアトリエを構え、自らの糸で織り上げた『サステナブル・スパイダーシルク』のドレスを身に纏い、王都の貴族たちから絶大な支持を集める「気鋭のトップ・ファッションデザイナー兼CEO」として、優雅にシャンパングラスを傾ける美女の姿があった。


『ウフフ……。人を食うより、流行トレンドを食い尽くす方がずっと楽しいわね! ヒナタ先生、アタイのブランドの新作ドレス、一番にプレゼントするわ!』


絡新婦CEOは、美しく微笑みながら最新のファッション誌の表紙を飾るのだった。


「……ゆ、勇者殿。猟奇的な毒蜘蛛が……『ハウスダスト対策を徹底し、エコ素材で王都のファッショントレンドを牛耳る凄腕CEO』になってしまいましたぞ……」


セバスチャンは、絡新婦ブランドの「絶対に破れない超軽量・防刃ベスト」を試着しながら、その着心地の良さに感涙を流していた。


【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、ツルツルになった自分の頬を静かに撫でた。


『絡新婦が……「ハウスダストとアレルギーの温床」と怒られ、サイクロン掃除機で巣を吸い取られた……』

『蜘蛛の糸は「スーパー繊維の浪費」と指摘され、糸車で紡がれて高級アパレルブランドのCEOになった……』


ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「死の蜘蛛の糸」すら「持続可能なアパレル産業の資材」としてビジネス化してしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「最新型・加湿空気清浄機」と「最高級シルク100%のパジャマ」をポチり、自らの神殿の空気環境と睡眠の質を極限まで高めることを固く誓うのだった。

(第109話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


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